義妹の誘惑



飯田智之は成田空港へ車を走らせていた。
助手席には妻の結華が座っていた。
結華は食品関係の調達部門に勤務しており、今日から1週間取引先との交渉のためヨーロッパに出張に行くのだ。
結華が海外出張に出掛けるのは今回が初めてだ。
以前から海外を相手にする部門への異動希望をしており、ようやく最近になって異動することができたと喜んでいた。
そして今回の出張は結華にとっての大きな第一歩となるのだ。

智之は空港の駐車場に車を停め、結華の荷物を下ろした。
結華は智之が持つことが当然のように大きな荷物を残し、小さな鞄だけを持ってさっさと歩き出した。
「おい、ちょっと待ってくれよ」
智之は大きなスーツケースを2つ抱え、結華のあとを追った。

「それじゃ行ってくるわね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「昨夜も言ったように妹の結季があなたの世話をしてくれるからね」
「別にひとりで大丈夫だよ」
「結季は智之のことが好きだし、楽しみにしてるんだから断っちゃダメよ。ただし妹に手を出さないでね」
「そんなことしないよ、君の大事な妹なんだから」
「ま、智之のことも結季のことも信用してるから」
「ああ、とにかく気をつけて」
「うん、ありがとう」
結華がゲートの向こうに消えていった。

「しばらくは独身生活かぁ」
智之は気持ちが大いに自由になるような気がした。

智之は売れない小説家だった。
来る日も来る日もPCに向かってなかなか物にならない小説を書いているのだった。
ときには取材と称して出歩くこともあったが、基本的に家にいることが多かった。
結華が仕事で出ているので智之が家事をやればいいのだが、結華がそれを許さなかった。
過去に一度だけ家事をしたことがあった。
そのときに、皺を伸ばさずに洗濯物を干したり、やたらと高い材料ばかりを使った料理をしたのだ。
そのため、智之が家事をすることは禁止になったのだ。

智之はルックスはいいのだが、優柔不断で、自分で決めるということは大の苦手だった。
そういう性格のせいか強く言われることにはすぐに従ってしまうのだった。
その結果、智之は恐妻家となってしまった。
それでも夫婦仲はそれなりに良かった。
智之がずっと小説を書き続けることができるのも結華がしっかりと稼いでくれるおかげだ。
それなりに感謝しつつも、やっぱり結華のことは恐かった。
結華の海外出張は智之にとって、久しぶりの自分の自由となる時間だったのだ。
智之は胸を弾ませながら家路を急いだ。

智之が家に戻るとすでに義妹の前川結季が家にあがりこんでいた。
結季は結華の3歳年下で、背が低く笑顔の可愛い女性だった。
結華に比べてそれほど気が強くなかった(あくまでも結華に比べると、というレベルだが)。
「あっ、お義兄さん、お帰りなさい」
結季は夕食の支度をしている手を休めて、智之に近寄ってきた。
「何だ。結季ちゃん、本当に来てくれたんだ。別に来てくれなくってもよかったのに」
「だってお姉ちゃんに頼まれてるんだよ。お姉ちゃんが帰ってきたときにお義兄さんが餓死してたらあたしが殺されちゃうよ。部屋が汚れれても殺されるかも」
「ははは、餓死なんてなるはずないじゃないか」
「だってお姉ちゃんの完璧主義ぶりはお義兄さんも知ってるでしょ?」
「そうなんだよな…うるさいもんな」
「ああ、お姉ちゃんに言ってやろ。うるさいって言ってたよって」
「よしてくれよ。そんなことされたら本当に殺されるじゃないか」
そんな冗談を言って笑いあった。
結季といるほうが肩が凝らないような気がする。
「それじゃもう少し待っててくれる?もうすぐ夕食ができるし」
再び結季は夕食を作り出した。

