三角関係



僕の趣味は女装だ。
僕が女装に興味を持ったのは中学のときだった。
友達の家に遊びに行ったときに、友達のお姉さんのスリップをふざけて身につけてからだ。
身体に当たる生地の感じが男の下着とは全く違う。
肌をすべるような感触に僕は心を奪われた。
友達のお姉さんはそれなりに綺麗な人だったけれど、友達のお姉さんに恋をしたわけではない。
女性の下着そのものに心を奪われたのだ。

高校になって少しは頭が回るようになると僕は通信販売で女性の下着を買うことを覚えた。
郵便局留めにして家族の誰からも分からないようにして手に入れた。
僕は毎晩それを身につけて勉強した。
興奮して勉強どころというのが本当のところだ。
しかし、勉強することがその行為の言い訳になるような気がしたのだ。
集中していたかどうかはともかく、僕は毎日真面目(?)に勉強した。
理由はどうであれ日頃の勉強のおかげで成績は上位をキープできた。
そして趣味の方は、当然の成り行きとして下着女装だけでは飽き足らなくなっていた。
親が留守のときに母親の服を身につけた。
ブラジャーをつけて、ティシュを丸めて入れた。
ブラウスのボタンを留めるとき、男のシャツと反対であることに感激した。
膝丈の地味な紺色のタイトスカートを履いた。
これが生まれて初めての女装だ。
自分の姿を鏡で見ても決して女には見えない。
スカートの股間が明らかに盛り上がっている。
どう見ても男がスカートを穿いている変質者だった。
しかし、そんな自分の姿に妙に興奮して、その姿のままマスターベーションをした。
おかげでスカートを汚し、そのフォローをしなくちゃならなくなった。
母親に見つからないようにクリーニングに出し、見つからないように元に戻す羽目になったのだった。
そんなことを続けているうちに、母親の服ではやはりデザインが地味すぎることに不満を感じ始めた。
僕はどうしても自分の欲求が抑えられず、また通信販売で女の子の服を買った。
家族が留守のときは家にこもり、一日中ずっとその服装で過ごしていた。
それが唯一の気分転換ともなっていた。

大学進学にあたっては地元にはそれほど優秀な学校がないとか言って東京の大学を選んだ。
もちろん、家から出て、一人暮らしすることが目的だ。
極論を言うと、大学なんて家から離れられるのならどこだってよかったのだ。
日頃の勉強の努力が身を結んで、それなりのレベルの大学に合格することができた。
とにかく、これで一人暮らしができる。
ということは好きなだけ女の子の格好ができるということだ。

別に僕はホモというわけではない。
恋愛対象は女の子だ。
ただ単純に女の子の服が好きなだけだ。
男の服だとあまりバリエーションがないが、女の子の服の場合は色のバリエーションも、デザインのバリエーションもある。
下着の肌触りは雲泥の差がある。
とにかく僕は女装するために、親元を離れ、東京の大学に入学したのだ。

東京に来て驚いたのは女装の店というものが堂々と開かれていることだ。
僕は胸が震えるような喜びを感じながら、発見した店に入った。
その店で売られているものはデザインのバリエーションも少ない。
しかもすごく高い。
僕は喜びを感じた分だけ落胆も大きかった。
しかし、世の中には僕と同じ趣味を持った男がいるということを知れたことは何となく僕の気持ちを明るくさせた。

僕は女装のための服装や化粧品は、インターネットなどを利用して普通の女性相手の店で購入することにした。
持ってきたパソコンを立ち上げ、インターネットにつながるように環境を整えると、すぐにショッピングサイトに行った。
そこで僕は貯金の半分以上を使い、女性の服や化粧品やウィッグを買った。
これで一週間ほどしたら楽しめる服がいっぱい揃うことになる。

ちなみに僕の名前は松原浩実。
子供の頃は女みたいな名前とか言っていじめられた。
しかし現在ではそのお陰で堂々と本名で女の子の服が買えるのだ。
ただし、女の子のときは名前を漢字でなく平仮名で「ひろみ」と表記している。

僕の大学はクラブや同好会に入らない限り、土曜と日曜は完全に休みだった。
もちろん僕は何のクラブには入らなかった。
さらにアルバイトをするのは平日だけに集中させた。
これによって、週末に何も用事がなければ、僕は部屋に閉じこもって、金曜の夜から月曜の朝まで女の子生活を楽しめるのだ。平日の夜は下着女装だけで我慢していた。

そんな僕にも彼女ができた。
大学の最初のオリエンテーションでたまたま同席になった女の子だった。
名前は大塚由香里。
背は小さく、目が大きな可愛い女の子だった。
彼女もやはり親から離れて一人暮らしらしい。
大学にいる間は大体彼女と過ごした。

あと加藤悠平という男とも仲良くなった。
授業の取り方が大体同じような感じだったので授業に出るたびに顔を合わせた。
そういう状況なので何となく言葉を交わすようになった。
そんなに快活なやつではないが、ウマがあったのだろう。
僕たちはそれなりに話すようになった。
僕と由香里が一緒にいるときにも、時々話に加わることもあった。
しかし、基本的に僕と由香里の邪魔をしないように気を配ってくれているような感じだった。

由香里が僕の部屋に遊びに来るようになるのにそれほどの時間はかからなかった。
由香里が部屋に来るようになって1ヶ月ほどしたときに僕たちは結ばれた。
僕はもちろん初めてだったし、由香里も初めてだった。
僕はこれからもずっと由香里と一緒にいたいと思っていた。

僕たちが深い関係になっても、僕は自分の部屋の鍵を彼女に渡さなかった。
由香里がそれを不満に思っていることは何となく分かった。
しかし僕が女装しているときに由香里が入って来られたら困る。
したがって、鍵だけはどうしても渡せなかった。

しかし、そんな警戒心も虚しく彼女に見つかる日がついに来た。
前の日の晩、つけたパンティやブラジャーを迂闊にも洗濯機に入れたままにしていたのだ。
「浩実、何なの、これ!?」
由香里は手に僕のパンティとブラジャーをあった。
「えっ、あっ、あの…」
「二股かけてたの?浩実がそんな人だとは思わなかったわ」
「い、いや、違うんだ」
「何が違うの?」
「だから、それは…」
「何なの!」
「それは……僕のなんだ」
「はっ?言い訳にしても何てこと言い出すの?」
「ホントなんだ。僕は由香里のいないときに女の子の格好してるんだ」
「えっ、そうなの?」
「…うん…」
「ウソ?」
「ウソじゃない」
「信じられない。あたしの付き合ってた人がそんな変態だったなんて」
由香里は泣きながら部屋を出ていった。
残された僕は呆然としていた。
僕は由香里のことをとっても愛していたし、ずっと幸せな時が続くと思っていた。
なのに、こんなにあっけなく崩れてしまうなんて。
しかも、それが自分の趣味のせいだなんて。
自分がこれほど由香里のことを愛していることをこういう状況になってようやく知った。
でもそれももう終わってしまった。
しばらく経ってから、僕の目から涙がこぼれた。
涙が一粒落ちると、僕は堰を切ったように声をあげて泣いた。

