憧れの専業主婦



仲川諒介は25歳。
ソフト開発会社に入社して3年が経っていた。
諒介はWebデザイン部門に配属された。
最初こそ力不足で周りの足を引っ張っていたが、少しずつ仕事を覚え今では立派な戦力の一人になっていた。
諒介には同期入社の5人の仲間がいた。
その中でも手嶋幸宏は親友と言える仲だった。
気弱な諒介に対し、幸宏は男気溢れる男性だった。
正反対とも言える二人だったが、なぜかウマがあった。
二人は会社の休憩時間には必ず一緒にいた。
諒介は幸宏を頼りにしていたし、幸宏も諒介のことを信用していた。
もうひとり小宮瑛子という女性も諒介には特別な存在だった。
瑛子とはどちらからともなく休日にプライベートで会うようになっていた。
お互い好意を持ってのことなのだが、諒介は自分の気持ちを伝えたことはなかった。
それは瑛子も同じだった。
一度も異性と交際したことのない諒介にとっては一緒に会うということで精一杯だった。
未だキスはもちろん手をつないだこともなかった。
友達以上恋人未満。
それが二人の関係を表す言葉だ。

ある日のこと、諒介はプロジェクトの追い込みで先輩の伊東悠美と二人で深夜まで残業をしていた。
伊東悠美は諒介の2つ年上でいわゆるキャリアウーマンタイプの女性だ。
しかし顔は美人でショートヘアでかっこいい女性だった。
もちろん男性陣からの人気はそれなりに高かった。
何人かの男性が交際を申し込んだのだが全員あえなく撃沈したらしい。
そのため「レズかもしれない」と陰で言われる始末だった。
二人は公開寸前のWebサイトをチェックしていて、Flashスクリプトにバグがあることを見つけた。
ある特殊な操作をしたときに動かなくなるのだ。
コーディングした派遣社員は休んでおり連絡もとれなかったため、何とか二人で修正しようと悪戦苦闘し深夜までかかっていた。
そして何とか協力してバグを修正できたのだ。
翌日の公開の目処が立ち、深夜遅い夕食を24時間営業のファミレスで食べていた。
「それにしても諒介くんって意外とやるわね、見直したわ」
「そんな、僕なんてまだまだですよ。それより悠美先輩のほうがすごいですよ、女性なのにバリバリ仕事ができて」
「何それ?諒介くんって女を馬鹿にする人だったんだ」
「そんなことないですよ」
「でもさっき『女性なのに』って言ったじゃない?それって『女性は仕事ができないのが当たり前なのに』ってことでしょ?」
「……そういうことになるんですね。すいません」
「別にいいんだけどね、会社は男社会だけど男性陣はそんなこと意識してないもんね。でも男性は男性で大変よね?結婚して寿退社ってのは普通女の特権だもんね?」
「寿退社か。憧れますね、寿退社して専業主婦に永久就職って」
「じゃ試しにわたしと結婚して寿退社してみる?一生諒介くんの面倒みてあげるわよ」
「何言ってるんすか?さっき悠美先輩が言ったように寿退社と言えば女の人の専売特許じゃないですか」
「今時男だとか女だとか言ってたらもてないわよ」
「だったら男だって寿退社もありってことですか?」
「奥さんに稼いでもらうのもありでしょ?」
「そりゃ悠美先輩は美人だし仕事ができてバリバリですもんね。恋人は仕事ですか?」
「わたしだって彼氏くらい欲しいわよ。でもこんなに忙しいと男と知り合うチャンスすらないもの」
「でも先輩くらい仕事ができれば仕事って楽しいでしょうね」
「そうでもないわよ。取引先の親父たちなんて女の癖にって感じでまともに相手してくれないやつって結構多いもの。こっちがそれなりに仕事ができることを示したら示したで、生意気な女だって言われるし、ね」
「そうなんですか?」
「まだまだ古い頭の男どもって本当に多いのよ、嫌んなっちゃう。諒介くんがわたしのお嫁さんになってくれたらいいのにね」
「何言ってるんですか?部下をからかわないでくださいよ」
「部下って言ったってたまたまわたしがプロジェクトリーダーしてるだけじゃない。また別のプロジェクトができれば諒介くんがプロジェクトリーダーでわたしがメンバーってこともあるでしょ?」
「それは可能性としてはありますけど、今の僕の実力じゃ悠美先輩に教えてもらうばっかりですよ。でも悠美先輩と結婚できる人って幸せだろうな」
「ねっ、諒介くんって童貞?」
「なっ…何ですか、いきなり!」
「どうなの?」
「…ええまあ……」
「へえそうなんだ」
悠美がニヤッと笑った。
「それじゃ諒介くんがわたしのお嫁さんになれるかどうかテストしてみようか?」
「テスト?テストって何ですか?」
「テストといったらもちろんセックスよ」
悠美は伝票を持って席を立った。
諒介はそのまま座っていた。
「来るの?来ないの?」
諒介は一瞬瑛子の顔が頭によぎったが、目の前の誘惑には勝てなかった。
悠美は諒介を待たずに出て行こうとした。
「は…はい、行きます」
諒介は慌てて悠美のあとを追った。
「あんまりわたしをイライラさせないでね」

諒介は悠美に連れられて悠美のマンションにやってきた。
「それじゃ諒介くん、わたしを抱いてみて」
諒介は恐るおそる悠美を抱き締めた。
「諒介くん、何かぎこちないわね。もしかして本当に初めてなの?」
「…だからそう言ってるじゃないですか…」
「今どき珍しいわね、その年で童貞だなんて。でもおかげでわたしの望みも叶えられるかもしれないわ。ちょっと待って」
悠美は鞄から小さな小瓶を取り出した。
「何ですか、それは?」
「わたしと諒介くんが一生一緒にいられるおまじないよ」
「先輩も女性なんですね、そんなおまじないを信じるなんて」
「やってもいい?」
「いいですよ」
悠美は小瓶から液体を自分の手のひらにとり、それを諒介の唇に塗った。
そして同じように自分の唇にも塗った。
「これでキスをすると諒介くんはわたしのものよ」
悠美の柔らかい唇が諒介の唇に重なった。
諒介の顔に酒臭い悠美の顔が近づいたかと思うと、唇がふさがれた。
悠美の舌が入ってきた。
諒介は一生懸命悠美の舌を追った。
長い長いキスだった。
悠美の顔が離れると二人の口の間に唾液が糸を引いた。

悠美は諒介の股間に手を伸ばした。
だが悠美の手で触られても諒介のペニスは固くならなかった。
「どうしたの?諒介くんって不能なの?」
「そんなことないですけど初めてだから緊張してしまって」
「普段は元気なんだ」
「はい…」
「ふぅん、そうなの?」
悠美は何となく不満顔だった。
「まあいいわ。テストは合格よ。諒介くんはわたしの恋人ね、いい?」
「えっ?」
「諒介くんはわたしの恋人って言ったの。分かった?」
「あっ…はい」

次の日から悠美は会社で諒介との仲の良さを誇示するように振る舞った。
その結果、悠美と諒介の仲は誰もが知るところとなった。
「ねえ諒ちゃん、諒ちゃんって悠美先輩とつき合ってるっての?」
瑛子が話しかけてきた。
「あっ、うん…」
「…そう…よかったね、悠美先輩は美人だもんね」
「…ごめん…」
「どうして謝るの?別に私たちつき合っていたわけじゃないでしょ?じゃあお幸せにね」
瑛子はそれだけ言って離れていった。
諒介は自分の優柔不断さから瑛子を傷つけたようで大いに悔いた。

瑛子との関係が完全に終わったことで諒介は悠美への気持ちがどんどん強くなっていった。
あの日以来職場以外でのデートはほとんどなかった。
それでも会社では時間ができると二人で一緒にいた。
そんな関係が半年以上続いた。

