真夏の夜の夢



田北和雄は最近女装にはまっている。
始めたきっかけは社会に出て1ヶ月経った頃に陥った五月病だった。
社会人になって張り切って入社したのに、ゴールデンウイークが終わると、身体がだるく会社に行く意欲も湧かない。
そんな状態に陥ってしまった。

そんな状況を他の会社に勤める何でも話せる友人、川本智泰に相談した。
川本は自分の彼女、江本真奈を連れていた。
「お前、それ、五月病だよ」
「五月病?ああ、そう言えばそういうのって聞いたことあるな。五月病ってこんなのか?」
「俺もよく知らないけどさ、そうなんじゃないの?」
「そうなのかな?」
「お前、変なとこ、クソ真面目だからな」
「そうか?」
「そう。仕事のことばかり考えてないでたまには気分転換しろよ」
川本はそんなことを和雄にアドバイスした。
「疲れたサラリーマンのおじさんの中には女装クラブに行く人もいるらしいわよ」
一緒に飲んでいた川本の彼女である江本真奈が言った。
「女装?僕はそんな趣味ないよ」
その場ではそう言ったが、和雄はなぜか真奈の言葉が気になった。
彼らと別れたあとも妙に頭にこびりついているような感じだった。
そこで騙されたと思って女装クラブに行くことにした。
調べてみるとそれなりに女装クラブってのはあるものだ。
あまり会社に近いところで知り合いに見つかるのはまずい。
アパートでは近所付き合いが皆無とは言え、やはり知っている者に見られないとも限らない。
そう考えて、自宅からも会社からも離れた店を選択した。

5月の最後の週の金曜に意を決してその店に行った。
その店は雑居ビルの3階にあった。
店に入ると普通の格好をした男性店員がいた。
「いらっしゃいませ。お客さんはこの店は初めてですか?」
「は……はい」
「そうしましたらとりあえず下着の上下を購入していただいて貸衣装・メーク込みで2万円ですが、よろしいでしょうか?」
「…はい」
「それでは下着と今日着ていただく服を選んでください」
和雄は言われるままに下着と服を適当に選んだ。
「脛毛は濃いほうですか?」
「はい、それなりには」
「それじゃストッキングは黒っぽい方がいいですね。それではそちらで下着と服を着てください。着たら奥にメーク担当の者がいますので、そちらに行ってください」
和雄は急いで更衣室に入り、服を着た。
初めて着る女性服にはとまどったが、何とか着ることができた。
鏡には女性の服を着た奇妙な自分が映っている。
(何してんだよ、僕は)
そう思うが、とりあえず一度経験してみようと思い直した。
「着ましたけど」
「それじゃ奥にどうぞ。あっ、ご自分の服はそちらの空いているロッカーに入れておいてくださいね」
和雄は空いているロッカーに自分の服を入れると、化粧をしてもらうために奥に行った。
「こちらにどうぞ」
奥に行くと若い綺麗な女性がいた。
(こんなに綺麗なのにどうしてこんな店で働いてるんだろう?)
和雄はそんなことを考えた。
その向こうには明らかに女装した男が二人酒を飲みながら話をしていた。
「お客さん、初めてね」
「は……はい」
「髭も濃くないし、小顔だし、結構綺麗な肌してるから、お化粧したら綺麗になるわよ」
若い女性は和雄の髪をピンで留めて前髪をあげた。
そして手早く和雄の顔に化粧を施した。
目の前の鏡に化粧された奇妙な自分が映っていた。
(やっぱり来なきゃよかったかな)
美人にこんな恥ずかしいことをされていると思うと、そんな思いが頭をかすめた。