次の日になると由香里がやってきた。
もう二度と顔を出さないと思っていたのに。
僕は一晩中泣き明かしてひどい顔だったと思う。
やってきた由香里を見ても特に話すことはなかった。
だから僕は由香里を部屋に入れてからも黙っていた。
しばらく沈黙があったが、由香里がその沈黙を破った。
「昨日はひどいこと言って、ごめんなさい。急なことで気が動転して、浩実を傷つけることを言っちゃったよね?ごめんなさい」
意外に由香里は優しい言葉をかけてくれた。
その言葉に救われるような思いがしたので、僕も由香里と話す気力を取り戻すことができた。
「いいんだ。僕が人に言えないようなことをしていたのが悪いんだから。もう女装はしない。由香里と別れたくないんだ」
「ホントに?」
「うん、本当だ」
「浩実がそんな無理しなくていいわよ」
「決して無理してるわけじゃないんだ。僕は由香里のことが好きだから、別れたくないだけなんだ」
「そうなの?」
「うん、そう」
「でもあたしとしても浩実があたしのために好きなことをやめるのって嫌なの」
「……」
「それで、お願いがあるんだけど、一度浩実が女の子になったとこ、見せてよ」
僕は予想もしない彼女の提案にどう返事していいか分からなかった。

「あたしは男の人が女の子の服を着るなんてやっぱり変なことだと思ってしまう。それは、見たことないからだと思うの」
由香里は静かに話し出した。
「浩実だったら可愛いし、女の子の格好しても似合うような気がするんだけど、やっぱり考えるだけじゃ違和感はなくならないと思う。でも、実際見て、納得できたら案外受け入れられるような気もしてるの。浩実が自分の好きなことを我慢するなんて、あたし、嫌だもん。だから、ねっ、お願い。浩実の女の子の姿を見せて」
「…でも僕が女装したのを見て気持ち悪いって思ったらどうするの?」
「浩実は女の子の自分の姿を見てどう思っているの?可愛いと思っているんでしょ?」
「…うん、まあ……」
「女の子は誰でもナルシストなのよ。きっと女の子の格好をしてみたいと思う男の人もきっとナルシストだと思うけど。浩実は違うの?」
「違わない…」
「じゃ、そんなこと言ってないで見せてよ。お願い」
僕は由香里の顔を見た。
由香里は真剣な顔をしていた。
僕は由香里の気持ちに答えるべきだと感じてきた。
「…分かったよ。でも由香里が見ている前で着替えるのは恥ずかしいからちょっと外で待っててくれるかな?できたら携帯に電話するから」
「分かったわ」
由香里が部屋を出て行った。
僕は念のため部屋の鍵をかけて服を脱いだ。
ショーツを履き、ガードルをつけた。
ブラジャーをつけ、カップの中にパンティストッキングを丸めたものを入れた。
パンティストッキングを履き、膝やや上のひだのついた白いプリーツスカートを履いた。
最後にサーモンピンクのサマーセーターを着た。
そして洗面台の鏡を見ながら、薄くファウンデーションをつけ、ピンクのアイシャドウ、ビューラーでまつげにカールをつけた。
頬に目立たない程度にチークを入れて、最後に口紅を塗った。
セミロングのウィッグを被り、ヘアブラシでヘアスタイルを整えた。
仕上げにイヤリングをつけた。
見慣れた"ひろみ"が鏡に映っていた。
僕は自分のことを可愛いと思う。
しかし、この姿を他人に見せるのは初めてだ。
由香里はどう思うだろう?
僕は緊張しながら部屋の鍵を開けてから、由香里に電話した。
「着替えたよ。入ってきて」
由香里は部屋の前で待っていたのだろう、すぐに部屋に入ってきた。
僕と目が合った。
僕は恥ずかしさですぐに視線を逸らした。
由香里は何も言わない。
張り詰めた空気が部屋の中に満ちた。
どれくらいの時間が経過したのだろう、ようやく由香里が緊張を破った。
「…浩実…なの?」
「そうだよ」
「…ホントに?」
「ホントに」
「ぅわぁ、すっごい可愛い。ねっ、お化粧ってどうやって覚えたの?あたしより上手だよ」
由香里の顔が柔和になった。
僕はホッとした。
「雑誌とかで見て適当にしてるだけだよ」
「そうなんだ、へぇ、すごいね。本当に女の子みたいになれるんだ。ねえ、胸はどうなってるの?」
「パンストをつめてるだけ」
「へぇ、そうなんだ」
「浩実が女の子になったときは何ていう名前なの?」
「そのままだよ。でも郵便とかで名前を書くときは平仮名で書いてる」
「ふ〜ん、じゃあ、ひろみちゃんだね?」
由香里はそう言いながら、僕の胸に手を当てて揉むような仕草をした。
「ねぇ、ひろみ、感じる?」
「そんなことあるわけないじゃないか。本当の胸じゃないんだから」
「でもひろみ感じてるみたいに見えるよ」
実際、僕は快感を感じて目を閉じていた。
「ひろみは女の子なのよ。女の子は胸を触られると感じるの。ほら、感じてきたでしょ?」
僕は由香里の言葉に乗せられてきた。
「…ん…ぁぁん……」
無意識に声を出した。
「ひろみ、とっても可愛いわよ。女のあたしが妬いちゃうくらい。下の方はどうなってるのかしら」
由香里の手がスカートの中に入ってきた。
「ぁ…ダメ…」
「ガードルで押さえてるのね?触った感じじゃ何もないような感じね。どうなっているのか見せてね」
由香里はひざまづいて僕のガードルを下ろした。
「へぇ、股間に挟んであるんだ。でももう大きくなってるわよ。楽にしてあげるわね」
由香里は僕のショーツも下ろした。
僕のペニスが反動で前に飛び出した。
ペニスの先がスカートに触れて、変な感覚を感じた。
「大きなクリちゃんね」
由香里はそう言いながら先を指でなぞった。
「…ぁあ…ん……はぁ…」
「やっぱりひろみは女の子ね。クリちゃんが感じるのね」
由香里は僕のペニスの先に舌を当てた。
「…あ…あ〜…ん…」
僕は女のように悶えた。僕は意識の中では女になっていた。
(由香里にクリトリスを舐められている。気持ちいい。もっと舐めて)
僕は目を閉じて、女性になった自分を想像していた。
それほど長くない時間で、僕のペニスから精液が出た。
由香里は僕の精液を綺麗に拭き取ってくれた。
由香里は呆然と突っ立っている僕にキスしてくれた。
「ひろみはきっと女の子に生まれてくるべきだったのよ。あたしといるときはずっと女の子でいて。あたしがしっかり女の子にしてあげるわ」
由香里の言葉に僕は頷いていた。
「服を買うお金はどうしてるの?」
「アルバイト。親の仕送りは少ないから」
「じゃあさ、このあたしのマンションに来ない?だったら家賃も必要ないし、家賃の浮く分、ひろみの好きな物が買えるじゃない?ねっ、そうしよ?」
「いいの?」
「もちろんよ。明日早速引っ越ししようね。あたしのマンションではひろみはずっと女の子でいてね」
「うん」
僕は由香里の提案を喜んで受け入れて、引っ越しすることにした。

次の日、僕は由香里のマンションに引っ越した。
由香里のマンションは僕がいたマンションより広い部屋だった。
3畳の形ばかりのキッチンと6畳と4畳半の部屋があった。
4畳半の部屋が僕の部屋になった。
「ひろみはこっちの部屋使ってね」
持ってきた荷物の半分以上は捨てることになった。
男の衣服は全て捨てられそうになった。

