浮気の決着



水野紗耶は探偵。
個人で、細々と探偵事務所を開いている。
探偵業なんて素行調査や浮気調査がほとんどだ。
あとは捜し物・探し人。
これらでほぼ100%だ。
テレビの探偵物のように殺人事件の調査なんてあり得ないのが現実だ。
それでもときには面白い事件に出会うことがある。
紗耶が持っている特殊な能力を活かすことができる事件に。
紗耶には身体の一部あるいは全部を交換できる能力があった。
どうしてそんな能力があるのかって?
そんなことは誰にも分からない。
とにかく時にはそんな特殊能力を活かして依頼をこなしている。
今日もそんな紗耶に依頼がやってきた…。


『主人の浮気を調べてください。もし浮気をしてるのなら二度とできないように懲らしめてください』
そんな依頼が書かれた手紙が紗耶のもとに届いた。

紗耶は依頼をもらうのにメールは使わない。
深く考えもせず気楽に送ることができるため、それほど深刻でないものがやってくることが多いのだ。
そういう場合は往々にして調査費用の金額を聞いて断るケースが多い。
最初は依頼の数を稼ごうとメールアドレスを広告に載せていたが、今では住所と電話番号の2つだけを載せている。
電話で依頼があっても最終的には手紙をもらうようにしているのだ。

(浮気調査かぁ。また面白くないかもね)
紗耶はもう一度依頼文を読んだ。
そうすると、依頼文の最後のほうが気になった。
『懲らしめてください』
これは紗耶が持っている"能力"を使えるかもしれない。
紗耶は手紙の主である大崎芳佳にコンタクトを取った。

芳佳の家は少し都内から離れた閑静な住宅街にあった。
最寄の駅からですらタクシーで20分ほどかかるくらいかかる。
もし都内に勤めているとしたら片道2時間近くの通勤時間は必要だろう。
そんなところだった。

《ピンポーン》
紗耶は玄関のインターホンを押した。
「はぁ〜い」
出てきたのは上品そうな女性だった。
身長は160センチを少し超えている程度だろう。
年齢は30歳+α。
おそらくこれまで苦労らしい苦労は経験してこなかったのだろう。
「お手紙をいただきました…」
あとの言葉は濁した。
紗耶は玄関先では自分の職業は言わないことにしている。
近所の人に聞かれていて要らぬ噂が立つ可能性を作りたくなかったのだ。
他人の無責任な好奇心は捜査をすることの邪魔にもなる。
「あら…あなたが…?」
相手は少し予想が外れたようだ。
いつもそうだ。
紗耶が若い女性だからだ。
名前は明らかにしているため女性であることは分かっているはずだ。
しかし、大抵依頼者は勝手にベテランのおばさんを想像しているのだ。
弱冠27歳の紗耶を前にすると大抵小馬鹿にしたような顔をされる。
今回の依頼者は驚きこそすれ小馬鹿にした様子はない。
紗耶はそのことに少し安心した。
「とにかく中へお入りください」
紗耶は女性のあとにしたがった。

紗耶はリビングに通された。
リビングに置かれているものからは生活水準の高さがうかがわれた。
趣味のいいソファや50インチほどのテレビが置かれていた。
「どうぞおかけください。今お茶を入れますから」
「いえ、お構いなく」
通り一遍の会話を交わすと、目の前にお茶とお茶菓子が置かれた。
「ありがとうございます。それでは早速お話をお聞かせ願いますか」
「はい、実は手紙にも書きましたように主人の浮気調査をお願いしたいんです」
依頼主の話をまとめるとこうだ。

依頼主である大崎芳佳は短大を卒業して大崎電子工業に入った。
そこで社長の息子である秀一に見初められ、秀一と結婚し寿退社した。
結婚した当初、秀一は優しかった。
仕事も適度に切り上げ帰宅するのも早かった。
その頃は芳佳も幸せだった。
しかしそのうち少しずつ、帰宅する時間が遅くなった。
連絡もなく全く帰宅しないことすらあった。
そんなときは仕事で忙しかったと言い訳するのだが、芳佳には女の影を感じずにいられなかった。
それでも義理程度に夫婦生活はあったらしいが、結婚して10年間子宝には全く恵まれなかった。
そのため、秀一の両親からは孫も産めない嫁と嫌味を言われて、それが大きなストレスになっているとのことだった。