「結婚してください」
諒介は仕事が終わって会社で二人になれたタイミングで思い切ってプロポーズした。
「ついにわたしのお嫁さんになる決心がついたのね。感心感心」
悠美は諒介の頭を撫でるような仕草をしながら言った。
「何言ってるんですか?先輩がお嫁さんでしょ?」
「一番最初に言ったじゃない?諒介くんをお嫁さんにするって。まあどっちでもいいけど、そんなこと。わたしはいつでも結婚する気でいたのになかなかプロポーズしてくれないんだもん」
「えっ、そうだったんですか。ありがとうございます」
「それじゃわたしは結婚式の前の日に念願の寿退社するわね」
「悠美先輩、本当に仕事やめちゃうんですか?」
「だって諒介くんはそれが望みだったんでしょ?」
「えっ、そんなことはないですけど」
「いいからいいから。諒介くんがちゃんとわたしのお嫁さんになってくれるようにわたしもちゃんとするから」
悠美の言ってることは相変わらず諒介には意味不明だった。
しかしそんなことも悠美を愛してる諒介にとっては愛すべき点のひとつにしかならなかった。

「おい諒介、お前悠美先輩と結婚するんだって?」
「ああ」
「大丈夫なのか?お前なんか悠美先輩の尻に敷かれるだけじゃないのか?」
「大丈夫だよ。悠美先輩って本当は優しいんだぜ」
「そんなこと言ったって悠美先輩の仕事振りを考えたら絶対に気が強いし、大変だと思うぜ」
「でも会社も結婚式の前日で辞めて専業主婦になるんだよ」
「らしいな。そこが信じられないんだよな。逆にお前が専業主婦なら分かるんだけどな」
「お前も悠美先輩みたいなことを言うんだな。悠美先輩も僕が先輩のお嫁さんになるって言うんだ」
「ある意味当たってるかもな。お前は小宮のほうが絶対にお似合いだと思うんだけど」
「彼女のことは言わないでくれよ。僕も悪かったって思ってるんだから」

結婚式の前日、悠美は職場の皆に惜しまれて会社を辞めた。
その晩は諒介も早く仕事を切り上げて悠美のところに行く予定だったが、どうしても抜け出すことができず、結局徹夜明けで結婚式の朝を迎える羽目になった。

結婚式当日は二人を祝福するかのような快晴の青空だった。
諒介が新郎控え室で座っているとウエディングドレス姿の悠美がやってきた。
悠美のウエディングドレス姿はとても綺麗だった。
「諒介くん、昨夜はどうしたの?ずっと待ってたのに」
「すみません、どうしても抜けられなくって」
「わたしがお嫁さんになっちゃったじゃない。わたしも女だからウエディングドレスくらいは着てみたいと思ってたんだけど」
「言ってることがよく分かんないですけど、悠美先輩のウエディングドレス姿、すっごく綺麗ですよ」
「ふふふ、ありがとう。諒介くんも決まってるわよ」
諒介と悠美は無事に結婚した。

結婚初夜、悠美が言った。
「明日からすぐに仕事ね」
「仕方ないですよ、今は休みを取れないタイミングですから。今のプロジェクトはあと少しで終わりますから、新婚旅行はそれからです。すみません」
「すぐに旅行に行けないのは残念だけど、休めるときに思い切って休んじゃいましょうね」
「そう言ってもらうと助かります」
「とにかく今日はしっかり可愛がってあげるわね」

二人は全裸で抱き合った。
諒介は前回のように緊張で固くならないということはなかった。
生まれて最高の固さになっていたくらいだった。
諒介は悠美の乳房に手を当てた。
諒介の片手だけで隠れてしまうくらい可愛い乳房だった。
諒介は悠美の乳房を優しく撫でた。
「…ぁ……ん……」
悠美の乳房は柔らかく形がよかった。
諒介は乳首を中心にして舌を這わせた。
悠美の喘ぎ声が聞こえる。
諒介は頭を悠美の下半身に移動させようとした。
すると悠美に止められた。
「早く諒介くんとひとつになりたい」
悠美のそんな言葉に諒介は準備しておいたコンドームを取り出した。
「コンドームはしないで。その代わり…」
悠美は初めて二人が結ばれたときのように小さな小瓶を取り出した。
「またおまじないしていい?」
悠美は小瓶の液体を諒介のペニスに塗った。
そして自分の股間にも塗った。
悠美は仰向けに寝て大きく股を開いた。
「諒介くん、来て」
諒介は悠美の股の間に入り入れるべきターゲットを探した。
しかし分からなかった。
悠美は諒介のペニスに手を添え自分の膣口にあてた。
「ここよ」
諒介はゆっくりと挿入した。
「…んん……」
悠美の顔が苦痛にゆがんでいるように見えた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「あ…うん…大丈夫……諒介くんのって大きいのね?」
「そんなことないですよ。平均より小さいくらいだと思いますけど」
「…そうなの?こんなに痛いなんて…思わなかったわ…」
「…もしかして先輩も初めてなんですか?」
「ははは…ばれちゃった……そういうことだから…優しくしてね」
「もちろんです」
諒介はゆっくり小さく動いた。
それでも悠美の痛みはおさまらないようだった。
諒介は悠美の反応をうかがいながら腰を動かした。
徐々に悠美の顔が苦痛ではない表情に変わってきた。
(先輩が感じてる)
そう感じた諒介は同じテンポを保ちつつ少しずつ振幅の幅を広くした。
「……あぁぁぁぁぁ…………」
部屋中に悠美の喘ぎ声が響いた。
「…諒介くん……何これ……すごい………ぁぁぁぁぁ………」
諒介のペニスを締め付ける、強く強く。
諒介は悠美の腰に打ちつけるように腰を動かした。
「…ああああああああああ……」
悠美が絶叫した。
諒介は悠美の中に自分の熱いモノを放った。
二人は息を切らせながらもつながったままだった。
諒介はゆっくり悠美の中から出した。
「ぁんっ…」
出したときの感触に悠美の甘い吐息が漏れた。
「諒介くん、最高だったわ」
悠美が諒介の頬にキスした。
「それじゃ諒介くん、明日から専業主婦としてよろしくね」
(またこんなこと言ってる。相変わらずだな、悠美先輩は)
悠美が初めての体験でちょっと興奮しておかしくなってるのかなくらいにしか諒介は思わなかった。
「はいはい、了解しました。悠美先輩が帰ってくるときには暖かい夕食を用意しておきますから」
「ちゃんと自分の立場を理解してるのね、感心感心」
半分眠ったような状態で寝言のように悠美が言った。
諒介は悠美の手を握って眠りについた。


翌日の朝、目が覚めると隣に悠美の姿はなかった。
(トイレに行ってるのかな?)
諒介は寝ぼけ眼でキッチンに行った。
そこには一枚の紙が置かれていた。

おはよう。
あまりにも気持ちよさそうに眠っているんで
会社に行ってきます。
できるだけ早く帰ってくるね

(会社って悠美先輩って寿退社したはずなのに…)
このときはまだ自分の身に何が起こっているのか諒介は知らなかった。

ふとテレビの上に置かれている時計に目が行った。
(わあ、もう8時じゃん。完全に遅刻だ)
諒介は顔を洗おうと洗面所に行った。
そこで諒介はかたまった。
鏡に映った顔。
それは悠美だった。
(えっ、何、どうなってるの?)
胸に手をあててみると確かに乳房があった。
股間にあるはずのものも存在しなかった。
諒介は悠美になっているのは間違いなかった。
ということは悠美は諒介の身体に入っているんだろうか?
諒介は確認すべく悠美に電話しようとした。
しかし家にあるのは悠美の携帯だけで、自分のものは見当たらない。
おそらく自分の携帯を悠美が持って行ったのだろう。
そう思って悠美の携帯で自分の携帯に電話してみた。
「もしもし」
『もしもし、どうしたんだ、悠美』
電話の向こうからは男性の声が聞こえてきた。
あまり聞きなれない声。
だがそれは録音して聞いた自分自身の声と同じだった。
「どうしたんじゃないですよ、悠美先輩ですよね?」
『ははは、もう気がついたんだ。そりゃ自分の身体に起こってることだもんね』
「何がどうなってるんですか?」
『帰ったらゆっくり説明してあげるから美味しい晩御飯よろしくね』
「あっ…悠美先輩」
諒介に何も言わせず、電話は切れた。
もう一度電話をしようと思ったが、あきらめた。
悠美のことだ。
何度も同じことを言わせると怒るに決まっている。
とりあえず悠美の帰りを待つことに決めた。