「ひろみはここでは女の子なんだから、こんなもの必要ないわ」
というのが彼女の言い分だった。
「でもそれじゃあ大学に行けなくなるじゃないか」
「じゃあ行かないでもいいじゃない」
「そんなことしたら親が怒って、すぐにでも実家に帰れって言われそうだけど」
「そうなると困るかもね。じゃあ少しだけ残してあげる」
ようやく由香里は僕の男の服を少しだけ残してくれた。
「でもこの部屋にいるときは絶対に女の子の格好しないとダメだからね」
「分かったよ」
僕は引っ越しの片付けが終わると、女装した。
由香里の提案で二人一緒にデジカメで写真を撮った。
写真に写った僕たちは仲の良い女友達に見えた。
写した写真を手帳に入る大きさで印刷してお互い身につけていることを約束した。
「二人の友情の印ね」
僕たちは恋人から親友に変わったようだ。

「ひろみって何か料理できるの?」
「そりゃ短期間とは言え、一人暮らししてたから何種類かはできるけど…」
「なら何か作ってくれない?ひろみの手料理一度食べたいな」
「何かって言っても材料がないと…ちょっと冷蔵庫見ていいかな…豚肉とキャベツがあるか…豆板醤ある?」
「そんなものないわ」
「味噌は?」
「お味噌くらいあるわよ」
「じゃあ、回鍋肉っぽい炒め物作るね。エプロンはどこ?」
「ないわよ」
「嘘!?信じられない。由香里って料理しないの?」
「するわよ。でもエプロンなんてしないもん」
仕方なく僕は汚さないように注意しながらエプロンをつけずに僕は残っている材料で回鍋肉もどきを作った。さらに簡単なお吸い物を作って、テーブルに並べた。
「へぇ、おいしそうじゃん。いっただきまーす」
由香里は一口口に運んだ。
「おいしい!ひろみって料理上手なんだね」
「そんなことないよ。誰でもこれくらい作れると思うよ」
「あたしはあんまり料理できないよ。残り物で適当に作るなんてすっごくレベル高いじゃん」
「褒めて料理を僕に作らせようたってダメだよ」
「へへへ、ばれてた?でも本当に美味しいよ。あたしにも料理教えてね?」
「僕でよければ喜んで」
僕と由香里は本当に友達になってしまったようだった。
僕は由香里に二人の関係をどう思っているのか確認したいという強い欲求を感じながらも、どう切り出していいのか分からずにいた。

僕は食事の後片付けをして、風呂に入った。
湯船に浸かっていると、脱衣場に由香里が入ってきた。
「ひろみ、着替え置いておくわね」
僕は洗濯済みのボクサーパンツを持ってきたのだが、由香里の言葉に嫌な予感がした。
風呂から出ると、予想通り女物のショーツが置いてあった。
白地に青の横縞が入ったものだった。
僕は下着をつけずバスタオルを腰に巻き、ショーツを握って、リビングに行った。

「由香里、これ何だよ」
「何ってショーツじゃない。あたしからひろみへの引っ越しのプレゼントよ」
「寝るときぐらい普通のパンツ履かせてくれよ」
「何言ってるのよ。あたしのマンションではずっと女の子でいるっていう約束だったでしょ?」
「そりゃそう言ったけどさ……寝る時くらい……。勘弁してくれよ」
「ダ〜メ。24時間女の子でいなくちゃ。ところで、そのバスタオルの巻き方おかしいわよ。女の子は腰じゃなくって胸のところで巻かなくちゃ」
由香里は何の躊躇いもなく、僕のバスタオルを取った。
当然何も履いていないので、僕のペニスが顔を出した。
「いやあ、エッチ」
「由香里が急にバスタオルを取ったんじゃないか」
「だって何にも履いてないなんて思わないじゃない」
「ショーツを持ってたから何も履いてないって分かるだろう?」
「もう…そんなことはどうでもいいから、ちゃんとバスタオルを巻いて」
「それよりエッチしようよ」
僕は二人の関係を確かめる意味を込めて言った。
「ダメよ、ひろみはここでは女の子なんだから、そんなことしたらレズになるじゃない」
「僕はレズでもいいけど」
「馬鹿言ってないで早くバスタオルを巻いてよ」
どうやら少なくとも恋人でもなくなったような気がした。僕は気を取り直して由香里の言葉にしたがった。
「こうか?」
僕は胸のところでバスタオルを巻いた。
由香里はその姿を確認して安心したようだった。
「ひろみは風呂上りにちゃんとお肌の手入れってしてるの?」
「特には…」
「ダメじゃない、女の子にとって日頃のスキンケアが大事なんですからね」
「はいはい」
僕は由香里に言われるまま差し出された乳液とクリームを全身に塗った。クリームは少し女性ホルモンが入っていて、瑞々しい透明感の肌にするというちょっと高価なものだと由香里は自慢げに言っていた。

次の日、久しぶりに大学の授業に出た。
久しぶりと言っても、3日ほど出ていなかっただけなのだが。
僕がキャンパスを由香里と歩いていると、加藤が近づいてきた。
「大塚、これ、頼まれていたもの」
加藤が由香里に小さな紙袋を渡した。
「じゃあな、松原、授業でな」
加藤はそれだけの言葉をかけて去っていった。
「何だ、あいつ」
「あたしにこれを渡しかっただけみたいね」
「そう言えば、由香里に頼まれたって言ってたけど、何、それ?」
「へへへ、秘密」
「何だよ、怪しいな。僕に隠れてあいつと付き合ってるんじゃないだろうな」
「へぇ、そういうこと言うの?あたしと同棲してるのに」
「同棲って、ああゆうの同棲って言わないだろ、普通」
「でも結婚してない男と女がひとつ屋根の下で暮らしてるのよ、他人から見れば立派な同棲じゃない」
「そうか、同棲か」
「何よ、何か嬉しそうね」
「そりゃ由香里みたいな可愛い相手が同棲相手だからな」
「もう浩実ったら」
由香里も嬉しそうな顔をした。
今の僕たちの関係は不思議な関係だけど、それなりに恋人なんだなと確認できたような気がした。
やがてそれぞれの授業に出席するために別れた。

その日の授業に全て出席すると、僕は夕食の材料とエプロンを買って、由香里のマンションに戻った。
半日程度男の格好をしているだけなのに、だんだん自分の姿に違和感を覚えていた。
早く女の子の格好がしたい、そういう欲求が強まっていた。
したがって、帰ってすぐに服を脱ぎ、シャワーを浴びて全身を綺麗にし、女装した。
今日はタータンチェックのプリーツスカートとモスグリーンのサマーセーターだ。

買って来たエプロンをつけ、夕食の準備を始めた。
肉じゃがとほうれん草のバター炒めとかれいの煮つけと豆腐の味噌汁を作った。
由香里が帰ってきたのは全ての準備が終わろうかという絶妙のタイミングだった。
「すっご〜い、これ全部、ひろみが作ったの?」
「えへん」
僕は胸を張った。
「ひろみっていいお嫁さんになれるね。あたしがひろみをお嫁さんにもらっちゃおうかな?」
「何言ってんだよ、お嫁さんなんて」
僕は反論しながらも"お嫁さん"と言う言葉に顔を赤くしてしまった。
「ひろみったら"お嫁さん"って言われて顔を真っ赤にしてる〜。かっわいい♪」
「そんなことないよ……とにかく食べよう」
「あたしワイン買ってきたんだ」
「うん、二人で乾杯しよ。グラス出すね」
「いいわよ、それくらい、あたしがやるから。ひろみは座ってて」
由香里はキッチンでワインをグラスに注いでから、テーブルに2つのワインの入ったグラスを持ってきた。
「ごめ〜ん、お魚なのに赤を買っちゃった。いいよね?」
「それじゃ」
由香里はグラスを手に取った。
「かんぱーい」
僕と由香里はグラスで乾杯した。
僕はかれいを食べてからワインを飲んだ。するとワインに変な味を感じた。
「やっぱりかれいの煮付けとワインは合わないね、何か変な味」
「そうかな。あたしは美味しいよ」
どうも由香里は料理をあんまりしないだけあって、味覚もそれほど鋭くないらしい。
それでも僕らは食事とワインを楽しんだ。