「ウィッグはどんなのがいい?」
「ウィッグって?」
「かつらよ、かつら。髪型はどんなのがいいかな?初めてのお客さんの場合、あんまり長いのも何だから、肩にかかるくらいでいいかな?」
「は……はい、それでいいです」
「ストレート?それともウェーブが少しかかってる方がいい?」
「少しかかってる方で」
「わかったわ」
若い女性は横にあったウィッグからひとつ取り出した。
「色はダークブラウンだけど、これでいいかしら?」
「はい」
和雄の頭にウィッグが被せられた。
ウィッグは和雄を美しい女性に変えた。
「はい、出来上がり。結構可愛いじゃない」
和雄はあまりの変身振りに驚いた。
鏡にはまさに自分の好みの女の子が映っていたのだ。
「ほぉ〜、これはまた」
「若いってのはいいですな」
話していた二人の男性がいつの間にか和雄のすぐ後ろで和雄を見ていた。
「名前は?」
「和雄です」
「ははは、本名じゃないわよ。女性になったときのニックネームみたいなものよ。じゃあ、和雄くんなら和代ちゃんでいいかな?」
「…はい」
あんまり本名と同じっぽいのはまずいかなと思いながらも断ることができなかった。
「じゃっ、和代ちゃん。足のサイズは?」
「24.5です」
「へえ、意外と小さいんだ。それなら普通の女性の靴も履けるかもね。とりあえずこの辺でいいかな」
そう言って出されたのは白いパンプスだった。
「ハイヒールの方がいいんなら言ってね。まだ初めてだから、この辺りから始めたらどうかなと思って」
「いえ、これでいいです」
和雄は急いでパンプスを履いた。
「じゃ、記念撮影するから、そこの椅子に座って」
和雄は言われるままにバックに濃い青の幕が吊るされた前に置いてある椅子に座った。
「はい、笑って。ちょっとぎこちないわよ。膝は揃えて。脚はどちらかに流すようにして。…うん、そう。もっとリラックスして。はい、そう。じゃあ、撮るわよ」
『カシャッ』
今時珍しいポラロイドカメラだ。
「はい、和代ちゃんの初めての写真」
若い女性は出てきたフィルムを振りながら和雄に渡した。
「ポラロイドカメラなんて久しぶりに見ました」
「だって、ネガやデジカメだったら、簡単に焼き増しやコピーできるでしょ。そういうのって嫌がるお客さんがいるのよ。何だったらデジカメで撮ってあげようか?お友達に配ることができるわよ」
「いえ、いいです」
和雄は撮ってほしいという気持ちがあったが、即座に否定した。
「でもその顔はもっと撮って欲しいっていう顔ね。まあいいわ、いつでも言って。撮ってあげるから。もちろん無料よ」
和雄は写真に写った女装した自分を見た。
本当に可愛いし、綺麗だ。
和雄は男だという鎧を外したようで急に気持ちが楽になったような気がした。
先に女装していた人たちと話をした。
自分より10歳以上年配のようだった。
なかなか話は合わなかったが、それでも女装者同士ということで楽しい時間を過ごした。
その日から週末になると女装クラブに行くのが習慣のようになった。