そう決めると今の自分の身体のことが気になって仕方がなかった。
諒介は寝室に戻りカーテンを閉めっているのを確認した。
そしてパジャマを脱ぎショーツ一枚になった。
(僕は今、悠美先輩なんだ)
小さいけれど形のいい乳房。
諒介はそこにゆっくりと手をあてた。
柔らかい。
諒介はショーツの中に手を入れた。
小さな突起物に指が触れた。
「ぁん…」
クリトリスだった。
(あ…気持ち…いい……)
諒介は立っていることができず、まだ敷いたままの布団に倒れこんだ。
諒介は右手で股間を、左手で乳房を揉んでいた。
(何やってんだ、僕は?)
そう思わないでもないが股間で動かしている指を止めることはできなかった。
諒介は自分の身体のオマンコに指を入れた。
(女の人ってすごい……)
諒介は指を動かした。
自分の指を強く締め付けてくる。
やがて身体が痙攣するように感じた。
「ああああああああ……」
諒介は大きな声を出して、身体が無意識のうちに仰け反るような体勢になった。
頭が真っ白になり、その後も快感の中に浸っていた。
やがてゆっくりと快感の波が去っていったかと思うと自己嫌悪に陥った。
悠美の身体になってしまって少しパニックになってしまったとは言え、悠美の身体でオナニーしてしまった自分がすごく惨めに思えてきた。
しかしそんな自己嫌悪もついさっき感じた快感には勝てなかった。
諒介はその後も食事も取らずにひたすら悠美の身体の快感をむさぼり続けた。

「ただいま」
諒介の姿になった悠美が帰ってきた。
何回ものオナニーで疲れ果てていた諒介は依然パジャマの姿のまま布団で横になっていた。
諒介は諒介の姿になった悠美を認めると急に正気になったように悠美に詰め寄った。
「いったいこれはどうなってるんですか?」
「どうなってるって、諒介くん、わたしと約束したでしょ?わたしのお嫁さんになるって」
「それは確かに言いましたけど…」
「だからこういうことなの。諒介くんはわたしになって、わたしが諒介くんになるの。わたしの予定では入れ替わるのは結婚式の前の日だったんだけどね。でも結果的には一日遅れだけどこうして入れ替われて、諒介くんはわたしのお嫁さんになったってわけ」
「どうしてこんなことができるんですか?こんな非科学的なことができるはずがないでしょ?」
「理屈なんてわたしも分かんないわよ。あのおまじないのおかげよ」
「おまじない?あれのせいなんですか?」
「そう。あれをつけてセックスをしたら入れ替わるって書いてあったの。試しにキスのときにもやってみたけど、何の効果もなかったけどね」
「とにかく元に戻してください」
「もう無理よ。あれは二人とも純潔でないとダメだもの。二人とも経験しちゃったし」
「悠美先輩が処女って本当だったんですか?」
「そうよ。諒介くんみたいな男性になりたくってずっと大事にとってたんだから。それにわたしは言ったはずよ、諒介くんが専業主婦だって」
「そりゃまあそう言ってましたけど、まさかこんなことになるなんて思ってなかったし」
「だったらダメ元で今晩あのおまじないをつけてやってみようか?」
「はい、それじゃ早速お願いします」
「分かったわ。ところでお腹が空いてどうしようもないの。晩ごはんは?」
「そんな余裕なんかなかったです」
「それにしては相当わたしの身体を楽しんだようじゃない。この部屋、すごく厭らしい匂いが充満してるわよ。こんなに匂うってことはかなりエッチしてたんだよね?」
諒介の姿になった悠美はニヤニヤ笑っていた。
「そ…そんなこと…」
「そんなことないの?」
「そんなこと…あるけど……」
「やっぱりあるんだ」
悠美は厭らしい笑いを浮かべた。
「とにかく腹が減っちゃ戦はできないって言うでしょ?外に食べに行きましょうよ」
そう言われて諒介はこの日全く食事していないことを思い出した。
「そうですね。とにかく何か食べましょうか」
「それじゃパジャマを着替えて」
「そんなこと言われても何を着たらいいか分かんないし」
「もう仕方がないわね。自分で何もできない専業主婦なんて何の意味もないじゃない」
悠美がタンスから適当に服を出し、諒介は悠美の用意した服を着た。
初めて着る女性の服。
見せパンにブラジャー。
ローライズのジーンズ。
スパンコールのついた濃いピンクのTシャツ。
諒介は服を着た自分の姿を鏡に映した。
スタイルのいい悠美はそんな格好でも最高に格好良かった。

悠美がヒールのあるミュールを準備した。
もちろんそれは諒介のためだ。
「それじゃ行きましょうか」
「えっ、こんなヒール履けないですよ」
「グズグズ言わないでさっさと行きましょう」
諒介は渋々そのミュールを履いた。
しかし、ヒールが高いためうまく歩くことができなかった。
そのため必然的に悠美の腕にすがって歩くことになった。
その姿は仲のいい男女にしか見えなかった。

二人は近くのファミレスに入った。
「ハンバーグセットとレディスセット」
諒介に何も聞かず悠美は注文した。
「僕もハンバーグがよかったな」
「こんなところでは誰が聞いてるか分かんないんだから、僕なんていうなよ。悠美は自分のことを"わたし"って言うんだぞ」
「わ…わたしもハンバーグがよかった…わ……」
「そうそう、その調子。悠美のお腹にはハンバーグセットは入らないさ。レディスセットで十分だと思うけどな」
やがて諒介の前に料理が並べられた。
小さなボールに入ったサラダ。
カップに入ったオニオンスープ。
小さなグラタンとパン2つ。
(こんなのでお腹がいっぱいになるわけないよ)
諒介はそう思っていたのだが、パンひとつを残し満腹になった。
一方の悠美は「ダイエットを気にせずに食べれるなんて本当に美味しいな」と言いながら豪快に食べていた。
悠美は諒介が残したパンを食べてもまだ食べ足りないようだった。
「まだ腹八分目だけど今日は帰ろうか。まだ帰ってやらないといけないことがあるからな」
悠美は意味深な笑みを浮かべた。

「それじゃ早速やってみる?」
部屋に戻るとすぐに悠美は諒介を抱きしめた。
「えっ、まだ心の準備が…」
「何言ってるの?ずっとそんなことばっかり考えてたくせに」
悠美は諒介のTシャツの中に手を入れ、ブラジャーをずらして乳房を揉んだ。
「…あんっ…」
「あらっ、諒介くんって可愛い声出すのね?すっかりわたしの身体と同化してるみたい」
「…そんなこと…ないです…あっ……」
「無理しないでいいのよ、気持ち良ければ素直に声を出していいんだから」
悠美は指で乳首を押さえつけるようにしながら乳房全体を揉んだ。
諒介は一人では立っていられずに悠美に身体を預けるようにして何とか立っていた。
「布団のとこに行こうか?」
悠美の言葉に諒介はうなずいた。

相変わらず敷いたままの布団までくると諒介は倒れ込むように横になった。
そして物欲しそうな顔で悠美を見上げた。
「わたしってこんなにいやらしい顔をするなんて知らなかったわ。それとも諒介くんがエッチなせいかしら?」
悠美は言葉で諒介を苛めた。
諒介はなぜか言葉で苛められるのが心地よかった。
(もしかしたら僕ってMなのかな?)
そんなことを考えながら、胸に触れている悠美の手が生み出す快感に身を任せていた。

悠美が諒介の服を脱がせようとした。
諒介は脱がせやすくなるように腕を動かした。
ジーパンを脱がせようとしたときは腰を浮かせた。
ブラジャーのストラップが肩にかかり、ショーツは右脚にひっかかっている状態になった。
悠美が脚の間に身体を入れ、ゆっくりとペニスを挿入してきた。
(す…ごい…。指より…ずっと…気持ちいい……)
諒介は悠美に突かれている間、ずっと声を出していた。
しかしそんな自分に全く気づいていなかった。
諒介は悠美の動きにただただ翻弄されていた。
「あああ…諒介くん……何か出そう……」
「…先輩……来て…来てください……」
悠美が激しく腰を激しく打ち付けたかと思うと、諒介の中に温かいものが放たれた。
諒介は身体の中でそれを感じた。
その感じは諒介に喜びと激しい快感を与えた。
諒介の意識は飛んだ。