「おっ、うまい」
智之は目の前に出された酢豚に舌鼓を打った。
「本当?嬉しい」
「結華の料理も美味しいんだけどちょっと味が濃いんだよな。その点、結季ちゃんの料理はちょうどいいよ。いいお嫁さんになるんだろうな」
「そんなこと言っても何も出ないからね」
結季は智之にアッカンベェした。
その顔はとても可愛かった。
「結季ちゃんも一緒に食べようよ」
「ちょっと待って。今、お味噌汁を入れるから」
智之は冷蔵庫からビールとコップを2つ出した。
全ての料理が並べられ、結季が智之の正面に座った。
「お義兄さん、お待たせ」
「それじゃいただきます。結季ちゃんも飲む?」
智之が結季にビールをつごうとした。
「わたしはいいよ。車で帰んなきゃいけないし」
「そっか。飲酒運転はまずいもんな」
結季は車で10分ほどのところに一人暮らししていた。
定職にはつかず、お金がなくなりそうになるとアルバイトをするという生活をしていた。
智之の世話をするという名目で、夕食が取れるのは結季にとって有難いことだった。
智之と結季は一緒に食事を取った。
智之がテレビを見ている間に結季は食事の後片付けを終えた。
「お義兄さん、また明日来るね」
「ありがとう。でもあんまり無理しなくていいからね」
それでも食費を浮かすために結季は毎日智之の世話をするためにやってきた。

結華がいない日々はあっという間に過ぎていった。
結季との関係にも何の進展もなかった。
いよいよ明日は結華が帰ってくる日だ。

智之はいつものように結季と一緒に夕飯を取っていた。
「明日やっとお姉ちゃんが帰ってくるね。嬉しい?」
「別に。そんなことないよ」
「ああ、そんなこと言って。お姉ちゃんに言うわよ」
「ダメだって。殺されるよ」
そんな他愛もない話をして食事を取った。
「それじゃ風呂入ってくるね」
智之が食器を洗っている結季に声をかけて風呂に入った。

智之が風呂から出てくるといつも帰っている結季がまだ部屋にいた。
「あれ?結季ちゃん。まだいたんだ」
なぜか結季は黙っていた。
「結季ちゃん…どうしたの?」
「だってお義兄さんと二人っきりでいられるのって今日が最後なんだよ」
「?」
「ねえ、お義兄さん、わたしじゃお姉ちゃんの代わりにならない?」
「何言ってるんだ、結季ちゃん」
「だってお義兄さん、全然わたしに手を出してくれないんだもん。だったら自分から行動を起こすしかないよね?わたしもお義兄さんみたいなタイプ嫌いじゃないし」
「そんなことしたら結華に殺されちゃうよ」
「黙ってれば分かんないよ」
結季が上目遣いに近づいてきた。
結華以外に全く女性経験のない智之は硬直するしかなかった。
「お義兄さん、可愛い」
結季は智之の股間に手を当て、少し背伸びして唇に軽くキスをした。
「ここ、すごく硬くなってるよ」
結季は智之の股間をこするように手を動かした。
「結季ちゃん…ダメだよ……」
智之は口では拒否していたが、結季の手の動きを邪魔することはしなかった。

結季はパジャマのズボンの中に手を入れた。
ペニスを直接握る結季の手に智之のペニスは硬度を増した。
「お義兄さん、気持ちいい?」
智之はまぶたを閉じて結季の手の動きを感じていた。

結季はパジャマをずらしペニスを取り出した。
そして膝をつき、ペニスを銜えた。
「…あ……」
生まれて一度もフェラチオをされたことがなかった智之は驚いた。
それと同時に結季の舌の動きにすぐに爆発しそうになった。
「結季ちゃん、やめてくれ」
智之は慌てて腰をひいて結季から離れた。
「どうして?」
「その…こんなことされるの……初めてなんだ」
「お姉ちゃんはやってくれなかったの?」
智之は言葉は出さずに肯いた。
「わたしを抱いてくれる?」
再び智之は肯いた。
「嬉しい」
結季はそう言って、自分の着ている服を脱ぎだした。
ストリッパーのように艶めかしく。
全裸になった結季の身体は小柄だが素晴らしいプロポーションをしていた。
結季はコンドームを取り出した。
「やっぱり妊娠はしたくないもんね。つけてくれるでしょ?」
「うん」
結季は智之のペニスにコンドームをつけた。
「これ、特別なコンドームなのよ」
結季はコンドームをしばらくこすった。
するとコンドームが消えてなくなった。
「なくなったみたいだけど、いいのかい?」
「いいの、これで。それじゃお義兄さんは横になってていいよ」
結季が智之のペニスを指ではさみ膣口にあてた。
そしてゆっくりと腰を落とした。
「ぁ…ぁぁ……」
完全に合体した。
智之は下から突いた。
結季の身体は最高だった。
コンドームをしているような感触は全くなかった。
智之は結季の中で放出した。
頭の中が真っ白になった。