そんな背景があり、今回の調査ではっきりとした浮気の証拠を突きつけ離婚したいということらしい。
浮気に対する懲らしめは可能なら懲らしめたいという程度のものらしい。

「それではまず1週間ご主人の素行調査を行います。調査の前金として50万円いただきたいのですが」
「はい、ここに用意してあります」
紗耶の前に封筒が差し出された。
中身を確認し、紗耶は大崎家を後にした。

紗耶は早速大崎秀一を見張ることにした。
紗耶が秀一を見張った最初の夜から秀一の浮気ははっきりした。
会社の受付嬢とホテルに消えていったのだ。
それから2時間後仲睦まじく腕を組んで出てきた。
もちろん紗耶はその様子を写真に納めた。

結局秀一は紗耶の調査期間に3人の女性と関係した。
その全てを写真に撮った。

一週間後、紗耶は調査期間の秀一の行動記録と浮気現場の証拠写真を報告書にまとめて、芳佳に渡した。
「やっぱり主人は浮気してたんですね?」
芳佳は報告書は軽く目を通しただけでホテルに出入りする写真を見ていた。
「はい」
「この写真を主人に突きつけて離婚してもらいます」
「ご主人を懲らしめる件はもうよろしいですか?」
「主人を懲らしめてもどうせ浮気を繰り返すだけですから」
「私に考えがあるのですがやってもよろしいでしょうか?」
「どんな方法なんですか?」
「今言っても分かっていただけないと思いますが、確実に浮気しなくなると思われます」
芳佳はその言葉に興味を持ったようだ。
「そんな方法があるんですか。それでは主人を懲らしめてください。うまくいけば後金に加えて追加費用もお支払いします」
「それでは2〜3日待っていただけますか?そのときにその方法をお教えします」
紗耶は芳佳にそう約束した。


秀一の一日の仕事が終わった。
今日は女との約束はない。
そんな日は行きつけのバーに寄るのが常だった。
この店で一人静かに酒を飲むことになったのはいつの頃からだろう。
会社に入ってそれほど日が経ってないころからだっただろうか。
それとも結婚してからだっただろうか。
何が気に入ったのか自分でもよく分からない。
何となく落ち着くのだ。

常に父親から監視されているような環境から逃げ出したいのかもしれない。
面白味のない妻の顔を見なくていいからかもしれない。
とにかくこの場所で何も考えずにいるのが好きだった。

秀一が入ってしばらくすると若い女が入ってきた。
この店に若い女性が一人で来るのは非常に珍しい。
したがって店にいる誰もが自然と観察することになってしまった。
おそらく20代半ばだろう。
とても美人だ。
おそらく誰かと待ち合わせしてるのだろう。
店に入ってから時計ばかりを気にしている。
しかし誰も来る様子はない。
店に入って30分ほど経つとその女性が席を立った。
「待ち合わせだったんですか?」
秀一はその女性の前の行く手を阻むように立った。
「あなたは?」
女性は秀一のことを警戒するように見た。
「一杯だけつき合ってもらえませんか?」
「えっ…ええ、別にいいけど」
女性は座り直した。

女性は男との約束を反故にされたようだ。
秀一は女性を慰めるような言葉を並べた。
次第に女性は秀一に打ち解けてくれるように思えた。
女性がそろそろ帰らなきゃと席を立った。
秀一は女性と一緒に店を出た。
秀一が女性の肩をそっと抱くと、その女性は甘えるように身体を預けてきた。
(これはいけるぞ)
秀一は女性の肩を抱き、ホテル街に向かった。
女性は何も言わずに秀一について行った。

ホテルの部屋に入り、女性を抱きしめた。
「そんなに急がないで。まずシャワーを浴びさせて」
女性は悪戯っぽい笑顔を秀一に向けてシャワールームに入っていった。
シャワールームは半透明のガラスで覆われているだけなので、女の身体がシルエットで見えた。
(なかなかいい身体だ)
秀一は全裸になりベッドで女性を待った。
秀一の股間の物は大きくそそり立っていた。