「和代ちゃんは可愛いからばれないわよ。一度外出してみたら?」
何度か通ったときに純子に女装外出を勧められた。
純子とはこの店のメーク担当の綺麗な女性の名前だ。
何度も通っていると和雄も純子のことを「純子さん」と呼ぶようになった。
その頃には和雄の女装姿もだいぶ板についてきて、当初見られた不自然は見られなくなっていた。
ヒールの高い靴でも難なく歩けるようになっていた。
自然に女性ファッション雑誌を見るようになって、中でもCancamがお気に入りだった。
ウィッグはもちろん下着や服もいろいろと購入していた。
もちろんCancamで紹介されているものを参考に通販で買っていた。
女装ショップは種類が少なく高いのだ。
「そんな無理です。パッと見た感じはともかく、仕草や声は完全に男ですから」
「自分で思ってるほど、和代ちゃんって男に見えないよ。ちょっとは男っぽい仕草もあるけど、男っぽい仕草の女性なんていっぱいいるもの。それに声なんて話さなければいいんだし、もし話さないといけなくなってもボソボソと話せば分かんないわよ」
和代も内心ではかなりいけてるんじゃないかと思っていた。
「外出って言ってもそんなにウロウロしなくても隣のホテルの喫茶店でちょっとお茶するとか、最上階のバーで飲むとかでも楽しいよ、やってみれば?」
「いけますかね?」
「大丈夫だって。もし軟派されたりしたら、そのままお泊りしたっていいのよ。この店なら朝9時くらいまでなら開いてるから」
「よしてくださいよ。僕、そんな趣味ないですから」
「そんなこと言ってても、女装している男性は自分が女性として扱われると舞い上がっちゃうものなの。実際軟派されたら意外と嬉しいらしいから」
「そんなものなんですか?でも僕は大丈夫ですから」
「大丈夫ってどういうことなのよ?まあいいから行ってみなさいって」
和雄は純子からバッグを借りた。
「若い女性が手ぶらなんてあり得ないからね。最低限の化粧道具は入れておいたから適当にお化粧直ししてね」
和雄は純子の言葉に後押しされるように、女装ショップを出た。

廊下に響くハイヒールの音にドキドキした。
それにしても女装クラブから一歩でも外に出ると、ものすごく緊張する。
一方ではスカートに感じる外気が心地よかった。
エレベータに誰もいないことを確認するとホッとしてエレベータに乗った。
誰かが乗っていたら階段で行こうと思っていたのだ。
しかしハイヒールで階段というのは慣れていないから、できればエレベータで、と思っていた。
エレベータを降り、雑居ビルを出るときには心臓の鼓動がさらに早まった。
はれたらどうしよう?
そんな思いが頭をよぎった。
そんな思いを振り払うように雑居ビルを出た。

表に出ると逆に度胸がついた。
(大丈夫。わたしは女の子だもの)
そんなふうに頭で考えていた。
自然と考える言葉は女性言葉になっていた。
和雄は純子に言われたように隣のホテルに向かった。
距離にして500メートル足らずだったが、和雄には随分遠いように感じられた。
「おい、彼女、可愛いじゃん」
すれ違う男たちのそんな言葉が耳に入った。
どうやら男だとばれていないようだ。
それどころか可愛いだなんて。
通りすぎる男性たちは和雄の顔を見て、胸や脚を見て、また顔を見る。
それは男である自分が女性に向ける視線そのものだった。
最後に顔を見ていやらしい顔をする者。
視線が合いそうになると慌てて視線をそらす者。
そんな態度を見ていて、自分が女性として意識されていることが分かった。
和雄はさらに自信を深めた。
ホテルに入り、1階の喫茶店に行くつもりだったのだが、予定を変えて最上階のバーに向かった。
その方が今の自分に合っていると思ったのだ。
和雄はカウンターの端に座った。
「何にいたしましょうか?」
和雄はこういう場面で女性がどういうものを頼むのか想像できなかった。
とりあえず甘いカクテルくらいかなと思い、モスコミュールを頼んだ。
一人で飲んでいても話し相手がいるわけでもなく退屈だった。
女装していったい僕は何をやってるんだろうという思いもあった。
もうそろそろ終わりにしようと思い、席を立とうとしたときだった。
「お嬢さん、隣いいですか?」
「あっ、はい」
見るからに清潔そうな爽やかな青年が立っていた。
おそらく和雄と同い年か少し上程度だろう。
「彼女に同じものを。それから僕にはスコッチをロックで」
「あっ、いえ、わたしはもう帰ろうとしていたので」
「一杯だけ付き合ってくださいよ。野郎が一人だけで飲んでるのって侘しいだけでしょ?」
男はそう言って笑った。
和雄は何となく男に好感を持った。
そこで座り直して男と飲むことにした。
「二人の出会いに乾杯」
男の臭い台詞も今の和雄には素敵な言葉に聞こえた。
二人でいても話しているのは専ら男の方だった。
車が好きらしく、F1の話になるととまらなかった。
フランスグランプリのヤルノの話になると熱くなった。
「彼はね、本当にフランスではついてないんですよ」
車もF1も興味のない和雄にとっては退屈な話のはずなのだが、なぜか楽しく聞くことができた。
和雄はもともとお酒にそれほど強くないはずなのに気がつくとカクテルを4杯も飲んでいた。
「そろそろ店を出ましょうか。私の部屋はひとつ下なんですけど、どうです?来ませんか?」
和雄はアルコールが入っていることで少し大胆になっていた。
(男とも知らないで……)
ふと悪戯心が湧いてついていくことにした。