気がつくと隣で諒介の姿をした悠美が横になって、こちらを見ていた。
「大丈夫?諒介くん。わたしの身体でいっちゃったみたいだけど」
「…はい、すごかったです…」
諒介は頭がボゥーッとして何も考えられない状態だった。
時間が経つにつれ少しずつ頭が働くようになった。
「あっ…先輩…」
「どうしたの?」
「おまじない…してなかったですよね?」
「ははは、気がついた?」
「気がついた?って先輩は分かってたんですか?そんなのずるいですよ」
「だって諒介くんがすごく感じてるみたいだったから、流れを止めたら悪いかなって思って」
「もう1回やりましょう」
「う〜ん、もう疲れた」
「そんなこと言ってないで、約束しましたよね?おまじないをつけてやるって」
「だったら諒介くんがやってよ」
悠美は鞄から小さな小瓶を取り出して諒介に渡した。
「はい、これをお互いの性器に塗ってセックスすればいいだけだから」
悠美は仰向けに寝転んだ。
諒介は渡された小瓶から手のひらに液体を取った。
少し粘度のある液体だった。
諒介はその液体を悠美のペニスに塗った。
塗っているうちに徐々に悠美のペニスは硬度を増してきた。
目の前で大きくなっていくペニスはとても太く大きく見えた。
(こんなのが入るんだ)
諒介の目は悠美のペニスに釘付けになった。
ふと気がつくとそんな諒介をニヤニヤと見ていた。
「そんなに見つめてどうしたいの?フェラしてくれてもいいのよ」
「い…いえ……別に……」
諒介は自ら進んでこんなものを自分の身体に迎え入れることが恐くなったのだ。
(恐くない…恐くない…)
心の中で呪文のようにつぶやいていた。

諒介は小瓶の液体を手に取り、自分の股間に塗りつけた。
「それじゃいきますよ」
諒介は意を決して悠美のペニスを握り、自分の膣口にあてた。
「…あっ……」
さっきのセックスの余韻が残っている身体にはそれだけでもいきそうになった。
諒介は目を閉じてゆっくりと腰をおろした。
ズブズブと大きなペニスを銜え込んでいく。
その感覚が気持ち良かった。

ペニスを全て銜え込んだところで諒介は動きを止めた。
少しでも動くと感じてしまっておかしくなりそうだった。
「どうしたの?早く動いてよ。男は動かないと感じないことは分かってるんでしょ?」
しかし諒介は動かなかった。
(あんなに太くて大きいものが入ってる)
そういう感慨に浸っていたのだ。
少しすると冷静になってきた。
そこで諒介は意識的に膣を締めてみた。
「…ん…すごい……締め付けてくる……これってわざと締めてるの?」
「はい」
「…あ……諒介くん…ってすごい…わたしの身体をそこまでコントロールできてるなんて……」
諒介は自分の身体の下で感じている悠美の姿を見ながらペニスを何度も締め付けた。
「あああ…もう我慢できないっ」
悠美は諒介の腰を持ち、諒介の腰を上下させた。
そして諒介の腰が下に落ちてくるタイミングで自分の腰を打ち上げた。
「先輩…そんな……すごすぎる……」
悠美のペニスが諒介の一番奥に何度も当たるのが分かった。
その度に身体がどこかに行ってしまいそうな感じに襲われた。
あまりの快感に身体と心がバラバラになりそうだった。
諒介は両手を悠美の身体の脇について何とか上体を保っていた。
「あああああああ……先輩……」
諒介は叫んでいた。
「……すごい……」
「諒介くん…出すわよ……」
悠美の声がしたかと思うと諒介の中に暖かいものが放たれた。
「あああああああ」
諒介は大きな声で叫んだ。
二人はそのまま眠ってしまった。

翌朝目覚めても諒介は悠美のままだった。
「ねっ、これで分かったでしょ?もう諒介くんはわたしでいるしかないのよ」
諒介は黙っていた。
一概に悠美の姿がいやというわけではなかった。
むしろセックスに関して言えば女性として突かれているほうが諒介の性格に合っているような気がした。
新婚初夜の男としてのセックスよりも昨夜の悠美としてのセックスのほうが圧倒的に気持ちよかったのだ。
それでも何の同意もなく入れ替えさせられたことに納得できないのだ。
「そんな怒ったような顔してないで起きて朝食を食べましょう」
悠美の笑顔を見てると、元の自分の顔とは言え、何となく怒ってること自体が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「うん、起きようか」
諒介は気を取り直して起き上がろうとした。
しかし股間が何となくかゆい。
昨夜の行為のまま眠ってしまい、精液が乾いてパリパリになっていたのだ。
「僕、シャワー浴びてくる」
諒介は浴室に入った。
シャワーを浴びながら浴室の鏡で今の自分の姿をじっくり見た。
綺麗な身体をしている。
こんなに綺麗な身体が自分のものだということが嬉しくなってきた。
(くよくよ悩んだって仕方ないし、仲川悠美として頑張っていこう)
そんな気持ちになれた。

悠美を会社に送ったあと諒介は洗濯や掃除をした。
悠美が帰ってくるタイミングを考えて夕食の支度もした。
それほど長くはないが一人暮らししていたので、何とか数種類くらいのレパートリーはある。
何日かに一度は買い物に出た。
できるだけ必要最小限の物を買ってさっさと帰るようにしていた。
「外に出るときはお化粧くらいしていってね」
と悠美に言われていたので、できるだけ外に出て行きたくなかったのだ。
それに化粧と言われても、化粧なんてどうすればいいのかも分からない。
諒介は仕方なく口紅だけをつけて出かけていたのだが、口紅の脂っぽさがイヤで帰るとすぐに洗い落としていたのだ。

夜は毎晩セックスをした。
諒介は悠美に抱かれるのが大好きだった。

悠美は会社でずっと諒介として振る舞っているためか二人でいるときにも男っぽい仕草と言葉遣いになった。
そして諒介のことを「悠美」と呼ぶようになっていた。

一方の諒介は最低限買い物に出るだけでほとんど家から出ないため、なかなか女性らしさが身につかなかった。
いつもジーパンで過ごしているし、胸もそれほど大きくないので、鏡を見ない限り、それほどの差はないのだ。
諒介は悠美のことを元の関係を引きずって "先輩" と呼んだ。


結婚して初めての休みの日、諒介が起きると見知らぬ女性がドレッサーの前に座っていた。
諒介が寝惚けた状態で見ているとその女性が振り返った。
「おはよう、やっと起きたのね?」
悠美だった。
諒介の姿になった悠美がなぜか女装していたのだ。
「先輩、何でそんな格好してるんですか?」
「だって男の人の服ってつまんないじゃない。仕事だと男のほうが便利だけど、プライベートは女の子のほうが楽しいじゃない?だから諒介くんみたいな可愛い男の子と入れ替わりたかったのよ。どう?可愛いでしょ?」
以前の悠美のままの口調だった。
その姿にその口調は何の違和感もなかった。
しかも確かに可愛かった。
女性としても上位に位置するくらいだった。
完璧に化粧をした諒介というのがこんなに可愛くなるなんて諒介自身知らなかった。
しかも声は少し低いが女の子の声に聞こえた。
「先輩、その声って…」
「うまいもんでしょ?結構練習したのよ、この声を出せるようにするためにね」
「でも、先輩…」
「この姿のときはわたしのことを諒子と呼んで。悠美も早く着替えて女同士で買い物に行きましょうよ」
諒介はいつものようにTシャツとジーパンを着た。
「悠美ももう少し女っぽい服を着ればいいのに…」
「でも先輩の服はこんなのばかりじゃないですか?…そう言えばそんな服うちにありましたっけ?」
悠美はモスグリーンのサマーセーターと白いフレアスカートという格好をしていた。
しかも髪が肩より長くなっている。
「へへへ、ばれた?買っちゃったの」
悠美は立ち上がりスカートを誇張するように一回転した。
諒介として男らしく振る舞っていても女装すると自然と元の女性としての仕草が出るので本当の女性のように見えた。
「でね」
悠美はもったいをつけるように間を置いた。
「じゃ〜ん」
諒介の前に差し出したもの、それは同じデザインの色違いのサマーセーターとスカートだった。