次の日は朝から気分がすぐれなかった。
何となく身体が重いのだ。
起きようと思えば起きられるのかもしれないが、精神的にも気怠さが強く、そういう気力すら湧かなかった。
僕は原因を最近ほとんど24時間ガードルで下半身を締め付けているためじゃないかと思った。
血行が悪く、それが全身のだるさにつながっているような気がしたのだ。
僕は由香里に頼んで下着を男物にすることを許してもらった。
「体調が悪いっていうから、今だけの特別だからね」
僕は久しぶりにトランクスを履いた、パジャマは女物だけど。
由香里は僕の体調が悪いので心配そうな顔をしていた。

二三日して、ようやく何とか起きようという気になれるくらいには体調が戻った。
まだ何となく気怠さは残っているが、とりあえず普通の生活はできるような気がする。
少しでも元気になると、僕の気持ちとしても女装をしたくなる。
僕は朝起きると久しぶりにガードルを履き、完全女装した。
やっぱりこの方が楽しい。
昨日までの体調の悪さは春からいろいろと変化が激しくって、ただ単に疲れていただけなのかもしれない。
僕は何となくそんな気がした。

朝食を作っていると、パジャマのままの由香里が起きてきた。
「由香里、おはよう」
「ひろみ、もう大丈夫なの?」
「うん、大丈夫みたいだ」
「よかった、ひろみが元気になって。やっぱり女の子のひろみの方が嬉しいな」
「心配かけてごめんな」
由香里が僕のところに来て、胸に顔を埋めて泣き出した。
僕は何も言わずに由香里の髪をなでていた。
しばらくすると、僕の胸から顔を離した。
「でもひろみ…」
「ん、何?」
「ひろみも女の子の話し方、してほしいな」
「えっ、そんなの、恥ずかしいよ」
「でもそんな可愛いのにそんな話し方、変だよ」
僕が誰も見てないところで女装していたときは、わざとらしすぎる女の子言葉で話していた。
でも、目の前に人がいるとやはり恥ずかしさが強くなる。
ましてやそれが大好きな由香里に対してだなんて恥ずかしすぎる。
だから、あえて無理して男の言葉を使っていた面があった。
由香里から言ってもらえたなら、女の子言葉を話した方が自分としてはイメージ通りになってしっくりくるんだけど…。
「でも絶対笑うよ」
「そんなことない、絶対。こんな可愛いひろみが男の子の話し方してる方が不自然だもん」
「じゃあやってみるから」
僕は覚悟を決めた。
「絶対笑わないないって約束してくれる?」
「うん、もちろん!」
「じゃあ…」
僕はひとつ軽く息を吸った。
「由香里、これからもっともっと頑張って女の子になれるよう努力するから、わたしのこと、よろしくね」
「うん、ひろみってとっても可愛いから絶対良い女になれると思うんだ。こちらこそよろしくお願いします」
僕と由香里は笑い合った。
由香里が喜んでくれると、僕も楽しい。
僕たちの関係って恋人なんだよねと確認したいけど、女友達と言われるのがやっぱり恐くて聞けなかった。
そう言えば、由香里のマンションに来てから1回もエッチしてないんだよな。

由香里のマンションに越して来て、1ヶ月ほど経ったときだった。
「ねぇ、ひろみ、明日女の子同士で買い物に行かない?」
「えぇ、そんなの、まだ無理よ」
僕も内心女装外出したいという思いはあったが、いざ本当に提案されると尻込みしてしまった。
「もう部屋の中ではあたしより女らしいし、絶対に大丈夫だよ」
「でも声は男のままよ」
「そうなんだけど、意外と違和感ないわよ。それくらいの声の女性っているもの」
「でも……」
「もう!ひろみだって、女の子として買い物とか楽しみたいと思っているでしょう?」
「そりゃあまあ少しはそう思ってるけど…」
「だったらいいじゃない、ホントに絶対大丈夫だから」
「ホントに?」
「ホントにホント。あたしが保証するから」
「そんなに言ってくれるなら行くわ」
「やった〜。じゃあ明日は女の子二人でデートしようね」

ついに初の女装外出を迎えることになった。
僕は白地に小さな花柄の入ったワンピースを来て、清楚な女の子風に着飾った。
念入りに、かと言って厚化粧にならない程度に化粧をし、小さなガラスが揺れるイヤリングをつけた。
そして、これまでは部屋の中で履いていただけだったハイヒールを履いて外に出た。

僕は由香里の手をしっかりと握っていた。
見破られるんじゃないかという恐怖心で緊張していた。
「ひろみ、顔がこわばってるよ」
「だってこんなふうに歩いたことがないし…。生きた心地がしないってこういうことを言うのよ、きっと」
「ひろみは可愛いし、美人なんだから、もっと堂々と歩いた方がいいわよ。ほら、向こうから来る男の子たちなんてあたしたちのこと、見てるじゃない。どっちかっていうと、あたしよりひろみの方を見てるわ。ちょっと悔しいな」
由香里は面白がっていた。
しかし僕は目を合わせるのが怖くて伏し目がちに歩いていた。
由香里が冷やかした男たちが通り過ぎた後
「今の背の高い方の女、可愛かったな」
「声かけようか」
「無理無理、俺たちじゃ」
などといった会話が耳に入った。
僕は女性として認識されている。
それが分かると、何となく自信がついてきた。僕は顔をあげて歩くようになった。
「そうそう、そういうふうに歩いた方が絶対綺麗に見えるよ」
由香里のそんな言葉に僕は笑顔で返した。
僕は女の子。
由香里と握っていた手も、それほどきつくなく、普通に握れるようになった。
すれ違う男性の視線は、まず顔を見て、それから胸や脚を見て、最後にまた顔を見ている。
彼女連れらしい男も僕を横目で見て、彼女に肘で突かれている。
異性である男性から僕が魅力的な女性として映っていると思えるのは快感だった。
僕は由香里とのショッピングを楽しんだ。
これまで女の買い物はなかなか終わらないのが不思議だったが、自分が女性になったら分かる。
ただただ楽しいのだ。
可愛い服、魅惑的な下着、それを自分が身につけたら自分がどうなるのか。
そんなことを考えているのが楽しい。
男物と違って、色もデザインもバリエーションに富んでいる。
ホントに女の子になってよかったと思える瞬間かもしれない。
その日は一日中慣れないハイヒールであちこち歩いたため、家に帰った時には脚がパンパンに張っていた。とっても疲れたが、今日の経験を考えると心地よい疲れだった。

女装外出が日常的になってくると、最初のころのトキメキが薄れてきた。
女装というより普通に服を着ているだけだった。
自分は生まれながらに女の子だったような錯覚になっていた。
そんな気持ちのせいもあるのか最近勃起しなくなったような気がする。
なぜ?
どうして?
女装するには便利なんだけど何となく不安を覚える。