女性が胸のところでバスタオルを止めてシャワールームから出てきた。
バスタオルに覆われているとは言え、胸の大きさは隠しようがなかった。
秀一は女性を抱きしめようとした。
すると女性が持っているスプレーが秀一の前に現れた。
「あんまり女をおもちゃにしちゃダメよ」
女にスプレーをかけられた。
その言葉を聞きながら秀一の意識は遠のいていった。

秀一が目を覚ましたときには女の姿はなかった。
「くっそぉ〜……やられたかぁ……」
秀一はお金を盗られたんだと思った。
すぐにスーツの内ポケットの財布を調べた。
財布は無事にポケットに入っており、中身にも異状はなかった。
「何だ?からかわれただけなのか?」
何となく気持ちの悪さを感じたが、目的がさっぱり分からない。
ふと時計を見るともうすぐ0時になるところだった。

「とりあえず帰るか」
秀一がベッドの傍に脱ぎ捨てたボクサーパンツを手に取った。
そのときに自分の股間の異常に気がついた。

「何がどうなってるんだ?」
秀一はパニックになった。
そりゃそうだ。
そこにあるはずのものがなくなっているのだ。
急に自分のペニスがなくなって平静のままいられる男がいるわけがない。
秀一は恐るおそる股間に手をやった。
「!?」
予想通り溝が形成されていた。
少し力を入れてその溝の中に指を入れた。
「痛いっ」
何かの突起物が手に触れたのだ。
その瞬間痛みを感じた。
それは秀一の考えているものなのだろう。
秀一は壁全体にある鏡の前に立った。
そして、そこに映っている身体を見た。
身体全体は男のままだ。
股間だけが変化していた。

床に座り両脚を大きく開いた。
股間にはいやらしいビラビラしたものが鏡に映っている。
明らかに女の性器だった。
「どうしてこんなことになってるんだ?」
秀一は両脚を開いたまま自分の女性器を見つめていた。
考えられるのはさっきの女に何かされたとしか思えない。
しかしこんなことが可能なのだろうか?
「とにかく帰ろう」
考えていても埒が明かないので秀一は気を取り直して帰ることにした。
パンツを履くときになってお尻の変化にも気がついた。
明らかにお尻が丸く大きくなっていたのだ。
女のお尻になっているのだろう。

秀一は何とかズボンを履き、服を着た。
服を着てしまうと下半身の異常は分からない。
秀一は家路を急いだ。


「ただいま」
秀一が声をかけても家の中から返事はなかった。
妻はすでに寝ているのかもしれない。
しかしリビングの灯りはついたままだった。
「ただいま」
秀一は静かにリビングの扉を開けた。
「えっ!」
秀一は自分の目を疑った。
リビングには妻とさっきの女性が座っていたのだ。
「あっ…あなた、お帰りなさい。こちら探偵の水野紗耶さんよ」
芳佳が紗耶を紹介したのだが、秀一にはそんな言葉は届いてないようだった。
「お……お前……俺の身体に何をしたんだ」
思わず秀一は叫んでいた。
そして紗耶の胸ぐらを掴んだ。
「私を殺すの?私を殺したらあなたは一生その身体のままよ」
秀一はその言葉に慌てて手を離した。

「何があったの?」
秀一の様子に驚いた芳佳は二人に聞いた。
「奥様が質問してるわ、答えてあげたら?答えにくいんだったら私が代わりに答えましょうか」
「うるさい。何でもない」
秀一は部屋から出て行こうとした。
「せっかくなんだから奥様に見せてあげましょうよ」
紗耶は秀一の顔に再びスプレーをかけた。


気がつくと秀一は両手両脚がガムテープで固定されていた。
しかも下半身はズボンを脱がされ、ボクサーパンツだけの状態にされていた。
「気がついた?それじゃ奥様に見てもらいましょうね」
紗耶がはさみを持ち秀一のパンツを切ろうとした。
「や…やめろ」
「暴れないで。暴れると身体を傷つけちゃうかもしれないでしょう?」
紗耶はパンツにはさみを入れた。
パンツを剥ぎ取られた秀一の下半身が露わになった。