部屋に入ると窓際に連れて行かれた。
そこでカーテンを開けると、東京の夜景が眼下に広がっていた。
「綺麗」
「そうでしょ、ここから見るこの景色が僕は一番好きなんです」
男はそう言って和雄の肩を抱いた。
和雄はこの雰囲気に飲まれ、本当に女性になったかのような気がしていた。
男がキスをしようとした。
「ちょっ…ちょっと待って。ごめんなさい。実は僕、男なんです」
和雄が我に返って、男を押しのけようとした。
「何を言ってるんですか。それじゃこの胸の膨らみは何だって言うんですか?」
男が和雄の胸を揉んだ。
「…んっ…」
(何だ、この感触は?)
和雄の頭には胸を揉まれてる感覚が伝わってくる。
「この胸はパットだと言うんですか?その割には感じているみたいですけど」
「そんな馬鹿な……」
「さっきから一体何を言ってるんですか?」
「どうして僕が女になってるんです?」
「あなたは自分が男だって言うんですか?じゃあ、本当に男なのか確かめてみましょう?」
男はスカートの中に手を入れ、ショーツの上から和雄の股間を触った。
「やっぱり何にもないようですね。それともあなたのおチンチンは女のパンツでも隠れるくらい小さいって言うんですか?」
男はショーツの中に手を入れ、割れ目に沿って指を動かした。
「立派な女性じゃないですか。どうして変なことを言ったんですか?男と女の関係になりそうなんで怖気づいたんですか?」
和雄は何が何だか分からなくなった。
(自分のことを男だと思っていたのが間違っていたのだろうか?)
和雄はベッドに押し倒された。
「ここまで来たらもう覚悟してくださいね。あなたは私に抱かれるんです」
和雄は黙ってうなずいた。
男は手早く和雄の服とスカートを剥ぎ、下着だけにした。
「やっぱりいいプロポーションをしてる」
男は和雄を眺めて言った。
男は和雄の背中に手を回し、ブラジャーのフォックを外した。
男がストラップを取るときに和雄も動きを合わせてストラップを外しやすくした。
和雄が自分の胸を見ると半球の丸い乳房が目に入った。色が白く柔らかそうだった。
「あなたの乳房は本当に綺麗だ。乳首もピンク色をしている」
男はそう言いながら胸を揉んだ。
ついさっきまで和雄にはなかったはずのもの。
そこから生まれる快感に和雄は身を任せていた。
男は和雄のショーツを取り、自分も全裸になった。
男のペニスは和雄のものよりずっと大きくて太い物だった。
男のペニスが入ってきた。
「……ん……はぁぁ…ん……」
少し痛かったが、何とか我慢できるものだった。
男が動き出したときに痛みは増した。
(痛い!)
少しの間痛みに耐えた。
すると、少しずつ痛さにも慣れてきた。
そして僅かだが、ゆっくりと身体の芯から快感が押し寄せてきた。
「…ぁ………ぃぃ…………」
無意識に男の動きに合わせて和雄も腰を振っていた。