そういえば最近髭も剃った覚えがない。
僕は楽しい女性としての生活の中に何となく不安を感じるようになった。

「最近ひろみ綺麗になってきたんじゃない?」
ある日、テレビを見ていると、横にいた由香里はテレビを見ずに僕の横顔をじっと見て言った。
「そう?どこが?」
「何となく肌がきめ細かくなってるようだし、心なしか白くなってきてるみたいだし」
「そう見える?」
「まさか好きな男の子でもできたんじゃないでしょうね?」
「まさか…」
「でも女の子は恋をすると綺麗になるって言うし」
「だって私の恋人は由香里だけだもん」
「そうよ。あたしとひろみは今では女の子友だちみたいになってるけど、恋人だってこと忘れてないでよ」
「分かってるわよ」
久しぶりに由香里から恋人だって言われた。
でもそんなことより、由香里から綺麗になったと言われた方に嬉しさを感じた。
何だかどんどん意識が女性化しているみたいな気がする。

女装が日常的になっても大学に通うときは男の服装だった。
最近は男の格好をしているときの方が気を使う。
油断すると女性の仕草になってしまうのだ。
加藤と一緒に歩いているときに、何かの拍子に加藤の肘が僕の胸に当たった。
「いてっ」
「どうしたんだよ、ちょっと当たっただけじゃん」
「何かわかんないけど、すっごく痛かったんだよ」
僕は由香里の部屋に戻ってから、自分の胸を見てみた。
取り立てて問題はなさそうだ。
触ってみると、乳首の辺りにしこりのようなものを感じる。
軽く押してみた。
「痛いっ!」
加藤の肘が当たったときのような痛みを感じた。
由香里が帰ってきて、僕は胸のことを話した。
「ふ〜ん、風呂上がりに塗ってるクリームのせいかな?前も言ったように、少し女性ホルモンが入ってるから。そのおかげで最近ひろみの肌、綺麗になってきたでしょ?」
「でもそのせいで胸が出てきたら困るわ」
「その方が女の子になれるからいいんじゃない」
「そりゃ女の子の格好するのは好きだけど、すぐ男に戻れるからいいんじゃない。このまま女の子になるなんて、考えたことないもん」
「じゃあ、考えてみない?」
「そんなの、無理よ」
「無理じゃなかったら?」
「……やっぱり無理よ……」
僕は正直しつこい由香里の言葉に心が揺れていた。
このまま女の子になってもいいかもと思っていた。
でも身体に手を入れる恐怖の方が強かった。
「でも、クリームに入ってる女性ホルモンくらいでは胸が大きくはならないわよ」
そう言って由香里は自分の胸に目をやった。
「そうなの、由香里は大きくならないんだ」
「ひろみったら、そんな言い方しなくったっていいじゃない」
「ごめんね」
由香里が怒ったことで、これ以上胸の話題を続けづらくなった。

その日はいつものように由香里と買い物に出かけていた。
いつものように他愛もない会話をしながら、ウインドウショッピングをしていた。
すると向こうから加藤がやってきた。
(やばっ!)
僕は加藤と顔を合わせないように通りとは反対の方を向いた。
しかし、加藤は由香里に気がついたようだった。
「よっ、大塚」
「あっ、加藤くん」
僕は気がつかない振りをしていた。

すると、由香里が肘で僕を突いてきた。
僕は仕方なく、俯き加減に加藤の方を向いた。
「加藤くん、この子、私のルームメートでひろみって言うの」
「ひろみです、よろしく」
僕は地声がばれないように小声で挨拶した。
「加藤です、よろしく」
加藤は無愛想に言った。
「じゃ、大塚、また大学でな」
加藤はそのまま去っていった。
「加藤くん、ひろみばかり見てたわよ」
「もしかしたらばれたのかな?」
「大丈夫よ、怪しんでるふうじゃなかったもん。きっとひろみのことが気に入ったんだよ」
「そんなはずないわよ」
「分かんないわよ。ひろみくらい可愛かったらそのうち誰かから告白されるかもね」
「わたしは女の子の服を着るのは好きだけど、好きなのは由香里だけよ」
「でも男の子から好きだって言われたらどうするの?」
「やめてよ、気持ち悪い。わたしはホモじゃないんだから」
「じゃあ、レズなんだ」
「えっ、そういうことになるの?」
僕と由香里は笑い合った。
でも本当に男から告白される日が来るんだろうか?
僕は不安なような楽しみのような気持ちになっていた。

次の日、大学に行った。
授業を聴いていると加藤が遅れてやってきた。
何も言わずに僕の隣に座って、おとなしく授業を受けていた。
授業が終わるとすぐに話しかけてきた。
「昨日さ、街で大塚に会ったんだよ」
「そうなんだ」
「そのときひろみっていう友達と一緒だったんだけど、その子がムチャ可愛かったんだ」
「ふ〜ん」
そう言いながら僕の顔が赤くなるような気がしていた。
「そう言えばお前も浩実って言ったよな」
「ああ、そうだけど」
さらに僕の胸は激しく動悸していた。
「お前と大塚とひろみちゃんと俺でさ、ダブルデートできるようにセッティングしてくれないかな?」
「えっ!?」
「お前、大塚と付き合ってるんだったらひろみちゃんのこと知ってるんじゃないのか?彼女、ムチャクチャ可愛いぞ。もし知らないんだったら、お前も会ってみたいだろ?なっ、大塚に頼んでみてくれよ」
「無理かもしれないけど」
「ああダメ元でいいよ。なっ、一回頼んでみてくれよ」
「そこまで言うんだったら頼んでみるよ」
僕は加藤の熱意に押される形で承諾してしまった。

「ねえ由香里、今日ね、大学でね、加藤くんにダブルデートに誘われちゃった」
「ダブルデートって?」
「由香里と男の浩実と加藤くんとわたし」
「へぇ、面白そうじゃん」
「何言ってるのよ、そんなことできっこないじゃない」
「浩実くんはドタキャンということで、女の子二人で奢ってもらおうよ」
「そんなので大丈夫かな?」
「だって加藤くんの目的はひろみちゃんでしょ?浩実くんは行かなくてもいいんじゃない?」

「それはそうなんだけど…」
「浩実が返事しづらいんなら、あたしから返事しよっか?」
「一応、由香里に頼んでくれって言われたんだけど」
「じゃあ、あたしにから返事しとくね」
こうして僕は"ダブルデート"に行くことになった。

そうしてついにダブルデートの日がやってきた。
僕は由香里と一緒に待ち合わせの場所で加藤が来るのを待っていた。
あと数分で約束の時間になろうかというときに駅のロータリーに白い車が止まった。
その車から加藤が降りてきた。
「大塚、お待たせ」
「あれ?加藤くんって車なんか持ってたっけ?」
「今日のために知り合いから借りたんだ」
「へぇ、気合い入ってるんだ」
「で、松原は?」
「ごめん、浩実は風邪ひいたみたいで今日は来れないって」
由香里は予め準備しておいた携帯メールを加藤に見せた。
「じゃあ、ダブルデートは次の機会ということで。今日は3人だけでいいよな?」
「うん、で、どこに行くの?」
「ディズニーランドに行こうと思ってるんだけど、いいかな?」
「うん、いいよ。ひろみもディズニーランドでいいよね?」
「えっ、えぇ、いいわ」
その日は僕と由香里がいろんなアトラクションで楽しんだ。
ほとんどの費用は加藤が出してくれた。
今時男がお金を出すなんて流行らないって言っても加藤は頑として聞き入れなかった。
加藤って意外と昔風な考え方をしているんだ。