奇妙な静けさが訪れた。
誰も何も喋らない。
秀一は恐るおそる芳佳のほうを見た。
すると芳佳は自分の下半身を驚いた顔で見ている。
「あなた…どうなってるの?」
芳佳が言葉を絞り出すように言った。
秀一の股間にはあるべきはずのペニスがなかった。
代わりに女性のような陰毛が見えるだけだった。
「知るか!この女のせいだ」
秀一は吐き捨てるように言った。
「あら?私が何かしたの?」
「お前じゃなかったら誰がこんなことできるんだよ?」
「私だったらできるって言うの?」
「それは……」
秀一は言葉に詰まった。
そもそもこんな訳の分からないことが起こるなんて想像すらできない。
しかし実際自分の身に起きているのだ。
「普通こんなこと起こるわけないものね。ちょっと面白いものを見せてあげるわ」
紗耶は自分のスカートを捲り上げた。
ショーツの前が盛り上がっている。
「ま……まさか……」
秀一は目を見張った。
「あなたが考えている通りよ、ほら」
紗耶がショーツを下ろした。
ペニスが現れた。
「これはあなたのだったものよ。あなたの股間のものは私のものだったの。私はなぜか身体の一部を交換することができるの」
「そんな馬鹿な…。とにかく今すぐ戻せ」
秀一は叫んだ。
「こうしておくとご主人の浮気の心配をしなくていいでしょ?」
紗耶は秀一の言葉を無視して芳佳に言った。
「そうですけど。主人のそれは探偵さんが持ってるんでしょうか?」
「何でしたら奥様に預かっていただきましょうか?」
「わたしに主人のものをつけることもできるの?」
芳佳は驚いた。
「できますよ、私の身体の部分なら何でも交換可能ですから」
「だったらすぐにお願い」
紗耶は芳佳の腰に両手をあて何かを強く念じた。
「はい、交換しました」
芳佳はスカートの上から股間に手をあてた。
そしてすぐにショーツを下げて現実にぶら下がっているものを見つめた。
「すごい、こんなことができるなんて」
芳佳はその一点を見つめて全く動かなかった。
「私の身体には奥様の身体の一部がついているので、ご主人の身体についた私の身体を返してもらいますね」
紗耶は秀一の腰に手をやり先ほどと同じように強く念じた。
「はい、これでご主人と奥様のものの交換が完了しました」
見た目は少しの変化だが交換は完了したようだ。
「これだと浮気はできないし、しばらくこのままでいましょう。あなたの浮気性が治ったと思ったら元に戻してもらうから」
芳佳はペニスをブラブラさせて秀一に近づきながら言った。
「もう二度と浮気はしない。だからすぐに戻してくれ」
秀一は縛られた状態で芳佳に懇願した。
「それはダメよ。あなたの言うことは当てにならないもの。本当はすぐにでも離婚してもらうつもりだったんだけど、もう少しこの状態を楽しむことにしましょう」
「そんな…」
秀一が消え入るような声でつぶやいた。
「それじゃ元に戻るときにご連絡いただくということで、奥様の依頼は完了したということでよろしいでしょうか」
二人のやりとりを聞いていた紗耶はそろそろ切り上げようと言葉をはさんだ。
「ええ、それでいいわ。ありがとう」
「それでは後日請求書をお送りしますので、よろしくお願いします」
「ええ、それじゃまた戻すときお願いね」
「はい、分かりました」
紗耶は芳佳の家を出て行った。



一ヶ月経っても二ヶ月経っても芳佳からの連絡はなかった。
さすがに最初のうちは紗耶も気にはなったが、依頼がない限りあえて自分から連絡することはしなかった。
そして他の仕事に忙殺されているうちに芳佳の依頼は記憶の片隅に追いやられてしまった。


芳佳からの依頼が完了して1年近くが経ったときだった。
街で男性から声をかけられた。
「こんにちは。以前はお世話になりました」
見ると背の低い優しい顔立ちの男だった。

うっすらと無精髭が生えている。
髪は耳にかかる程度で、軽くパーマがかかっているようだ。
何となく見覚えはあるのだが名前は思い出せなかった。
「あのぉ…どちら様でしたっけ?」
「やっぱり分かりませんよね?以前お会いしたときは女性でしたから。今は秀一と名乗ってます」
紗耶は1年前の依頼を思い出した。
「それじゃ芳佳さんですか?どうして男の格好なんて…」
「ははは、あれからいろいろありまして。立ち話もなんですからうちに来ませんか?」
紗耶はあの後、二人に何が起こったのか興味を持った。
紗耶は秀一と名乗る男性についていった。