男の動きが激しくなった。
「…ぁぁぁぁ………すごい………」
男が腰を強く打ち付けてきた。
(中に出される!)
快感の中にも冷静に考えている自分がいた。
和雄の中で男のペニスが痙攣し精液が出されたのを感じた。
和雄はそう感じると意識が遠のいてしまった。

………気がつくと男はいなかった。
和雄は自分の身体を点検した。
胸には膨らみはなく、股間には見慣れた物がついていた。
「男に戻ってる」
しかしシーツには破瓜の血がついていた。
やはり男に抱かれたのは事実のようだった。
和雄はホッとしたような、残念なような気持ちになった。


そんなことがあって女装ショップに行くのが恐くなった。
そのため、二度と女装ショップに行かないでおこうと決心した。

しかし、ある日、会社の仕事で上司に連れられてM会社に行ったときに、あのときの男がいた。
「松永邦彦です」
彼は上司らしい男とともに和雄の商談に耳を傾けていた。
和雄の方は意識が男にばかり行き、うまく説明ができなかった。

その日の夜、何となく感じるものがあって久しぶりに女装クラブに出かけた。
「和代ちゃん、久しぶり。もう来ないのかって心配してたんだよ」
「ちょっと仕事が忙しくって」
「そうなの?女装外出をした日から全然来てくれなくなったから、何か嫌なことでもあったのかなって思ってたんだけど」
「そんなことないよ。ただ仕事が忙しかっただけ」
和雄はいつものように女装すると、前回と同じようにホテルのバーに行った。
すると邦彦がいた。
「やっぱり来てくれたんだ」
邦彦が和雄の腰に手をやって、席に座るのを促した。
「何か今日は会える気がして」
和雄は自分の発した声に驚いた。
いつもより高い声だったからだ。
「あなたにはそういう声が似合いますよ」
邦彦はニコッと笑って和雄の手の上に手を重ねた。
手を触られたことで、和雄の股間は湿り気を帯びるのを感じた。
すでに和雄は"女"になっていた。
「今日も部屋を取ってあるんですか?」
「もちろんですよ。すぐに行きますか?」
「ええ」
部屋に入ると和雄はすぐに邦彦のキスを求めた。
「どうしたんですか?」
「だって寂しかったから」
和雄は自分の行動に驚きながらも、どうしても自分の欲求を抑えることができなかった。
和雄は自分の口に入ってくる邦彦の舌を吸った。
邦彦の舌がなくなったら自分の全てを失うかのように一生懸命に。
和雄が一生懸命に舌を吸っている間に邦彦は和雄を全裸にした。
邦彦は唇を離し、ゆっくりと和雄をベッドに横たえた。
邦彦はゆっくりと自分の服を脱ぎ始めた。
和雄はそれをおとなしく待っていた。
邦彦も全裸になり、和雄に覆いかぶさってきた。
「そう言えば君の名前を聞いてなかったな」
「和代です」
「和代さんか。いい名前だ」
邦彦は和雄に優しくキスをした。
和雄はそれをトリガーにして、また激しく求めだした。
「早く邦彦さんの物を入れて」
その言葉に邦彦は舌打ちをした。
「君には男だったプライドはないのか?」
「わたしは女よ。邦彦さんがそうしたのよ」
邦彦は前戯もそこそこに和雄にペニスをぶち込んだ。
「男が女に変えられて恥らうのがいいんじゃないか」
邦彦は和雄に聞こえないように小さな声で呟いた。
快感に悶えている和雄には聞こえるはずもなかった。
「ああ、いいわ」
邦彦は乱暴に腰を振った。
和雄は快感を感じながらも、邦彦をギュッと抱きしめていた。
「よかったわ。もう1回できる?」
「無理だよ、疲れてる」
和雄は身体を入れ替え、邦彦の股間に顔を近づけた。
「おっおい、君」
「いやっ、和代って呼んで」
「和代、まさかそれを銜えるのか?」
「そうよ。好きな男性の物なら女性だったら誰でもするでしょ?」
「君は男なんだぞ」
「わたしはあなたの前では女よ」
和雄は邦彦のペニスを銜えた。
精液と自分の粘液で汚れたペニスを綺麗に舐めた。
舐めている内に邦彦のペニスは硬さを増した。
和雄はペニスをまたぐようにして、自分の中に導いた。
「あぁ、いいわ」
和雄は何度も上下した。
2回目のせいかなかなか射精しなかった。
和雄は長い間動いた。
ペニスが子宮を突く感じがすごくいい。
やっと邦彦が射精した。
和雄の意識も飛んでしまった。