「今日は楽しかったね。今度こそダブルデートしようね」
由香里は無責任なことを言っている。
「おぉ、ひろみちゃんもいいよね?」
当然、加藤はそれに応じた。
「えっ、うん」
仕方なく、僕も同調した。
そんなことできるわけないのに。
とにかく1週間後に再度ダブルデートすることになってしまった。

次のダブルデートの日の朝に由香里が急な腹痛に襲われた。
「ねぇ由香里、今日の加藤くんとの約束断るね?」
一人で出かけたくない僕は当然のように言った。
「だめよ、加藤くんだって、それなりに真剣なんだから可哀想じゃない」
「だから困るんじゃない」
「あっ、そっか。それもそうね」
由香里は力なく笑った。
「断るわよ」
「今日だけ…今日だけは会ってくれない?」
「どうして?」
「だってこの前奢らせる奢らせて、今日急に断ったらすっごく感じ悪いと思わない?」
「そりゃそうだけど…」
「だから今日は会うだけ会って、ねっ。すぐに帰ってくれていいから」
「じゃあ、会うだけ会ってくるね」
僕はデートを断ることを伝えるために出かけた。
その割りには気合いを入れて化粧をしてしまった。
デートを断るために外に出ただけなのに、なぜか気持ちは弾んでいた。

僕は待ち合わせ場所で待っていた。
そこへ前回と同じ車が止まった。
加藤が車から降りてきた。
「大塚からメールがあってさ、大塚も浩実も腹痛なんだって。二人で変な物でも食べたんじゃない?というわけで、期せずして今日は俺はひろみちゃんとデートできることになったわけだ」
「そのことなんだけど…」
「とりあえずデートを始めようよ。今日はディズニーシーでいいかな?」
そう言いながら助手席のドアを開けてくれた。

「ひろみちゃん、どうぞ」
加藤は僕のことを女の子として扱ってくれる。
僕は女性として扱われることが好きだった。
僕を女性として扱ってくれる加藤は今日のデートを楽しみにしてる。
そんな加藤の気持ちを踏みにじることは僕にはできなかった。
心の中で由香里に対してごめんと言いながら、僕は言われるままに加藤の車に乗った。
僕と加藤は二人の時間を楽しんだ。
いろんなアトラクションで遊びながら、僕たちはいつしか手をつないでいた。
どんなときでも女性として気を配ってくれる加藤の気遣いに僕は好意を感じていた。

ディズニーシーを後にし、僕と加藤は帰り道に寄った公園でデートの余韻を感じていた。
夕方になると風が冷たく感じた。
そんな僕を感じて、加藤は僕の肩を抱いてくれていた。
「ひろみさん、真面目な話、俺と付き合ってください」
加藤は急に立ち止まって言った。
「えぇ、それは…」
ある程度予想はしていたが、実際そう言われると僕はどぎまぎしてしまった。
「だめですか?」
「…えぇ…、はい……」
「どうして?」
「……」
「ひろみさんが男だから、ですか?」
「えっ!?」
「ひろみさんって松原なんでしょ?」
「……どうして…分かったの?」
僕は動揺していた。
「2回もデートしたら分かるよ、そりゃ」
「分かっていて、付き合いたいの?」
「俺の目の前にいるのは俺が好きな女の子であることに間違いはないから」
「本当に?」
加藤の言葉に僕はドキッとした。
そんな僕を加藤は抱きしめた。
加藤は僕の顎に手をかけて僕の顔を上に向けた。
僕はその行為を受け入れた。
僕は目蓋を閉じた。
加藤の唇が僕の唇に重なった。
一瞬重なっただけですぐに離れた。
「本当にわたしでいいの?」
僕は女の子のような気持ちになっていた。
「俺はひろみでいいんじゃなくって、ひろみが好きなんだ」
「本当に?嬉しい」
僕は加藤の首に両腕を回した。
加藤にキスを求めたのだ。
それに応えるように加藤は僕にキスをした。
今度は舌を僕の口に入れてきた。
僕は入ってきた舌に応じた。
意識の中には『男とキスしてる』という意識があるのだが、身体が男性の力強さを求めていた。
僕にとって受け身のキスは心地よかった。
身も心も女性になったような気持ちになっていた。
それに、何か暖かい幸福感に包まれていた。
「これから俺と会うときはいつも女性でいてくれないかな?」
「だったらずっと愛してくれる?」
「もちろんだよ」
「じゃあわたしも可愛い女の子でいるように努力するわ」
僕は加藤の腕の中で幸せを感じていた。

次の日は大学に行く日だった。
僕は前日の加藤との約束通り、女の子として大学に行くことにした。
「ひろみ、大学にもその格好で行って大丈夫なの?」
「うん、もういいの。だんだん男の格好するのが面倒になっちゃって」
「あたしとしてはずっとひろみのままでいてくれる方がいいけど、ホントに大丈夫?」
「何とかなるでしょ」
僕は少し後ろめたさを感じながらも言った。

大学に行く道の途中、前方に加藤がいることに気がついた。
僕は加藤に駆け寄って、腕を組んだ。
「おはよう、加藤くん」
「おお、お前、大学に行くのにそんな格好でいいのか?」
「だって昨日"俺と会うときは女でいてくれ"って言ったじゃない」
「そりゃ言ったけど、お前はいいのか?みんなから好奇な目で見られるかもしれないぞ」
「だって、加藤くんの前ではやっぱり女の子でいたいんだもん」
「可愛いこと言っちゃって」
「てへへ」
僕は小さく舌を出して可愛く戯けてみせた。

僕が加藤と教室に入ると軽くざわついた。
「だれ、あの娘?」
「可愛いじゃん」
とか言う声が聞こえてきた。
やがて僕だということがばれると、遠巻きで話していた奴らが徐々に僕の周りに集まってきた。
「松原ってそういう趣味があったんだ」
「でも可愛いよな」
「俺はダメだ、キモい」
賛否両論いろいろあったが、概ねみんな受け入れてくれた。
もともと女の子が少ない学科だったし、可愛い娘は皆無に近かったので、それなりに外見の可愛い僕はみんなにチヤホヤされた。

大学の授業を受けた後、いつものように僕は加藤に由香里のマンションまで送ってもらっていた。
いつもなら何もなく別れるのだが、その日は加藤にキスを求められた。
僕は求められるまま、加藤と抱き合ってキスをした。
「ひろみ!」
振り返るとそこに由香里が立っていた。
「あなたいったい何してんのよ!?」
「…由香里……どうしてここにいるの?」
「どうしてって、ここはあたしのマンションの近くじゃない。それより今の何?あたしとひろみって友だち同士みたいだけど、恋人だと思ってたのに…。どうして?どうしてそんなことができるの?」
「…由香里……ごめんなさい…」
「謝るくらいだったら、二人とも離れてよ。どうしていつまでもくっついてるの!」
「……」
僕の目から涙が流れた。
由香里に嫌われたらしいことが悲しいのだ。
しかし、どうしても加藤のそばから離れることができなかった。
加藤はそんな僕をしっかりと抱きしめてくれた。
「何やってるのよ、二人とも。不潔よ」
由香里は僕たちを罵倒した。
それでも僕は加藤のそばを離れなかった。
「二人とも勝手にしてなさいよ。もうわたしの前に姿を見せないで!」
彼女は去っていった。
僕はすごく悲しい気持ちになった。
しかしそれ以上に僕は由香里を傷つけたのだろう。
でも今の僕には加藤の方が必要だった。