「悠美の分も一緒に買っちゃった」
「買っちゃったって言われても僕はスカートなんて履きませんからね」
「そんなこと言わないでお揃いの服で出かけましょうよ」
女装して綺麗になった悠美に言われると、内面が男の諒介としては断ることはできなかった。
「仕方ないですね、今日だけですよ」
渋々の体を装い諒介は悠美が差し出した服を着た。
レモンイエローのサマーセーターに、薄いピンクのフレアスカート。
スカートはとても頼りなげだったが、鏡で見るとそれはとても諒介に似合っていた。
諒介は少しの間そんな自分の姿に見とれてしまった。

「早く出掛けましょうよ」
悠美に促されて我に返った諒介はドレッサーの前に座って口紅を引こうとした。
「せっかく二人で出掛けるんだからもっとちゃんとお化粧してよ」
「だって僕、口紅しかつけたことがないから」
諒介は悠美に言われて買い物のときにだけ口紅をつけていたが、その他はスッピンのままだった。
「そう言えばそうだったわね。もう悠美になって5日も経つんだし、お肌のお手入れとかお化粧を覚えてもらわなくちゃね。とにかく今日はわたしがしてあげるから座って」
諒介は悠美に言われるままドレッサーの前に座った。
「はい、それじゃこっち向いて」
諒介が悠美のほうを向くと、いろいろなものを塗りたくられた。
「はい、出来上がり」
諒介は鏡を見た。
そこには会社で見慣れた美しい悠美の顔があった。
「今晩からちゃんとお肌の手入れとお化粧の特訓するからちゃんと覚えてね。とにかく早く行こう」
悠美は諒介の手をひいて玄関に行った。
「靴も買っちゃった」
玄関に置いてある靴を持って悠美は嬉しそうに言った。
「諒介くんはやっぱり男だからなかなか合うサイズがなかったんだ。でも、ミュールだったら少しくらいサイズが小さくても履けるからね」
そんなことを言ってヒールの高いミュールを履いた。
諒介がヒールを履けば悠美と同じような高さだったのに今日は身長差がそのまま現れて諒介のほうが10センチくらい高かった。
「それじゃ行きましょうか」
悠美が扉に手をかけた。
すぐにはドアを開けないで、その前に悠美が諒介の顔を見た。
「悠美、約束して。外ではぜったい僕とか言わないでね。わたしは会社で切り替えるのは慣れてるけど、悠美は慣れてないから気をつけて。それからわたしのことは諒子と呼ぶこと。いいわね?」
諒介はうなずくだけだった。
「絶対よ」
悠美はそう念を押して、二人は外に出た。

初めてのスカート外出は思いのほか緊張した。
膝上5センチ程度だからそう簡単に下着は見えないと思うのだが、下着に直接外気が触れるのは妙な緊張感があった。
しかしそれも最初のうちだけだった。
普通に振舞うことができるようになるまで大した時間は必要ではなかった。
「ねえねえ悠美にこれ、似合うんじゃない?」
「諒子にはこっちのほうがいいわよ」
二人は本当の女友達のように仲良く買い物した。

一日中遊びまわり夕食もすませて家に戻ってきた。
「どう、悠美、楽しかった?」
「うん、とっても」
「悠美は日頃ずっと家にいるからたまには遊ばないとね」
「でも一日中ヒールの高い靴を履いてたから脚が張っちゃって」
「じゃあちょっとマッサージしてあげようか」
「うん」
諒介はうつ伏せになった。
悠美はふくらはぎのあたりを揉んでくれた。
「確かにちょっと硬くなってるわね」
悠美のマッサージは気持ちよかった。
少しうとうととしかけたときに手がスカートの中に入ってきたのを感じた。
「やだっ」
諒介が身体を反転させて上半身を起こした。
悠美の手が太腿の辺りをまさぐっていた。
「だってこの子が元気になってきたんだもん」
悠美が股間を指差した。
そこはスカートが不自然に盛り上がっていた。
「もう!今は諒子でしょ?」
「でも下半身だけ諒介に戻っちゃったんだもん、仕方ないじゃない」
悠美はそう良いながら諒介にキスをした。
間近で見ても女の子に見える悠美にキスをされることに少し戸惑いを感じた。
「あん、やだ、諒子ったら」
そう言いながらも悠美のキスに一生懸命応じた。
悠美の手が乳房に伸びてきた。
諒介は乳房を揉まれるのが好きだった。
身体の元の持ち主である悠美はそのことはよく分かっているのだろう。
執拗なくらい乳房を揉んだ。
スカートを履いたままショーツを脱がされた。
悠美もスカートを履いたままだった。
その状態で悠美のペニスが入ってきた。
二人とも女の子の服装をしていながら結合していることに二人とも異様な興奮状態になっていた。
昨日と同じようなセックスにも関わらず、昨日よりも数倍感じるような気がした。
次の日も昼間は女同士で外出し、夜はレズごっこで楽しんだ。

諒介は悠美の女装姿が好きだった。
外面こそ女性だが、内面はまだまだ男性としての感覚があるため、綺麗な悠美の女装はとても魅力的だった。
しかもその姿で抱き合うことは不道徳な行為であるかのようで、そんなところに興奮してしまうのだった。
週末になるのが諒介は楽しみだった。
しかし一方では悠美の女装趣味が変な噂にならないかを心配もしていた。

悠美のプロジェクトが一区切りした。
待ちに待った新婚旅行だ。
「ねえ、諒子になって旅行しましょうよ」
「ダメだよ。パスポートが男なのに女の格好してたら税関で無駄な時間を取るだろ」
「そっか、残念。だったら向こうに行ってから諒子になるってのはどう?」
「ビキニを着て、日焼けしてもいいんだったらそうするけど」
「うーん、ダメなの?つまんないな」
普通のカップルとして新婚旅行に行くことになった。
諒介のパスポートには『仲川悠美』と書かれていて、何度か海外旅行した記録がある。
しかし諒介にとっては初めての海外旅行だった。
自然とテンションが上がってくる。

最初は水着を着ることに躊躇っていたが、現地で派手なビキニを買って着た。
キャミソールやホットパンツやマイクロミニスカートも履くようになった。
あっという間に楽しい新婚旅行は終わった。

この新婚旅行を機に悠美の女装外出がおさまった。
「先輩、今日は諒子になって出かけないの?」
「なんか面倒になってきたんだよな」
諒介は悠美の女装がおさまったことにホッとしつつも、レズごっこができないのが不満だった。
さらにこの頃から毎日だったセックスが2日に1回、3日に1回になり、1週間に1回あるかないかのレベルまで落ちた。

諒介はある日起きると妙な胸やけに襲われた。
近くの内科医に行ったが、そこで産婦人科に行くよう言われた。
やはり諒介は妊娠していた。
「先輩、今日病院に行ってきたの」
「何だ、どこか調子が悪いのか?」
「違うの、わたし…妊娠したんだって」
「そうか」
「先輩は嬉しくないの?」
「そんなことないよ。何か急でちょっと戸惑っちゃって」

諒介の妊娠が分かってから、悠美とのセックスがほとんどなくなった。
最初は妊娠した諒介に気を使ってくれていると思ったが、どうも様子がおかしい。
悠美の周りに女性の気配を感じた諒介は悪いと思いながらも悠美の携帯を見てしまった。
そこには3人の女性との関係を表すメールが残っていた。
1〜2度の関係だと20人以上はいそうだ。

諒介は思い切って悠美に聞いた。
「先輩、これって」
諒介は携帯を差し出した。
「見たのか?」
「悪いと思ったんだけど…」
「見られたんなら仕方がない。別に言い訳をしようとは思わない。僕は浮気してる。男って浮気性だと思ってたけど、これって仕方がないことなんだ。自分が男になって初めて分かってきた」
「そんなのって…ひどいじゃない?」
「悠美だって少し前は男だったんだから分かるだろ?どうしようもないんだよ。しかも僕は女の子が何を考えているのかよく分かる。どう言えば喜んでくれるか、何をすれば楽しいのかが。そうすると自然と女の子が寄ってきてくれる。そうなると男なんてセックスのことしか考えられなくなる。ほとんどの確率で成功するんだぜ。自分でも悠美に悪いとは思うんだけど、どうしても自分でやめられないんだ」