気がつくとやはり邦彦の姿はなかった。
和雄は邦彦に毎日でも会いたい気持ちになっていた。

和雄は次の日に、M会社の邦彦にメールを送った。
仕事9割、私用1割の内容だった。
User unknown でエラーメールが返ってきた。
慌ててM会社に行ってみたが、邦彦はいなかった。

和雄は心にポッカリ穴が空いたようだった。
五月病よりもひどい状態になってしまった。
仕事も手につかず、ひと月も経たないうちに会社を辞めた。
和雄は24時間女性として生活し出した。
性別適合手術を受けるためにカウンセリングを受け始めた。
睾丸の摘出手術を受け、女性ホルモンを飲み始めた。
ひと夏の嘘のような体験が和雄の人生を大きく変えてしまった。


和雄は純子に会いに女装クラブに行った。
「純子さん」
「あれぇ、和代ちゃん?最近全然来なくなったと思ったら、そんな格好して。もしかしてフルタイム女の子してるの?」
「ええ、まあ」
「ふ〜ん」
純子は何か考えているようだった。
「和代ちゃんがおかしくなったのって女装外出してからだよね?」
「おかしくはなかったと思いますけど」
和雄はちょっとムッとして言った。
「もしかしたら女装外出のときに男の人に誘われて和代ちゃんも女の子の快感を教えられたの?」
「えっ、『和代ちゃんも』ってことはもしかしたら純子さんもですか?」
「うん、そう」
「ということは純子さんも男だったんですか」
「ハハハ、ばれちゃったわね。でもあれって何だったのか今でも分からないのよね。本当に身体が変わるなんて信じられないもん」
「でも本当に女の子になってたと思いますよ」
「今考えると催眠術だったような気もするんだよね」
「ああそうか。それはありかも、ですね」
二人はしばらく黙った。
沈黙を破ったのは純子の方だった。
「とにかくわたしはその経験のせいで完全性転換をしちゃったんだ」
「私もあの経験から自分の身体に強い違和感を持つようになっちゃって。とにかく身体を女の子にしないとおかしくなりそうなんです」
「今はその準備中ってわけ?」
「はい、海外に行って手術するほどのお金もないし」
「本当に人騒がせな奴ね」
「同じ人なのかしら?」
「さあ?どうでもいいけどね」
純子は本当にどうでも良さそうに言った。
「恨んでます?」
「……う〜ん、遅かれ早かれこうなってるような気もするのね。そもそも女装なんてことをやり出したのは女性への憧れみたいなものだから」
「そうですよね。よーし、私も早く純子さんみたいな素敵な女性になるぞ」
和雄は妙に浮かれたように言った。
「で何しに来たの?」
「へへへ、実はメークを教えてもらおうと思って。だって今までずっと純子さんにやってもらってたし、あれから自分でやってるんですけど、全然うまくできなくって」
「じゃあさ、私の助手ってことでここで働かない?そんなに給料はもらえないけど、女の子として働けるから」
「いいんですか?ぜひ」
「それからついでに一緒に暮らそうよ、その方が家賃も浮くしさ」
「それもOKです。よろしく、先輩」
もしかするとあのまま会社勤めしているより今の方が和雄にとっては良かったのかもしれない。

和雄の未来に幸あれ!


《完》

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