やがて少しずつ意識が戻ってきた。
智之の身体にまたがっている人物の姿をおぼろげに認識できた。
その姿が男だと気づくのに大した時間は必要なかった。
しかもそれは智之自身のようだった。
(?)
智之は身体を起こそうとした。
すると胸のところに違和感を感じた。
見るとそこには女のような膨らみがあった。
「やっと気がついた?」
智之にまたがっている人物の話し方はおかまのようだった。
「何がどうなってるんだ?」
智之の発した声は女のように高い声だった。
智之は驚いて口を押さえた。
「まだ分からない、お義兄さん?」
智之の姿をした人間が言った。
「結季ちゃんなのか?」
智之の姿をしているのは結季らしい。
「そうよ。そしてお義兄さんがわたしになってるのよ」
智之は股間に手を当てた。
そこには雄々しく存在を主張するものはなく、恥ずかしげな恥毛があるだけだった。
その奥にあるものまで確認する心の余裕は智之にはなかった。
しかし智之が女性になってしまったのは確からしい。
「どうしてこんなことを……?」
「わたし、お姉ちゃんのことが大好きなの。だからお義兄さんになってお姉ちゃんとセックスしたかったんだ。だから入れ替われる薬を手に入れたんだ。お義兄さんにつけた消えてしまうコンドーム、あれが入れ替わりの薬なの」
智之になった結季は驚いている智之にそう言った。
「そんな…。元に戻してくれよ」
「だからお姉ちゃんとセックスしたら戻るから大丈夫よ。薬はまだ残っているし」
「本当に?」
「もちろんよ。わたしだってずっとお義兄さんでいる気はないもの」
結季は顔を智之に近づけてきた。
見慣れた自分の顔とは言え、こんな形で自分の顔を見るのは何とも不思議な気がした。
「少しの間だけどお義兄さんもわたしの身体を楽しんでもいいわよ。何ならわたしが抱いてあげようか?」
そう言って智之の乳首を手のひらで転がすようにした。
「…んっ…」
智之は思わず声を出してしまった。
「わたしって乳首が弱いんだ」
結季は智之の乳首を舐めた。
「…ぁん……」
「お義兄さんって可愛い」
智之は胸から全身に拡がっていく快感に抗おうとした。
しかし押し寄せる快感の前にはそんな抵抗は虚しいだけだった。
やがて智之は快感の波に身を委ねた。

急に結季がその行為を止めた。
「それじゃ明日に備えて身体を休めることにするわね」
結季はさっさとパジャマを着て、横になった。
やがて寝息を立て始めた。

結季が急に止めてしまったため、智之は身体が火照ったままだった。
(結季ちゃん、もっと…してくれよ……)
しかし結季はすでに眠ってしまっていた。
智之は無意識に自分で胸を揉み始めた。
少しは気持ちいい。
しかし結季の行為には遠く及ばなかった。
(もっと…ほしい……)
智之は股間に手をやった。
そして最も敏感な部分を探り当てた。
(す……すごい……)
智之は執拗にその芯部に触れた。
何度か意識が遠くなるような気がした。
そんな行為を続けながら智之は眠ってしまった。

「お義兄さん、早く起きて。お姉ちゃんを迎えに行くわよ」
智之は男の声で目を覚ました。
声の主は智之になった結季だった。
智之は昨夜のことを思い出し、慌てて自分の身体を確認した。
結季のままだった。
智之はあのまま裸で眠ってしまったようで、結季の裸体が目に入った。
「もうお義兄さんったら裸のままで寝ちゃったの?風邪をひいたらどうするのよ?」
結季はニヤニヤして智之の姿を見ていた。
「ああ、すぐ起きるよ」
智之はそう言ったが、なかなか起きることができなかった。
まだ半分眠っているような状態だった。
いつもだったらすぐにでも起き上がることができるのに。
結季の身体は低血圧なのだろうか?
そんなことを考えながらしばらくまどろみの時間があった。

ようやく智之は全裸のまま起き上がった。
「わたしってやっぱりいいプロポーションしてるわね」
結季が智之をジッと見ていた。
智之はなぜか急に気恥ずかしく感じた。
「そんなに見ないでくれよ」
智之は恥ずかしそうに身体をよじった。
「本当にわたしになったお義兄さんって可愛いわね。犯したくなっちゃう」
智之は結季の言葉に恐怖を感じた。
「嘘よ、嘘。わたしの初めての相手はお姉ちゃんって決めてるんだもん。お義兄さんはその次ね」
結季の言葉に少しはホッとしたが、一方では残念な気がした。
「ちょっとシャワー浴びていいかな?」
智之は身体の異臭を感じていた。
昨夜のセックスの影響なのだろう。
「いいわよ。わたしの身体を思いっ切り楽しんでいいわよ」
「そんなことしないよ、ただ汗を流したいだけなんだから」
智之はシャワーを浴びた。
ようやく意識がはっきりしてくるようだった。