それから諒介と悠美の関係は少しずつおかしくなり始めた。
家で二人でいてもほとんど会話らしい会話がない。
休みだといっても悠美は行き先を告げずに出掛ける。
おそらく他の女のところなのだろう。
やがて予想された通り完全な破局のときが訪れた。

帰ってきた悠美は見知らぬ女性を連れていた。
「彼女、派遣で来てくれている野中恵さん。俺、こいつと一緒に暮らすことにしたから」
諒介の目の前に仲の良い男女の姿があった。
諒介はある程度覚悟していたので特に大きなショックもなかった。
「とりあえず俺の荷物は持っていくから」
そう言って悠美は自分の荷物をまとめ始めた。
諒介は手伝うこともせずじっとその背中を見つめていた。
「じゃあな」
それだけを言い残し悠美は出て行った。
あとには臨月で大きなお腹を抱えた諒介だけが残った。

二人は法的にも正式に離婚した。
諒介は"伊東悠美"に戻った。
離婚の慰謝料100万円と子供が生まれたあとの養育費3万円という約束を取り交わして離婚したのだ。

離婚が成立してすぐに諒介は女の子を出産した。
名前を悠紀(ゆき)と名づけた。

悠紀が生まれてから諒介は初めての生理を経験した。
入れ替わってから生理も経験せずに妊娠が分かったため生理の経験がなかったのだ。
血が流れ出してきたときはさすがに焦った。
出産の後遺症かと思ったのだ。
しかしそれが生理だと分かると家にあったナプキンで処置した。
(出産をしてから初めての生理を迎えるなんて多分世界でオンリーワンよね)
そんな馬鹿なことを考えてひとりで笑っていた。

そんな小さな事件以外、諒介の生活は悠紀中心に回った。
諒介は母親として一生懸命悠紀の世話をした。
そのおかげもあって悠紀は病気らしい病気もせず無事に成長した。

悠紀が保育園に預けることができる7ヶ月目に入ると、諒介は生活費を稼ぐために元いた会社に派遣社員として働き出した。
パートで働きに出ることより自由は奪われるが、自分の経験が活かせお金もそれなりに手に入るからだ。
しかし不運なことに諒介の受け入れ先の部署の実質的な責任者はサブマネージャーになった悠美だった。
諒介の身体を手に入れ、男性になったことで、働きに見合った地位を手に入れたのだ。

1週間ほど経ったときに諒介はたまたま悠美と二人きりになることができた。
「悠美先輩、元気でしたか?」
諒介はわざと悠美のことを"悠美先輩"と呼んだ。
悠美は諒介を睨みつけた。
「何言ってるんだ?悠美は君だろ?」
「今はそうですね。ところでこの前お会いした女性は元気ですか?」
「この前って……ああ恵のことか。彼女とは別れた。相変わらず独身だ」
「先輩は男の身体を手に入れて、出世して、いい思いばっかりしてますよね?それに較べてわたしはどうですか?勝手に身体を取り替えられて子供を産まされて一人で育てていかないといけないなんて不公平だと思いませんか?」
「そんなことを言っても君はあの子の母親であり父親なんだぞ」
「どういうことですか?」
「君が一回だけ諒介として悠美とセックスしただろ?あの子はあのときの子だ」
「どうしてそんなことが分かるんですか?」
「不思議と分かるもんなんだよ、君も将来感じることがあるかもしれないな」
「そんなことより先輩、わたしの身体返してください」
「無理だって言っただろ。それにこんなところでそんな話ばかりしないでくれないかな。誰が聞いてるか分からないじゃないか」
「わたし、自分の身体に戻りたい」
「そんなこと言って子供は…悠紀はどうするんだ?」
「悠紀はわたしがちゃんと育てるわよ」
「だったら父親より母親のほうが必要だろ?今のままでいいじゃないか」
「そりゃそうだけど」
「とにかくもう無理なんだから諦めろよ」
悠美は怒って出て行った。
諒介も頭では分かっていた。
ただ聞いてもらいたかっただけなのだ。
それをあんな言い方するなんて。
諒介は悠美のそんな態度に腹が立った。

諒介は会社の仕事は無難にこなした。
技術面では全く心配いらなかった。
ただあまり仕事ができると思われると周りの女性から苛められる。
そういう例は諒介が諒介だったころから何度も耳にしていたのだ。
適当に小さなミスをしながら仕事をこなした。

諒介が働き出して1ヶ月近く経った日のことだった。
「悠美先輩、お話があるんですけど」
諒介が帰ろうとしているときに瑛子に呼び止められた。
「ごめんなさい。わたし、保育所に娘を迎えに行かないといけないので時間がないの」
「じゃ、私の車に乗ってください。その方が早いし」
諒介は瑛子の車で悠紀を迎えに行き、そのまま諒介の部屋に行った。
「ごめんなさいね、せっかく来ていただいたのに散らかっていて」
「いえ、私が急にお邪魔したのが悪いんですから」

瑛子はじっと諒介の顔を見つめた。
「悠美先輩、2週間ほど前、伊東くんと会議室で二人きりで話してましたよね?あたし聞いたんです……」
「聞いたって何を?」
「悠美先輩が伊東くんに『わたしの身体を返して』って言ってるのを」
「…そう、聞いちゃったんだ……」
「悠美先輩って諒ちゃんなんですか?」
「そんなことが本当に起こると思う?」
「普通考えるとそんな話信じられないんですけど、結婚してからの仲川くんって変なんです。あんなに誰にでも優しかったのに、仕事ができることを妙に誇示して、自分の意見に反対する人がいたら論理的にコテンパンにやっつけちゃうんです。私が好きだった仲川くんってあんな人じゃなかったのに」
諒介は黙って聞いていた。
「そんなことを思っていたら、お二人が聞いている話を聞いてしまって。悠美先輩が復帰されてから物腰がとても柔らかになったのは『結婚したせいかな』とか『お母さんになったからかな』とか言ってたんですけど、悠美先輩と仲川くんが入れ替わったのなら分かります。仲川くんが話しているのを聞きながら『悠美先輩だと確かにこういう言い方してたな』って思いますもん。悠美先輩がニコニコして人の話を聞いている姿を見て『仲川くんらしいな』とか」
「……」
「諒ちゃんですよね?」
自分のことを気にかけてくれていた瑛子に感謝した。
諒介は黙ってうなずいた。
「やっぱり…。でもどうして…」
「それは…分からないの…。悠美先輩はおまじないのせいって言ってたけど」
「おまじない?」
「何か不思議な液体をつけてエッチすると入れ替わるんだって。実際こうして入れ替わったんだけど」
「それじゃもう一度やればいいじゃないの?」
「それが…やってみたんだけどダメなの。二人とも初体験じゃないと効果がないんだって」
「それじゃ諒ちゃんはずっと悠美先輩のままなんですか?」
「うん、そう…」
「そんな…」
二人とも黙ってしまった。
「私、悠美先輩に文句言ってきます」
瑛子が急に立ち上がった。
「それはやめて」
「だってこんな話、許されるわけないじゃないですか。一言言ってやらないと気が収まりません」
「そんなことして騒ぎが大きくなってみんなに知られるとわたしが嫌な思いするのよ」
「それはそうだけど…」
「瑛子の気持ちは嬉しいけどどうしようもないの…」
そのとき悠紀がぐずり出した。
諒介はすぐに悠紀を抱き上げた。
「悠紀ちゃん、どうしたの?」
諒介は悠紀の口に指を持っていった。
すると悠紀が一生懸命指を吸った。
「そっか。悠紀ちゃんお腹が空いたのね?」
諒介は悠紀におっぱいを与えた。
そこで瑛子がじっと見ていることに気づいた。
「ごめんね、瑛子。こんな格好して」
「諒ちゃんってちゃんとお母さんしてるんだ。なんか安心した…」
「うん、悠紀がいてくれるから何とかなるような気がするの」
「そう…分かった。何かあったらいつでも連絡ちょうだいね」
瑛子はそう言い残して帰っていった。