連れて行かれたのは1年ほど前にも来た家だった。
やはりこの男性は芳佳に間違いないように思われた。
「ただいま、懐かしいお客さんをお連れしたぞ」
「は〜い、今行くわ」
顔を出したのは、1年前は秀一だった人だった。
とりあえず女性っぽい仕草で、女性らしく見える。
しかし、顔には少し男性っぽさが残っており、身長は男のころと変わっていない。
170センチ超ある。
骨太の印象は拭えず、何となく女子プロレスラーをイメージさせる。
それに較べて芳佳は160センチ弱しかなく、性別が入れ替わった今、まさに蚤の夫婦といったところだった。

さらに驚いたことに秀一のお腹が大きくなっていた。
これは明らかに赤ちゃんがいるお腹だ。
今日にでも産まれそうなくらい大きなお腹をしていた。
「あら?あなたは……」
秀一と思われる女性は紗耶の顔を見て言った。
その物腰も女性そのものだった。
「懐かしいだろう?探偵の水野紗耶さんだ」
「お久しぶりです」
1年前秀一だったその人は恥ずかしそうにお腹を押さえた。
「ご主人があのまま妊娠されたんですか?どうしてそんな状態になるまで…。お二人に何があったんですか?」
「実は…」
・・・・・
・・・


二人の性器を入れ替えられたその夜、とまどいながらも芳佳は好奇心を抑えきれなかった。
すぐにそれを確かめたかった。
「ねぇ、あなた。久しぶりに……いいでしょう?」
「何言ってんだ。今の状況を分かってるだろ?そんな気分になれないし、俺は何もできないんだから」
「あなたが無理でもわたしはできるわ」
芳佳は秀一を抱きしめた。
すぐに股間のものが大きくなった。

秀一はすぐに芳佳のペニスの変化を感じた。
そのことに気がつくと、自分の女性器が湿ってくるような気がした。
「お前、本当にやるのか?」
秀一も少なからず興味があったため、芳佳のその行為に対して全く抵抗する気はなかった。
というよりも興味津々で芳佳の行為を待った。

秀一は芳佳の手がボクサーパンツの中に入ってくるのを感じた。
芳佳の指が秀一の溝に這い、秀一の敏感なところを攻めた。
「あああああ……」
思わず秀一が野太い声で喘いだ。
「あなた、濡れてるわよ。感じてるのね」
確かに秀一自身も自分の女性器が湿り気を帯びていることを感じていた。
秀一は女性として感じていることが恥ずかしかった。
恥ずかしい以上にもっと快感を与えて欲しいと感じていた。

芳佳は秀一のパンツを取った。
芳佳は手のひらで秀一の股間を前後にこするように触った。
秀一は気持ちよくて少しずつ脚を広げた。
「あなたもそろそろ準備ができたようね」
芳佳は秀一の膣に身体を入れた。
芳佳のペニスは最高に硬くなっていた。
そしてペニスを挿入していった。

秀一はペニスが挿入されてきたことを感じていた。
(何だ、これ?)
秀一は強い違和感を感じざるをえなかった。
でも決して気持ちの悪いものではない。
むしろ何か心の中を満たされていくような充足感を感じていた。
「わたしの中って温かいのね……ぁ…」
芳佳が呻いた。
「どうした?」
「あなたのがわたしのを締めつけてくるのよ…あ…また…」
「俺は何もしてないぞ」
「あなたがしてるつもりなくってもそういうものなのよ。それじゃちょっと動いてみるわね」
芳佳が腰を動かした。
「あああああ」
秀一は突かれるたびに、子宮から身体全体に熱い物が広がっていくように感じた。
(女ってこんなふうに感じるんだ…気持ち良すぎる……)
芳佳の動きはとても優しくゆっくりだった。
秀一は何度か気を失うような快感に襲われた。
芳佳の長い長い抽送が続いた。
やがて秀一の中の芳佳のペニスが一気に爆発しそうになった。
「あああ……出そう……」
「い……いくぅ……」
秀一と芳佳が同時に叫んだ。
すると芳佳のペニスから大量の精子が秀一の中に放出された。
秀一は身体全体が痙攣して意識が真っ白になった。
それでも芳佳のペニスから全てを取り込もうと秀一の女性器はペニスを強く強く締め付けていた。
「はあああ…すごいのね…男の人の射精って」
芳佳のそんな言葉に秀一は何も話せなかった。
まだ快感の波にただよっている状態でとても話せる状態ではなかった。
(女のほうが……気持ち…いい……)
秀一はそう考えていた。