「お義兄さん、下着新しく出してあげたわよ」
浴室から出るとそこに綺麗な下着が置かれていた。
智之は用意されたグリーンのショーツを手に取った。
(こんなものを僕が履くのか)
両脚を通すとショーツは腰の辺りを守るように密着した。
その感触により心が妙に落ち着くような気がした。

ブラジャーはショーツをお揃いのグリーンのブラジャーだった。
初めてのブラジャーはなかなかうまく留めることができなかった。
「お義兄さんって下手ね。外すのはうまいのにね」
結季が留めてくれた。
大きな胸が一気に落ち着いたような気がした。
(女の下着ってお洒落なだけじゃなくってそれなりに機能的なんだ)
智之は妙なことに感心していた。

「服はわたしが着てきたものしかないからね」
服は問題ないのだが、問題はスカートだった。
太腿がほとんど全部が見えるような代物だったのだ。
「こんなの履けないよ」
「昨日わたしが履いてたでしょ?お義兄さんも楽しそうに見てたじゃない?」
結季のスカートから伸びた綺麗な脚を見て目の保養をしたのは確かなことだった。
しかし見る立場と見られる立場では大きく違う。
「ならお姉ちゃんのジーパン履く?黙ってお姉ちゃんの履いたらどうなるでしょうね?」
確かに結華の性格を考えると勝手に結華のものを着るのは憚られた。
「仕方ない……か」
智之は諦めて結季のスカートを履いた。
しかしそれは履いたという実感がなく、ほとんど下着だけのような気分だった。
「こんなスカートでよく歩けるよな」
「わたしの脚が綺麗だからよ。わたしを見る男の人も嬉しそうだからね。お義兄さんもそうだったでしょ?」
確かに鏡に映る今の自分は十分魅力的だとは思う。
しかし鏡に映っているのは自分自身なのだ。
智之は目眩がする思いだった。

「さあ、それじゃ早くお姉ちゃんを迎えにいこ♪」
簡単に化粧を施された智之は、結季に後押しされて外に出た。

車は智之になった結季が運転した。
結季になった智之は助手席に座った。
「お義兄さん、喋り方の練習しておかない?」
「喋り方?」
「そう、喋り方。お姉ちゃんの前でそんな話し方だったら怪しまれるでしょ?」
「別にいいよ、そんなの」
「そんなこと言わないでやりましょ」
「結季ちゃんこそそんな話し方だとおかまみたいで気持ち悪いよ」
結季はニヤッと笑った。
「僕はすぐにできるよ。でもお義兄さんは難しいと思うよ」
いつもの智之と同じ話し方だった。
智之自身でも自分自身を見ているようだった。
あまりにも驚いて言葉が出てこなかった。
「どうしたんだい?僕の話し方はおかしいかな?せっかくだからお義兄さんのことも結季ちゃんと呼ぼうか?」
自分のことを結季と呼ばれてしまうと智之は自分でなくなるような気がして恐怖を感じた。
「いや、それだけは勘弁してくれ」
智之は絞り出すように言った。
「そんなこと言っても結華の前ではお義兄さんのことは結季ちゃんと呼ばないといけないんだけどいいかな?」
結局智之は女の子のような喋り方はできず、全く一言も発しないまま空港に着いた。

やがて結華の乗った飛行機が到着した。
「ただいま。あら、結季も来てくれたの?」
結季になっている智之は何も言わずに肯いた。
「結季、智之を誘惑しなかったでしょうね?」
智之はどう答えていいか分からなかった。
「一回だけだよな、結季ちゃん」
冗談めかして結季が言った。
「何、言ってるの、智之がそんなこと言うのって珍しいわね」
「ははは、そうかな?とにかく帰ろうか」
智之になった結季が運転して家に戻った。
車の中では結華の独壇場だった。