僕は由香里の部屋に戻るに戻れず、何も言わずに加藤の部屋までついて行った。
僕はずっと涙を流していた。
いつの間にこんなに涙もろくなってしまったんだろう?
女の子の格好をしていると、気持ちまで弱くなってしまうんだろうか?
そんなことを考えている僕の肩を加藤は優しく抱いてくれた。
部屋に入ると力強く抱きしめられた。

「ひろみ、これからもいろいろと障害があるかもしれないけど、俺はひろみのことをずっと愛してる」
「加藤くん…」
僕は加藤の言葉が嬉しかった。
俺は黙って目を閉じた。
今の僕には加藤が必要だ。
加藤がいないとどうにかなってしまいそうな気がする。
加藤の唇が僕の口をふさいだ。
僕はむさぼるように加藤の舌を求めた。
加藤の手が僕のお尻をなでた。
僕たちはベッドに倒れ込んだ。
僕は何の嫌悪感も持たなかった。
加藤に抱かれたい、その一心だった。
加藤は僕を全裸にした。
加藤が僕の胸を舐めたときには想像以上の快感を感じた。
「……んん〜ん…」
僕は快感で喘ぎ声をあげた。
僕自身、胸でこんなに感じられるとは知らなかった。
加藤は口で乳首に刺激を与えながら、右手で僕のペニスをもてあそんだ。
僕のペニスは最近全然勃起しない。
加藤の刺激でも勃起しなかった。
加藤は口で僕のペニスを銜えてくれた。
僕のペニスは久しぶりに硬度を増した。
だが加藤の愛撫が終わるとすぐに萎えてしまった。
「ひろみ、四つん這いになってくれるか」
どこからかゼリーを取り出し、僕のアナルに塗りつけた。
加藤はコンドームをつけていた。
アナルに加藤のペニスがあてられたのを感じた。
僕は加藤がいよいよ挿入しようとしていることが分かって緊張した。
「ひろみ、そんなに力を入れたら入らないぞ。もっと力を抜いて」
僕は深呼吸をして力を抜こうと努力した。
少しずつ加藤のペニスが入ってくるのが分かった。
痛くて泣きそうだった。
僕としては処女喪失だ。
それでも僕は我慢した。
「ひろみ、動いていいか?」
加藤は僕の返事を待たずにゆっくりと動き出した。
痛くて避けそうな気がしたが、僕は必死で堪えていた。
やがて痛みの中に少しずつ快感を感じ出した。
「ん…ん…ん…ん…ん…」
僕は無意識に声を出していた。
「ひろみ、好きだぁ」
加藤はそう叫んでフィニッシュを迎えた。
僕のペニスからも精子が飛び出した。
僕は力を入れることができず、ベッドに突っ伏した。
加藤はゆっくりと僕の中から出た。
加藤のペニスが僕から出た後も、僕はお尻に何かが入っているかのような違和感を覚えていた。
「ひろみ、愛してる」
加藤は背後から僕を抱きしめて呟いた。
「わたしも…愛してる……」
何か暖かい幸福感に包まれていた。

その日から僕は加藤の部屋で暮らすようになった。
由香里の部屋に置いてあった僕の荷物は由香里のいないときに全て引き上げた。
加藤に勧められて女性ホルモンも飲み始めた。
女性ホルモンの効果を出すため、男性ホルモン抑制剤も飲むようになった。
今の僕は加藤好みの女性になることが唯一の生きている証のように感じていた。
女装ではなく、女として生きていけたらいいなとまで思うようになっていた。


時間は少しさかのぼる。

「加藤くん、浩実ったらひどいのよ」
俺が寝ていると、由香里から電話がかかってきた。
「何だよ、俺、今日は疲れてもう寝てたのに」
「浩実ったら……」
由香里は電話の向こうで泣き叫んでいた。
「分かった、今からそっち行くから」
由香里は浩実の家の近くのコンビニのそばにいるらしい。俺はそこからすぐのファミレスで待っているように言った。

俺は自転車でファミレスに急いだ。入り口から最も遠くのテーブルに由香里がいた。
「由香里、どうしたんだ?」
「……」
「松原と何かあったのか?」
「……」
「黙ってちゃ分かんないじゃん」
俺はともかく由香里が落ち着くのを待つことにした。そのうち少しずつ由香里は落ち着きを取り戻してきたようだ。
「今日ね、浩実の部屋に行ったら、女性の下着があったの。でね、『誰の?』って訊いたらね、浩実ったら『自分の』って言うのよ。彼ったら隠れて女装してるらしいの。すっごく裏切られたみたいで…」
「あいつが女装してるのか……」
俺は"女装した男"っていうものに異常に惹かれる傾向がある。出会った頃から『松原が女の格好したら似合うだろうな』と思っていた。妄想の中で松原に女装させ一人エッチをしたこともある。
目の前では由香里の泣き言が続いていた。
「……もう浩実のこと、信じられない…」
「お前は松原と別れるつもりなのか?」
「もちろんよ。あんな不潔なやつなんか顔もみたくない」
「じゃあさ、松原に復讐っていうか仕返しをしてみないか」
「どういうこと?」
「あいつに女性ホルモンを飲ませて男でなくなるようにするのさ」
「そんなことして大丈夫なの?」
「浩実も中途半端な女装なんかするよりちゃんとした女になった方が幸せってもんだろ?」
「それもそうね。仕返しというより、浩実のためになるんだ。でも女性ホルモンってあるの?」
「俺が何とかするよ。とりあえずあいつと仲直りする振りして、女装させて写真を撮ってきてくれないかな?」

次の日、由香里から電話があった。
「加藤くん、女の子の浩実ってすっごく可愛いんだよ」
「そうなんだ」
「でさ、昨日加藤くんが女の子にしてやろうって言ってたの、思い出したの。あたしね、本当に浩実を女の子にしてあげたいって思ったのね。でねでね、あたしの部屋で一緒に暮らすことにしちゃった」
「どうして?」
「だって、ずっと一緒にいた方が女の子のいろんなこと教えてあげられるじゃない」
「そりゃそうだけど」
「絶対浩実は女の子になるべきだったのよ。あたしが浩実を立派な女性にしてあげる」
「昨日あんなに泣いてたのはどうなったんだよ?」
「女の子の浩実を見たらどうでもよくなっちゃった」
「ところで頼んでいた写真は撮ったのかよ?」
「あっ、忘れてた。でも明日からもずっと一緒だからいつでも撮れるよ。撮ったらすぐに送ってあげるね」
「頼んだぜ」
「じゃね、あたし、浩実の引っ越しなんかで忙しいから」
由香里は一方的に話して電話を切った。
予想通り女装した松原は可愛い。
俺はほくそ笑んだ。
由香里もなぜか松原を女にすることに積極的になっていた。
俺が考えていた以上に事は進みそうだ。
俺の一物は大きくなった。
俺は女になった松原を想像してマスを掻いた。

次の日になって、由香里から女装した松原の写真が送られてきた。
写っているのが由香里と松原だと知っている俺でさえ、女の子二人の写真に見える。
予想以上に松原は可愛い。
俺はその写真を見ながら、何度もマスターベーションした。

次の日に入手した女性ホルモンを由香里に渡すべく大学構内で由香里の姿を探して歩いていた。
そして松原と歩いている由香里を見つけた。

僕は由香里のところに行き女性ホルモンをいれた紙袋を渡した。
「大塚、これ、頼まれていたもの」
由香里は松原と一緒のところで渡されるとは思っていなかったのだろう。
少し驚いた様子だったが、すんなりと俺の渡した紙袋を受け取ってくれた。