それからさらに何日か経った。
諒介が家で悠紀と過ごしているとインターホンがなった。
扉を開けると瑛子と幸宏が立っていた。
「こんにちは、諒ちゃん。遊びに来たよ」
「えっ…手嶋…くんも?」
「そうよ」
瑛子と幸宏が部屋に入ってきた。
瑛子は悠紀を抱き上げた。
「悠紀ちゃん、お姉さんとお散歩行こうね」
そして諒介のほうを見て言った。
「諒ちゃん、悠紀ちゃんと外に行って来るね。二人でゆっくり話すといいわ」
部屋には諒介と幸宏が残された。

何の会話もなく時間だけが過ぎていった。
幸宏は決して諒介と目を合わそうとはしなかった。
何か言いたいのだろうけどなかなか言い出せない様子だ。
幸宏は何でもズバッと言う男なのに何か変だ。
諒介はどうすればいいのか戸惑っていた。
「手嶋くん、どうしたの?」
諒介は思い切って切り出した。
それでも幸宏は言い出せないようだった。
仕方がないので諒介は待つことにした。
10分以上沈黙が続いた。
ついに幸宏が口を開いた。
「…えっと…小宮に聞いたんだけど………諒介なのか?」
「……」
「信じられないことなんだけど、そう考えるといろんなことが確かにすっきりするんだよ。悠美先輩と別れてからのあいつは俺の知ってる諒介じゃないんだ。まさに人が変わったって感じで。この前こんなことを小宮と話してたら瑛子が二人は入れ替わってるって言い出して。まさかそんなことがあるわけないと思っても、それが本当だと思えるようになって。例えば今だって悠美先輩が何も言わずにじっと待ってくれるわけないんだよ。でも諒介なら、俺の気持ちを理解して黙って待ってくれるはずなんだ、今のように」
諒介は幸宏が自分を理解してくれているようで嬉しかった。
瑛子にも告白したこともあり、諒介はこれまでのことを話した。
「そうか。大変だったな、お前も。俺でよければ相談に乗るから遠慮なく言ってくれよ」
「ありがとう」
諒介の目から涙がこぼれた。
理解してくれる人間がいるのは嬉しいことだった。
「それじゃ今日のところは帰るな。また来ていいか?」
「ええ、いつでも来てね」
「こうして見るとお前はすっかり女になってるんだな」
「そうよ。しかもバツイチの母親なんだからね」
二人は笑った。
何だか心から笑ったのは久しぶりのような気がする。
諒介にとっては心を許せる友達が帰ってきてくれたようで嬉しかった。
瑛子が悠紀を連れて戻ってきたのは幸宏が帰って1時間近くが経ってからだった。
「あれっ、手嶋くんは?」
「もう帰ったわよ」
「ええ、もう?そしたら何も話さなかったの?」
「ううん、ちゃんと話したわよ。わたしが諒介だってこと」
「だったらどうしてもう帰っちゃったんだろう?もっといればいいのに」
「でもまた来るって言ってたから、また来るんじゃないかな?」
「そう?ならいいけど」

次の日から会社の休憩のときも二人で、あるいは瑛子を加えて三人で過ごすようになった。
また何かにつけて幸宏は諒介のところに遊びに来た。
幸宏と瑛子は会社での周りの目もあって諒介のことを"悠美さん"と呼ぶようになった。
会社では一応丁寧な言葉使いをしていたが、諒介の家では友達と接するような口調だった。

「たまにはわたしの手料理でも食べる?」
諒介は日頃の感謝をこめて幸宏に夕食を食べて帰るように誘った。
「悠美さん、料理できるの?」
「失礼ね。これでも一応一児の母親だもん、料理くらいできるわよ」
「ならご馳走になろうかな」
「じゃ、ハンバーグでいい?」
「ハンバーグは大好きなんだ。…って諒介は知ってることじゃん」
「それじゃ材料がないから買い物に行ってくるわね」
「俺も一緒に行くよ。荷物持ちくらいはできるから」
悠紀を抱いて、幸宏と買い物に出た。

「仲のいい家族だねえ」
振り返るとお婆さん二人が諒介たちを見て話しているところだった。
「お子さん、おいくつ?」
「1歳3ヶ月になります」
「そう。もうすぐ喋るようになって楽しくなるころね。お嬢ちゃんでしょ?」
「はい」
「お母さん、そっくりね。目許はパパに似たのかな?」
そんな言葉に幸宏が応じた。
「そうでしょう。僕はこいつが可愛くって仕方ないんですよ」
「パパは娘には甘いからねぇ」
「そうですよ。絶対恋人なんか許しませんから」
そんな調子で話を盛り上げていた。

「ご馳走さん、ああうまかった。悠美さんって料理うまいんだなあ」
「本当に美味しかった?」
「うん、美味かった。悠美さんと結婚したらこんな美味い料理を毎日食べられるんだよな」
「お世辞でもありがと」
「お世辞じゃないよ」
「はいはい」
諒介はテーブルを片付けながら適当に相づちを打っていた。
「ところで俺たち、夫婦に見えるのかな?」
「あのお婆さんたちに言われたこと?そうみたいね」
「なあ、本当に夫婦にならないか?」
「えっ?」
「結婚しよう。いや結婚してください」
「そんな…。先輩をからかうもんじゃないわよ」
「俺、マジだけど」
「そんなことを言っても…中身は諒介なのよ」
「外見は美人の悠美先輩で、性格は俺が一番信用してる諒介なんだろ?俺にとっちゃ最高の女性じゃないか」
「そんなこと言ったって子供だっているし、バツイチだし」
「そんなの俺にとっちゃ何の意味もないよ。俺は今のお前が好きなんだから」
幸宏は諒介を抱きしめた。
久しぶりの男性に抱きしめられた。
諒介は幸宏に男性を感じることでなぜか心が安らいだ。
そのことで自分が女であることを改めて思い知らされた。

諒介は幸宏の大きな手で顔を上にあげられ、幸宏の顔が近づいてきた。
諒介は慌てて目を閉じた。
幸宏のキスは悠美と違い、不器用で荒々しかった。
でもそんなキスが嬉しかった。
「諒介、好きだ」
幸宏は気持ちを込めたせいか諒介とそのまま呼んでしまった。
「諒介はやめて。何だかホモみたいじゃない。いつも通り悠美って呼んで」
「そうか…そうだよな。でもそう呼ぶと悠美先輩みたいでちょっと恐いかもな」
「…バカ……」
諒介はこんな状況で馬鹿なことを言う幸宏を少し恨んだ。
「ごめん。でも俺、本当に諒…じゃなくて悠美のことが好きなんだ」
「うん」
諒介は嬉しくて涙が流れた。
幸宏はその涙を舐め、そのまま耳に舌を這わせた。
「…ぁ……」
諒介はこんなに耳が感じるなんて知らなかった。
幸宏が耳たぶを甘噛みする。
諒介は立っていられなくなり、幸宏に完全に身体を預けた。
幸宏は諒介を寝かせ覆い被さってきた。
「悠美、いいか?」
諒介はそんなことを聞いてほしくなかった。
ただそのまま抱いてほしいのに…。
そういう考え方をすることが諒介が本当の女になった証なのだ。
それを当人は気づかないでいた。
諒介は黙って待った。

やがて幸宏の手がゆっくりとブラウスの上から乳房を触った。
「……ああ……」
幸宏の大きな手で乳房が揉まれた。
気持ちよくて声が出てしまう。
「…あ…ダメ……悠紀が起きちゃう……」
「大丈夫…悠紀ちゃんはぐっすり寝ているから」
幸宏の手がブラウスのボタンを外そうとするが、不器用でなかなかうまく外せなかった。
「手嶋くん…わたしが自分で脱ぐから…」
諒介はブラウスとスカートを脱ぎ、下着だけになった。

「下着くらいは手嶋くんが脱がせてね」
幸宏は諒介の手を握り引き寄せた。
ブラジャーが外された。
「悠美って意外と胸が小さいんだな」
「失礼ね。これでもBはあるんだから。それに形だっていいでしょ?」
「確かに綺麗な胸だな」
幸宏の手で諒介の乳房は綺麗に覆い尽くされた。
幸宏の手がゆっくりと動く。
気持ちいい♪
幸宏は乳房に触れながら諒介の上半身を舐めた。
そしてショーツの中に手を入れると、溝に指を入れゆっくりと動かした。
その指が時々クリトリスにあたる。
その度に諒介は身体をビクンとさせた。
ショーツの中は諒介の身体から出てきた粘液でべとべとになっていた。
幸宏によってショーツを脱がされた。
足先にひっかかったショーツを取ると、幸宏は足の指を舐めた。
「…あ…くすぐったい……」
幸宏は足の指一本一本を丁寧に舐め上げた。
そして脚にも舌を這わせた。
諒介の全身は文字通り幸宏によって唾液まみれになった。