「それじゃ1週間ありがとうね。ご苦労様」
家に戻ると結華はすぐに結季を帰そうとした。
結季になった智之としては帰らざるをえないような感じだった。
「まあ結季ちゃんも1週間頑張ってくれたんだから3人で楽しく夕食を取ろうよ」
そう言って智之になった結季は電話をかけ、ビザの宅配を頼んだ。
結華は少し不満そうだったが、3人でピザを食べた。
結季になった智之はずっと無言だった。
「結季ちゃんは帰るのは明日にして今日は泊まっていけばいいさ」
そう言って智之は結季にビールを飲まされた。
結季の身体には少量のビールも結構効くようで、すぐに眠くなってしまった。
「結季、本当に寝てどうするのよ」
結華の怒りを抑えた声を聞きながらも智之は睡魔をどうすることもできなかった。
「智之、結季に飲ませたらダメじゃない」
結季はそんな結華の言葉を無視して、結華を抱きしめた。
「結華、愛してる」
智之になった結季は結華にキスをした。
「智之、どうしたのよ」
結華はいつもと違う智之の積極的な態度に驚いた。
「1週間も離れていて寂しかったんだ」
結季は結華を抱きしめ乳房に優しく触れた。
「ぁ…智之……何かいつもと違う……」
智之になった結季の前戯に結華は感じた。
「結季が起きちゃう」
結華は傍で眠っている結季のことが気になった。
「別にいいさ。結季ちゃんだって子供じゃないんだし」
「そんな…恥ずかしい……」
「それじゃ寝室に行こうか」
二人は寝室に行った。

寝室に行くと結季が結華に覆い被さった。
そして全身に舌を這わせた。
優しく執拗な前戯だった。
結華は前戯だけでイクことができた。
こんなことは初めてだった。
結華は智之のセックスに初めて満足した。
「結華、もう1回いいかな?」
海外出張から戻ったばかりで疲れていたが、結華は頷いていた。
すでに熱を帯びていた結華の女体が再び燃え上がるのはすぐだった。
しかし結季は急に行為をやめた。
「やっぱり疲れたから寝るよ」
そう言って結季はさっさと眠ってしまったのだ。
「智之。起きてよ」
智之になった結季は全く起きる気配がなかった。
「もう智之ったら。今日はやたらカッコイイと思ったのに結局こうなんだから…」
結華は再び登り詰めようとした身体をどうしていいのか分からなかった。
しかし長い海外出張のせいか結局結華も眠ってしまった。



次の日になると、智之になった結季が外出しようとしていた。
「調べたいことがあるから図書館に行ってくる。時間がかかりそうだから昼食はどこかで食べてくるよ」
そう言って出掛けて行った。

家には結華と結季になった智之が残された。
智之は結華との二人きりの時間が恐かった。
だから自分も結季の家に戻るとか言ってこの場を離れようと思った。
「お姉ちゃん、それじゃわたしも帰るね」
しかし結華はそれを許さなかった。
「結季、せっかく智之が出掛けたことだし久しぶりに、ね?」
結華は前夜から火照った状態の身体を何とかしたかった。
だから結婚前のように姉妹でレズろうと思ったのだ。
しかし結季になっている智之には何のことか分からない。
「結季、早く来なさいよ」
智之は結華に手をひかれて寝室に連れていかれた。
「何するんだ……するの?」
智之は結華の剣幕に押されていた。
「以前は二人でよくしたじゃない」
結華はそう言って結季になった智之にキスをした。
長いキスだった。
甘く優しい、それでいて粘っこいキスだった。
結季の身体はそれだけでスイッチが入ったようだ。
智之は身体の中が熱くなっていくことを感じた。
「…お姉ちゃん……」
思わず声が出た。
結華はその声を合図にするように、智之の手を引っ張ってベッドに倒れた。
智之は結華に覆い被さるような体勢になった。
「結季、前みたいに愛して」
結華が上目遣いに言った。
「昨日、お義兄さんとしたんじゃないの?」
智之は酔っ払いながらも昨夜の隣室の声を聞いていたのだ。
「だってそれが智之ったら途中で寝ちゃうんだもの」
結華は智之の手を自分の胸に押し当てた。
智之は結華の乳房を揉みながら結華の服を脱がせた。
そして自分の服も脱ぎ、ついに全裸になった。
智之はいつものように結華に愛撫した。
そういう行為をしていると、自分が元の身体に戻ったように錯覚した。
それでも自分の胸についた乳房が目に入ると、自分が今結季であることを認識させられた。
「もう結季ったら。もっとちゃんと気持ちを入れてよ。それじゃ智之みたいじゃない」
結華は怒ったように立ち上がった。
タンスを開け、そこから何かを取り出した。
「それじゃ結季、これをつけて」
「えっ、これって?」
渡されたのはペニスバンドだった。
智之はそれを腰につけた。
結華は再びベッドに横になった。
「来て」
そう言って両脚を広げた。
智之は無機質な棒を結華の膣に押し入れた。
そして単調に腰をふった。
「結季、やっぱり今日は変よ。もういい!帰って」
結華はついに怒り出した。
智之を突き飛ばし、立ち上がった。
「早く帰ってよ」
結華は智之に服を投げつけた。