しばらくすると携帯に電話がかかってきた。
「どうしてひろみと一緒のときに渡すのよ?焦ったじゃない」
「まあいいじゃん、どうせうまく言い逃れたんだろ?」
「うん、まあそれなりに誤魔化したけど…」
「じゃ、いいじゃん」
「それにしてもこんなもの、どうやって飲ませたらいいのよ?」
「ジュースに入れるとかご飯にいれるとか適当でいいよ」
「どれだけ飲ませたらいいの?」
「一日一カプセル。多すぎたら体調を崩す場合があるそうだ。量を守っても最初のうちは頭痛とか倦怠感が出てくる場合もあるけど、続けてるうちになくなるそうだから。ビビって飲ますのを中断しないようにしてくれよな」
「分かったわ、何とかやってみる」
この日から単なる女装から女性化の道に松原を導いてやったわけだ。

由香里からメールがあった。
どうやら松原が体調を崩したらしい。
本人はガードルの締め付けのせいだと思っているらしいが、由香里はワインに入れて飲ませた女性ホルモンのせいだと思っている。
俺も間違いなく女性ホルモンのせいだと思う。
次の日になっても松原の体調が戻らないらしい。
由香里は女性ホルモンを飲ませ続けることにちょっと弱気になっていた。
ここでやめられたら俺の計画がパァーになってしまう。
必死に明日には元気になるはずだからと由香里を言い聞かせた。

次の日になってようやく松原は元気になったらしい。
由香里が起きたときにはしっかり女装して朝食を作っていたとのことだ。
元気になった松原を見ると、由香里の気持ちもまた積極的になったようだ。
言葉遣いもちゃんと女の子にしようと提案したらしい。
松原もそれに同意したらしい。
松原が普通にしていても女の子らしくなったら、由香里としては一緒に外出したいんだそうだ。
確実に俺の願望が叶うように物事が進みつつあった。

その後なかなか由香里からの連絡がなかった。
俺は状況が分からず少しイライラしていた。
1ヶ月ほど経ったときに久しぶりに由香里からメールが来た。
明日初めて女の子二人で外出することになったそうだ。
次の日、俺は朝早くから由香里のマンションの前で二人が出てくるのを待っていた。
俺がマンションの前に来てから1時間くらい経ったときだろう。
マンションから二人が出てきた。
俺は目を疑った。
全く女の子同士に見える。
由香里が誰か俺の知らない女の子と一緒に出てきて、俺をかつごうとしているのかと思ったくらいだ。
しかし、よく見ると確かに浩実の面影がある。
本当に可愛い。
俺のタイプだ。
松原は由香里と二人で買い物を楽しんでいた。
俺は股間を膨らませながら松原の姿を追っていた。

大学での松原を毎日観察していると少しずつだが女性ホルモンの効果が現れてきているように思う。
肌が少しずつきめ細かくなってきているのだ。
ある日悪戯心で胸を肘で突いてみた。
予想通り、松原は異常に痛がった。
きっと乳首の辺りにしこりができているんだろう。
あと何ヶ月かで本当にブラジャーが必要なくらいの乳房ができているのだろうか。
身体の線ももっと女性っぽくなっていたらいいな。
俺の妄想は膨らむ一方だ。

由香里から出かける予定を聞き出して、偶然の出会いを装った。
俺が近づくと、松原は慌てて俺と反対の方を向いた。
俺は内心ニタニタしながら、大塚に近づいた。
「よっ、大塚」
「あっ、加藤くん」
松原は気づかない振りをしているようだ。
しかし、由香里に俯き加減に加藤の方を向いた。
「加藤くん、この子、私のルームメートでひろみって言うの」
「ひろみです、よろしく」
僕は地声がばれないように小声で挨拶した。
「加藤です、よろしく」
俺は内心の喜びを隠して無愛想を装って言った。
「じゃ、大塚、また大学でな」
別れ際、大塚は俺と目を合わせて、ウインクをしてきた。

松原にダブルデートを提案してみた。
俺が女装した松原のことを
「ムチャ可愛かったんだ」
と言ったとき、松原は平静を装ってはいたが、顔が真っ赤になっていた。
さらに
「そう言えばお前も浩実って言ったよな」
と言ったときの松原の慌てようはなかなかの見物だった。
とにかく松原が俺の「女」になるかどうかはこれからのアプローチにかかっている。

デートの日、俺は松原を抱きしめたくなる衝動を何度も抑えなくてはならなかった。
それほど可愛かったのだ。
しかし今日は次の段階への布石にするだけが目的だ。
俺は意識して紳士的に振舞った。
女装する男は自分が男性から女性として扱われることに喜びを感じると聞いたことがある。
俺はできるだけ松原を女性として扱った。
これにより、松原が次も俺に会いたいと思うだろうし、次の誘いを断りづらくしておくことも目的のひとつだった。

二回目のデートでは予定通り1対1のデートになった。
最初から由香里はドタキャンする手筈になっていたのだ。
会ったときには1対1のデートになることを理由に断ろうとしているようだったが、何とか無事に実現することができた。
デートのときには手を握ることができた。
松原が特に嫌がっている様子はなかった。
これで次のステップに行く自信がついた。
俺は帰りにカップルの多い公園に寄った。
海の見えるところで、周りはカップルばかりで自然と雰囲気が盛り上がってくるはずだ。
俺はそんな中でひろみに愛を告白した。
しかも正体は分かっていると言って。
男と分かった上で女として愛していると言えば松原のような性格には有効だと思ったのだ。
果たして俺は勝負に勝った。
松原が俺のキスを受け入れたのだ。

いよいよ最後の仕上げの日が来た。
俺は事前に由香里に頼んでおいた。
俺と松原が一緒にいるところを目撃して思いっきり罵倒してくれと。
しかし、由香里もまさか俺と松原がキスしているとは思わなかったんだろう。
真剣に怒っているようだった。
実際、ことが終わってから「変態。不潔。最低。アンタの顔なんか見たくない」という内容のメールが来たくらいだから。
とにかく松原は思いっきり動揺して、俺はそこに付け込んで松原の処女を奪った。
「由香里の顔は見づらいだろうから俺と一緒に暮らそう」
そんな俺の言葉に何の疑いもなく俺の部屋で一緒に暮らし始めた。
2日か3日に1回は松原を抱いた。
俺は松原に進んで女性ホルモンを飲むように仕向けた。
「やっぱりお前の身体はごつごつしてるから男を抱いてる感じがするんだ」
「どうすればいいの?」
「女性ホルモンを飲んで身体を女性っぽくしてくれたら嬉しいな」
「……どうすれば手に入るの?」
「女性ホルモンを飲むのか?」
「だって加藤くんはその方がいいんでしょ?」
そんなやりとりの後、松原は自ら女性ホルモンを飲みだした。
実際はすでに半年以上摂り続けているのだが。
驚いたことに松原は男性ホルモン抑制剤も合わせて飲み出したらしい。
そのおかげか最近松原の胸がBカップくらいになってきた。
それに全身性感帯になっているようで感じやすくなっているようだ。
ペニスはほとんど固くならないし、お尻は女のように柔らかい。
松原は本当に俺とのアナルセックスが大好きのようで、一体になっているときは本当に気持ち良さそうだ。
そのうち松原をニューハーフヘルスででも働かせて俺はその金で遊んで暮らしたいな。
俺は松原を突きながらそんなことを考えていた。


《完》
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