二人は新婚のころに戻ったころのように毎晩交わった。
秀一は女性として抱かれることにはまっていた。
仕事中に時々自分の性器を触っては芳佳のペニスを思い浮かべたりしていた。
正直なところ仕事どころではない毎日だった。


1週間ほど経った朝のことだった。
朝、目が覚めるとすると股間の辺りに冷たさを感じた。
(やべぇ、この年齢でおねしょしちゃったのかな?)
掛け布団をめくり上げた。
するとシーツが真っ赤になっているのが目に入った。
(どこか怪我でもしたんだろうか?)
生理の経験のない秀一にはその出血が生理によるものだとは思いつかなかった。
「芳佳、芳佳。ちょっと来てくれ」
秀一は芳佳を呼び寄せた。

「どこかから血が出たみたいなんだ」
芳佳は「なぁんだ」というような顔をしている。
「あなた、それって健康な女性はみんな経験することなのよ」
「健康な女性?」
「そうよ、分かんないの?生理よ、生理。生理が来るということはあなたは妊娠することができるってことね」
「俺が生理?妊娠することができる?まさかそんなことがあるわけないだろ?実際俺とお前の場合10年近くも避妊もしてなかったのに妊娠しなかったじゃないか。性器を入れ替えたって妊娠するわけないだろ?」
秀一にとっての初めての生理はそんなに軽いものではないように思えた。
妻がこんな生理のようなつらいものを月に1度なっていたのに、これまで自分は全く気がつかなかった。
それだけでも女性はすごいと思えた。
秀一も妻を見習い、できるだけ外見は平静を装い普通に仕事をこなすように努めた。

生理が終わると二人の夫婦生活は激しさを増した。
一晩に2度は当たり前だった。

一方芳佳も自分が男の立場で性行為を行うことに妙なフィット感を感じていた。
もうこのままの状態で秀一との夫婦関係を続けていてもいいと考えていた。

性器を入れ替えたままでいると、性器から生み出されホルモンのせいでそれぞれの身体にも影響が出てきた。

秀一は髭がほとんど生えなくなった。
もう何日も髭をそっていない。
それにもかかわらず、あごを触っても全くザラザラしない。
下着が胸に少し触れただけでも痛みを感じるようになった。
それほど異常に敏感になったかと思うと、少しずつ膨らんできた。
そして全身が性感帯になっていくような気がしていた。
芳佳の愛撫に声を抑えることはできなくなっていた。
秀一は女性としてのセックスの虜だった。

芳佳にももちろん身体の変化が起こっていた。
乳房が少しずつだが確実に萎んでいた。
しかも体毛も濃くなっているような気がする。
声もわずかだが低くなってきたようだ。

二人は身体の変化を不安に思いながらもそれよりもセックスによる快感を手放すのが惜しかった。
そのためそのままの状態で交わり、相手が元に戻ろうと言い出すまではこのままでいようと考えていた。
その結果、ズルズルと入れ替わったままの状態が続いてしまうことになった。

そんな状態のまま、性器が入れ替わってから二ヶ月ほどしたある日のことだった。
秀一が青い顔をして帰ってきた。
「どうしたの、気分でも悪いの?」
「ああ、駅前の焼き鳥屋の匂いでちょっと気分が悪くなっちゃって、戻したんだ」
「…あなた…まさか……」
「まさかって何だよ」
「ちょっと待って。一応用意してあるから」
芳佳は薬箱からひとつの箱を取り出した。

芳佳はその箱から何かを取り出した。
「ここにおしっこをかけてきて」
「何だよ、いったい」
「妊娠検査薬よ。もし妊娠してたら大変じゃない」
「に、妊娠っ!そんなはずないよ」
「妊娠してなかったらなかったで、はっきり分かったほうがいいでしょ。すぐにおしっこしてきて」
秀一は渋々トイレに行った。