智之は結華から投げつけられた服を着始めた。
結華は黙ってそれを見ていた。
智之が服を着終えたのを見ると「早く帰んなよ」とだけ静かに言った。
智之は無言で玄関に行き、靴を履いた。
ちょうどそのとき智之になった結季が帰ってきた。
「ただいま。……あれっ、結季ちゃん帰るの?」
「うん、もう帰るんだって」
結華は冷たく言い放った。

その言葉に背中を押されるように智之が何も持たずに出て行った。
結季は部屋に残されたバッグを見つけた。
「あっ、結季ちゃん、バッグを忘れたみたいだ。ちょっと渡してくる」
「放っておきなさいよ」という結華の言葉を無視して、結季はバッグを持って智之の後を追った。
結季になった智之の足はそれほど速くなく、すぐに追いついた。
「どうしたの?何かあった?」
「別に…」
智之の様子は明らかにおかしかった。
結季は自分の狙い通りのことが起こったせいだと考えた。
「わたしが出掛けた隙にお姉ちゃんが迫ってきたんでしょ?」
「ど…どうして知ってるんだよ?」
「昨夜お姉ちゃんを欲求不満になるようにしてあげたの。わたしたち、時々姉妹で慰め合っていたから、多分そうなるだろうなって思って。予想通りね」
「でもそのせいで結華を怒らせてしまったんだ…」
「どういうこと?」
どうやら結季が仕掛けたことは単なるきっかけで、それによって何かが起こったらしかった。
「智之とやり方が同じなんだって…」
智之の言葉に結季は思わず笑ってしまった。
「あはははは…、何それ?当然じゃない?お義兄さんはお義兄さんなんだから」
結季は真剣に笑っていた。
「どうせ僕は結季ちゃんよりセックスが下手なんだ……」
智之は結季の笑いで余計にへこんだ。
「お義兄さん、そんな拗ねないで。女同士だからどこが感じるのか分かってるってだけだから」
「……」
「お義兄さんもわたしになっているうちに女の子はどこか感じやすいのか研究すればいいじゃない」
智之はなるほどと結季の提案に納得しつつも、ふと現実に戻った。
「でもいつまでも入れ替わったままでいたくないよ」
「とにかく一旦わたしのアパートに戻ってて。連絡するし」
「ああ、分かった、そうする。絶対連絡してよな」
「わたしを信じてよ。それじゃあね」
智之は結季に言われた通り、とりあえず結季のアパートに行った。

智之はアパートで一人になるとついさっきの結季の言葉が思い出された。
(女の子はどこか感じやすいのか研究すればいいじゃない)
智之の頭の中でこの言葉が何度も繰り返された。
(そうだよな。今は僕が結季ちゃんなんだから少しくらいならいいよな)
智之は鏡の前に立った。
(結季ちゃんって本当に可愛いよね)
智之は鏡に映った自分の今の姿に見惚れていた。
パッチリ開いた二重の目。
小さくて可愛い鼻。
少し厚めでもっちりした唇。
色白で綺麗な肌。
(こんなに可愛いのに、どうして今まで気づかなかったんだろう)

顔に勝るとも劣らずプロポーションも抜群だ。
服の上からだとよく分からないが、胸は大きく形もいい。
腰には見事な括れが形成されている。
スカートから伸びた脚がとても綺麗だ。

智之は服の上からバストを揉んだ。
ブラジャーが感触の邪魔をしているが、とても柔らかい。
智之は結季の身体をじっくり見ることにした。
ショーツだけを残し、服を脱ぎ捨てた。
改めて胸を見るとお椀型で決して小さくない。
智之は指先を乳首の先に触れた。
「…ぁ……」
胸から電気のような快感を感じて、思わず声を出してしまった。
元の身体でも乳首は感じたが、女の身体では比べ物にならないくらいの快感だった。
智之は指の先で円を描くようにして乳首に触れた。
とても気持ちいい。
智之は乳首を指に挟むようにして乳房を揉んだ。
「ああ…気持ちいい……」
鏡の中の結季が悶えている。