幸宏が太腿の内側にも舌を這わせた。
諒介は恥ずかしい部分に近づくにつれ、脚を閉じようとした。
そしてついに太腿に手をあてたかと思うと思い切り脚を広げられた。
部屋の灯りは点いたままだった。
つまり諒介の女性の部分が幸宏にしっかりと見られているということだ。
「ぃやっ…ダメ…恥ずかしい……」
諒介は羞恥を感じて顔を手で隠した。
しかし同時にそうされていることに興奮していた。
幸宏のザラッとした舌が諒介の股間にあたった。
「ああああああ」
経験したことのない快感に悠紀が眠っていることも忘れて大きな声を出した。
幸宏はそんな諒介の反応も気にすることなく股間を舐めまわす。
時々ズズズズズッと吸い込むような音がする。
諒介の愛液を吸っているのだ。
恥ずかしい…、けど気持ちいい。
そして幸宏は舌先でクリトリスに刺激を与え続けた。
諒介の頭は快感で溶けてしまいそうだった。
諒介は何度も意識がなくなった。
気がつくと幸宏のペニスが入ってきていた。
幸宏が腰を動かしていた。
諒介もずっと声をあげていた。
幸宏の精液を受け止めたときに、これまでとは違った快感に包まれていた。
安心感に似たような気持ちだった。
わたしはこの人といれば幸せになれるという信念にも似た気持ちだった。
考えてみれば悠美は自分に黙って身体を入れ替えるということをしたわけで心から信用してたわけじゃなかった。
それでもセックスの快感はあったが、今のように気持ちまでひとつになったという実感を持てなかった。
今幸宏に抱かれ気持ちがひとつになったセックスの充実感を知った。
わたしはもうこの人を離したくない。
そんな気持ちだった。

諒介は幸宏の股間に手を伸ばした。
ついさっきまで硬くなって諒介の身体に入っていたものは今では空気の抜けた風船のようになっていた。
しかも二人の粘液がついてちょっとベトッとしている。
諒介は身体を起こし、幸宏のペニスを見ながら指でペニスをいじっていた。
幸宏は何も言わず、諒介にされるに任せていた。
諒介の手の刺激にもなかなか硬度が増さなかった。
「ねえ、もう一回しよっ」
「ダメだよ、俺って一晩に1回しかできないから」
「もしまたできるようになったら、してもいい?」
「いいけど多分無理だと思うよ」
諒介は指でペニスの先をこすった。
すると少しずつ大きくなってきた。
しかしなかなかさっきの硬さにならない。
諒介は思い切って幸宏のペニスを銜えた。
「う…んん…」
幸宏が気持ち良さそうな吐息を出した。
少し生臭くて全部を口に入れると喉の奥まで達し吐きそうになる。
諒介はそれを我慢して頭を上下させた。
「お…おい……もういいから…」
幸宏が少し慌ててる様子が面白くって、諒介は意地になって顔を動かした。
口の中に苦い駅が出てきた。
「あああ……出る……」
幸宏がそう言うと口の中に幸宏の精液の味が広がった。
予想していなかったことに諒介はむせて咳き込んだ。
咳とともに幸宏の精液が口から出てきた。
「ごめん、あんまり気持ち良くって止めることができなかった」
「ううん、いいの」
「悠美のフェラチオってすごくうまいんだもんな」
「そうなの?でもこんなことしたのって今日が初めてよ」
「だとしたらそういう才能があるんだ。生まれつきのエッチなんだな」
「そんなエッチって分かっても、本当に結婚してくれるの?」
「もちろんだ。エッチな悠美だから結婚したいんだ」
「ひっどーい」
「嘘だよ。俺は悠美と一緒にいたいんだ」
「わたしも手嶋くんと一緒にいたい」
「なあその"手嶋くん"はやめてくれよ」
「だって昔からそう呼んでいたし、今さら変えにくいんだもの。それじゃわたしに何て呼んで欲しいの?」
「何でもいいよ、呼びやすいように呼んでくれれば」
「そんなのズルイ。じゃあ今のまま"手嶋くん"って呼ぶわ」
「だからそれ以外の呼び方にして欲しいんだって」
「だから何て呼べばいいの?」
「"あなた"がいいな。何となく憧れてたし」
「職場でも"あなた"って呼んでいいの?」
「…それは困るな」
「それじゃね……わたしが仕事を辞めてもいいわよ。専業主婦になるわ」
「悠美はそれでいいのか?」
「うん、悠紀もいるし、ずっとあの娘といたいから」
それは諒介の本心だった。
仕事と家庭の両立は想像以上にきつかった。
何より悠紀と限られた時間しか一緒にいられないことが諒介にはつらかった。
許されるのなら専業主婦になって悠紀と多くの時間一緒に過ごしたかったのだ。


二人は次の日すぐに入籍した。
諒介は手嶋悠美になった。
それと同時に諒介は寿退社した。
「やっぱりこうなったわね」
瑛子が嬉しそうに言った。
「絶対こうなると思って、手嶋くんを連れて行ったんだ。だって男同士のときでさえ、私から見て妬けちゃうくらい仲が良かったんだもん。男と女になったんだから絶対うまくいくだろうって思ったんだ。女ひとりで子供を育てるなんて、そんなに甘いもんじゃないから、結婚したらいいかなって思って」
「そんなこと考えてくれてたんだ」
「そうよ。私が二人のキューピットなんだから感謝してほしいわ」
「ありがとう、瑛子」
「最初は悠美先輩にとられるし、今度は手嶋くんにとられるし。私って本当についてないなあ。今度は悠美がいい人を紹介してよ」
瑛子は茶目っ気たっぷりな顔で言った。
「瑛子…」
諒介の目には涙がたまっていた。
「泣かないでよ、悠美ったら…私まで泣いちゃうじゃない…」
二人は抱き合って泣いた。
そこに一人の男性が近づいた。
悠美だった。
「今日で辞めるんだって?」
「はい、お世話になりました」
諒介はペコリと頭を下げた。
「悠美のほうが先に幸せをつかんだようだな。僕も負けてられないな」
「はい、これもみんな"先輩"のおかげです」
諒介のそんな言葉に悠美はニヤッと笑った。
「とにかくお幸せに」
「はい、ありがとうございます」
悠美は握手をして、その場を去った。
「ねえ、もっと言ってやらなくていいの?」
瑛子が悠美の去ったほうを見ながら言った。
「いいのよ。だって今幸せなのはあの人のおかげですもの」
「はいはい、ご馳走様」
諒介と瑛子の笑い声が響いた。

それから一ヵ月後、諒介と幸宏は結婚式を挙げた。
諒介は一度は男として結婚したことが嘘のような気がした。
自分が男だったなんて今では考えられなくなっていた。
自分のウェディングドレス姿を鏡で見ていると、今の自分が本当の自分のような気さえする。
自分はこの日のために生きてきたんだと思えてくる。
そうすると涙腺が緩んできた。
ウェディングドレスだけ泣きそうになったくらいだ。
指輪交換をし、誓いの口づけをしたら、涙が止まらなかった。
「そんなに泣いたらお化粧が落ちちゃうよ」
瑛子のそんな言葉も諒介の涙を止めることはなかった。
諒介は女性として本当に幸せだと感じた。


「あなた、行ってらっしゃい」
いつものようにキスをして幸宏を送り出した。
「それじゃ悠紀ちゃん、お外に行こうか?」
「うん」
諒介は小さな悠紀の手を握り外に出た。
「悠紀ちゃん、走らないで。車に気をつけてね」
可愛い悠紀の駆け出す姿を見ながら諒介は自分のお腹に手をあてた。
すでにお腹には幸宏の子供を宿していた。
(こんなに幸せでいいのかしら?)
諒介は今の幸せを噛み締めた。


《完》

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