結果は陽性だった。
「妊娠の可能性ありだって。お医者さんに行かなきゃ」
「俺が妊娠?そんなの嘘だよ……」
「でも本当に妊娠していたら今後のことを考えなきゃいけないでしょ?」
「そんなことは絶対にない…」
「わたしたちって結婚して10年近く経っても子宝に恵まれなかったのに、あなたが女性になるとすぐに妊娠できるなんて。もしかしたらわたしたちって今の状態のほうがいいんじゃない?」
「このまま俺に子供を産めって言うのか?」
「あなたの身体だってもうすっかり女性のラインじゃない。わたしだって声は低くなってきたし、髭もはえてきてるのよ。わたしが夫となって、あなたが妻になったほうが自然じゃないの?」
「そんなの嫌だ。すぐにあの探偵に元に戻してもらってくれ」
「あなたに女性としての快感が捨てられるというの?」
「セックスなんかどうでもいい。妊娠なんて絶対認めないからな」

芳佳は紗耶に連絡せずに、秀一の両親に連絡を入れた。
すぐに秀一の両親がやってきた。
「秀一が妊娠したと言っておったが本当か?芳佳さんが妊娠したんじゃないのか?」
秀一の父・昭三は開口一番そう聞いてきた。
芳佳は不思議な力で性器の部分だけが入れ替わったこと、お互い異性の性器をつけた状態で夫婦生活を続けたこと、その結果妊娠したと芳佳が説明した。
昭三は驚いた表情で芳佳の説明を聞いていたが、芳佳の説明が終わると落ち着いた顔になった。
「そうか。二人に子供ができないから神様が子供ができるようにしてくれたのかもしれんのう。それじゃ秀一が子供を産めばいいんじゃないか。大崎家としても跡取りができて万々歳じゃ」
意外にも昭三も芳佳と同意見だった。
「親父は俺に子供を産めというのか?」
それまで黙っていた秀一は驚いて昭三に詰め寄った。
「お前が子供ができるようなことをしたからできたんじゃろ?諦めろ」
昭三は冷たく言い放った。
「元に戻してもらえば…」
「馬鹿者。そんなことをして流産でもしたらどうするんじゃ?つべこべ言わずにお前が子供を産め。分かったな」
「そんな……」
さすがの秀一も昭三の考えが変わりそうにないことを知ると愕然とした。
元々昭三の言うことは絶対だった。
「それじゃ秀一は芳佳さんの保険証を持ってすぐにでも産婦人科に行って確かめてこい」
「どうして芳佳の……」
「馬鹿か、お前は?お前の保険証だと『男』になっとるだろうが。男が産婦人科にかかるわけはなかろう。お前が芳佳さんになるのが一番じゃ。ちゃんと女らしい格好で行くんじゃぞ。早苗、秀一を女らしくさせて、医者に連れていってくれるか?」
秀一は母・早苗に連れられて着替えるために部屋を出て行った。

「それじゃ芳佳さんは明日から秀一としてわしの会社で働いてくれるか?」
昭三は秀一が出ていったことを確認すると、芳佳に向かってなぜか声を落として言った。
「ここだけの話じゃが、秀一は偉そうにばかりしてるだけで仕事ができんかったんでどうしようかと思ってたとこなんじゃ。芳佳さんだと頭も良さそうじゃから秀一より立派な二代目になってくれるはずじゃ。期待しとるよ」
昭三にとっては息子夫婦の立場が入れ替わったことは渡りに舟だったみたいだ。
「はい、分かりました」
「とりあえず明日は迎えの者をやるから、その者と出社してくれるか。もちろん男としてスーツを着るようにな」
「分かりました」
芳佳は返事した。

秀一は早苗とともに寝室に行った。
そこに夫婦のタンスがあるのだ。
「秀一、本当に女になるのかい?」
早苗は心配そうに言った。
「親父があんなふうに言うと誰も止められないだろ?それに妊娠にしてなければ元に戻れるかもしれないし」
秀一は妊娠していないことにかけるしかなかった。
「そうだね。母さんも秀一は秀一でいてくれたほうがいいからね」
「ありがとう、お袋」
「それじゃお医者様に行けるように秀一を女の人に見えるように頑張るからね」
早苗は芳佳のタンスから下着を取り出した。
秀一は着ている服を脱ぎ、芳佳の下着を身につけようとした。
早苗はその姿をじっと見ていた。
「そんなに見るなよ。恥ずかしいだろ」
「本当に女性の身体になってるんだなって思って」
秀一は早苗の視線をできるだけ気にしないようにした。
女性器になっていたとは言え、女性のショーツを着けたのは初めてだった。
秀一にとっては屈辱的だった。
初めてのブラジャーはうまく留めることができずに母親に留めてもらった。