智之はショーツの中に手を入れた。
すでにそこは濡れていた。
指を溝の中にゆっくりと忍び込ませた。
「痛いっ」
敏感な部分に触れたが、快感ではなく痛みが走った。
(これってクリトリスなんだよな)
智之は触れるか触れない程度にその部分を優しく触った。
「ああああああ」
今度はすごい快感が走った。
(あんまり乱暴にしちゃいけないんだ)
智之はクリトリスを触りながら、乳房を揉んだ。
鏡の中の結季が身悶えして身体をよじっている。
少々乱暴にクリトリスに触れても痛みはない。
快感だけがもたらされた。

智之は仰向けになって、中指を膣の中に入れた。
(指でもこんなに感じるんだ)
指を入れたり出したりしながら親指の腹でクリトリスをいじった。
快感で気が狂いそうだ。
「あああああああ…何か…来そう…いくぅ………」
智之は意識が一瞬途切れたような感じがした。
その後はゆっくりゆっくり快感の波の中に漂っているような気がした。
(これが女のイクって感じなのかな?)
智之はしばらく裸のまま横たわっていた。
(女の感じって結構いいかも)
智之は経験したことのない快感に填りそうだった。
そして自分がそうなることに恐れを感じた。


次の日、結華が会社に行ったころを見計らって智之は家に戻った。
「あら、早いのね」
「早く元に戻りたいんだよ」
「早くやりたいじゃないの?わたしは昨夜もお姉ちゃんと犯っちゃったから疲れてるのよね。明日にしない?」
結季は明らかに智之をからかっていた。
「何言ってるんだよ。早く戻ろうよ」
「まあいいわ。それじゃコーヒー飲むまでちょっと待ってて」
智之は結季がコーヒーを飲む姿をジッと見ていた。
自分はこんな顔をしているのかと妙なところに感心していた。
「何ジッと見てるの?自分の顔に惚れたの?」
「何でもないよ。とにかく早く飲んでくれよ」
智之は慌てて視線を外した。
「はいはい、せっかちね」
結季は残りを一気に飲んで立ち上がった。
それに合わせて智之も立ち上がった。
「ここでする?それともベッドに行く?」
「もちろんベッドに行くよ」
智之が先に立ち寝室に行った。

寝室に入った途端、智之は後ろから抱き締められた。
「わたしの身体っていい匂いがする」
結季が智之に密着して匂いを嗅いでいるのだ。
智之は自分の身体に抱きすくめられているのになぜかドキドキしていた。
(自分の身体に抱きつかれただけなのにどうしてこんなにドキドキするんだろう?)
結季が智之の首筋にキスをした。
「…あん…くすぐったい……」
智之は思わず女の子っぽい反応をしてしまった。
(この身体になったせいで女っぽくなってきてるのかなあ)
そんなことを考えてると、結季が背後から智之の肩をつかんだ。
そして、結季と向かい合うように智之の身体の向きを変えた。
結季は智之を抱き締め、そのままの態勢でベッドに倒れた。
「きゃっ」
智之はまた可愛く反応してしまった。
身体が密着しているため結季のペニスが大きくなっているのが分かる。

智之は恐くなった。
いくら身体が女になったとしても心は男のままだ。
智之自身ホモでもなんでもない。
普通に女性が好きな男だ。
そんな智之が身体が女になったとは言え、男のペニスを受け入れるなんてできるだろうか?
そんなことを考えていた。

「お義兄さん、何考えてるの?」
結季はスカートの中に手を入れ、ショーツの上から優しく撫でた。
智之は目を閉じて触られる恥ずかしさに耐えていた。
「どう?気持ちいい?」
気持ち良さはなかった。
ただただ恥ずかしいだけだった。
それでもずっと撫でられていると股間が熱くなるように感じた。

結季は智之のショーツの中に手を入れ、敏感なところに触れた。
そしてその手を智之の顔に持っていき、親指と人差し指をつけたり離したりした。
指の間に粘っこい液でできる糸ができた。
「お義兄さん、もうこんなに感じてるのよ」
智之は自分が感じていることを視覚的に見せられ、恥ずかしくてどうしようもなかった。
しかしそんな恥ずかしい思いになぜか興奮しているのも確かだった。