芳佳のスカートはどれもウエストがきつく秀一には履けなかった。
早苗はウエストがゴムのスカートを見つけ、それを秀一に履かせた。
全身完全女装をした秀一の姿はとても不自然だった。
まさに男が女装しているのが一目瞭然だった。
早苗はウィッグを見つけて、それを秀一に被せた。
そして早苗は自分の息子に化粧を施した。
この段階で何とか女に見えるようになった。
「これで何とか女の人に見えるかね?」
「やっぱり医者に行くのはやめようよ」
「あの人が一度言い出したことを変えないことはあなたもよく知ってるでしょ?それに赤ちゃんができていないときに戻してもらうんだろ?」
秀一は渋々早苗に連れられて産婦人科に行った。
秀一は恥ずかしい診察台に座らされ、医者の診察を受けた。
「おめでとうございます。確かに妊娠されてます。3ヶ月に入ったところでしょうね」
という言葉を聞く羽目になった。

この日から秀一は"芳佳"として、芳佳が"秀一"として性器だけでなく、役割も名前も入れ替えることになった。

次の日から芳佳は秀一の父親から厳しく仕事をさせられた。
以前勤めていたときは気楽なOLだった。
しかし今は経営者としての物の見方や考え方を徹底的に叩き込まれた。
芳佳にはその才能があったのだろう。
秀一の父親にはない感性で新たな事業分野への進出を企画した。
そしてそれに成功した。
そうなると秀一の父親の見る目が変わってきた。
芳佳も仕事が面白くなってきた。

秀一は最初のうちマタニティブルーのような状態だった。
早苗が女性教育に来てもほとんど何もしなかった。
悪阻が激しかったのも何もしない理由だった。
しかし悪阻が一段落すると少しずつ変わってきた。
早苗とともに妻として家事をこなすようになった。
芳佳の服は秀一には小さかったので早苗がいくつか買ってきた。
最初は早苗に無理矢理着せられていた女性の服も悪阻が終わる頃から積極的に着るようになった。
というより女性の服を着ることが日常に変わってきた。
秀一は大きな派手な柄の服が好きだった。

安定期に入るとあまり激しくなければ夫婦生活をしてもいいと医者から言われた。
それを芳佳に告げると、芳佳は秀一を求めた。
秀一は芳佳に抱かれるとすごく安心することができた。
自分でもどうしてそういう心境になるのか理解できなかった。

やがて胎動を感じるようになった。
そうなると秀一の中に母性が産まれてきた。
秀一はいろんな面で女性らしくなった。
外出する時には早苗から習った化粧をするようになった。
マタニティドレスを着ることに喜びを覚えた。
マタニティドレスは自分が妊娠していることを皆に主張しているようだった。
誰かから「おめでたですか?」などと声をかけられると本当に嬉しいと感じた。
やがて産まれてくる子供のための編み物まで始めた。
自分のお腹にもうひとつ生命が宿っていることの喜びを噛みしめることができた。
秀一は自分の大きくなるお腹を触って幸せそうな顔をしている。
お腹が大きくなるにつれ、乳房が大きくなっていった。
赤ちゃんに母乳をあげることを想像すると幸せな気持ちになることができた。
今では産まれたときから女性のような気さえしている。

そうなってからのセックスは快感よりも芳佳の愛を感じることで喜びを覚えるようになってきた。
自分でもどうしてそういう心境になるのか理解できなかった。
・・・・・
・・・


二人からそんな話を聞かされた。
確かに二人の性器の交換は結果オーライだったようだ。
紗耶の目から見ても、目の前の二人はそれなりに幸せそうに見えた。

「自分が男になって分かったんですけど、男の浮気ってある程度仕方のないものなんですね。ここだけの話ですけど、男になってから妻以外に3人の女性と関係を持ちました。今も一人彼女がいるんですよ。浮気防止に入れ替えたのにわたしが浮気するようになって。結局浮気の原因はこいつなんですね」
"秀一"は股間を指差して笑った。


《完》

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