結季は智之のショーツをゆっくり下ろした。
智之はその性急でない行為にドキドキしていた。
智之は結季の動きを助けるように右脚を曲げ、ショーツから脚を抜いた。
ショーツは左脚の膝辺りに止まっている。

片方の脚がショーツから抜けたことを確認して、結季は両手で智之の脚を広げた。
そして智之の股間に顔を埋めた。
「や…やめろ……」
智之は恥ずかしくて脚を閉じようとした。
しかし、男になっている結季の力にはかなわなかった。
智之は結季の行為を本心では嫌がっているわけではなかった。
だから智之の抵抗は形だけのものだったのだ。

ついに結季の舌が智之の敏感な部分を這った。
智之はオナニーでは感じたことのないものすごい快感を感じた。
「ああああああああ……」
大きな声を出すことを抑え切れなかった。
結季のクンニは長い時間続いた。
結季の舌技に智之は何も考えられない状態だった。
自分が声をあげ続けていることにすら気がつかないくらいだった。

唐突に結季の舌が離れた。
そして身体を移動させ、ペニスを智之の膣口に当てた。
智之は結季のクンニに快感を感じれば感じるほど何か物足りなさを感じていた。
その物足りなさを埋めてもらえるものはペニスだと本能的に理解していた。
智之は結季の挿入を待った。

結季がいよいよ挿入しようと腰が動きかけたとき、重大なことを思い出した。
「おい、あのコンドームをつけてくれよ」
智之は腰をひいて結季のペニスから逃げた。
「あら残念。せっかくいい感じで入れてあげれたのに」
結季は面白そうな表情をしていた。
「興醒めしちゃったから、お義兄さんがつけてよ」
そう言って結季はコンドームの袋を智之に手渡し、仰向けに寝た。

智之は袋からコンドームを取り出した。
何の変哲もない普通のコンドームにしか見えない。
これが身体の入れ替えを実現させるものなんて体験してなければ絶対に信じないだろう。
智之は結季のいきり立っているペニスに座った。
(俺のペニスってこんなに大きかったっけ?)
他人の目から見た勃起した元自分のペニスは思った以上に大きかった。
智之は亀頭を撫でてみた。
ペニスがピクッと動いた。
(へぇ、僕のペニスってこんなんなんだ)
智之は感心してペニスをいじった。
「お義兄さん、何だったらフェラしてくれてもいいわよ」
面白がってペニスを触っている智之を見て結季が笑いながら言った。
「そんなこと…いいよ…」
智之は照れ隠しもあり、慌ててコンドームをペニスに被せた。
そして智之がコンドームをこすると、コンドームが消えた。
「これでいいんだよね」
「ええ、それでいいわ」
結季がペニスを一瞥して言った。
「それじゃお義兄さんが上になって入れてくれる?」
結季がそんなことを言い出した。
騎乗位でセックスをしようということなのだろう。
「ええ…、そんなこと……」
騎乗位ということは智之のほうから受け入れるということなのだ。
智之は自分から結合することが何となく恐かった。
そんな智之の気持ちが結季に伝わったのだろう。
「できないの?」
智之を小馬鹿にしたように結季が言った。
「いや…やってみる…」
智之は勇気を出して、結季の腰の辺りにまたがった。
そして結季のペニスを自分の膣口に当てようとした。
しかしなかなかうまくいかなかった。
結季になって初めて男性のものを受け入れるのだ。
身体は明らかに処女ではないが、智之の心は処女と同じだった。
初めてペニスを受け入れるのが恐かった。
そんな心理のせいかなかなかうまくいかなかったのだ。

「もう何してるのよ」
そんな言葉とともに、結季の手が下から伸びてきた。
そして智之の腰を右手でつかみ、左手で自分のペニスの位置を固定した。
さらに智之の膣口にペニスを当てたかと思うと、一気に智之の腰を引き寄せた。
その結果結季のペニスが智之の中に入ってきた。
それは一瞬の出来事だった。

「あああああ…」
まだ気持ちの準備ができていなかった智之は突然の感触に声をあげた。
結季はそんな智之の状態には構わず智之の腰を持って、智之の身体を上下に揺すった。
智之は二人の性器の摩擦によって産み出される快感にどんどんどんどん気持ちは高まっていった。
「ああああ…すごい……気持ち…いい………」
智之は無意識に自ら腰を振っていた。

結季が動きを止めた。
それと同時に智之は結季に抱きつくように倒れた。
智之が上から結季を抱きしめるような体勢になった。
二人の間で智之の乳房が潰れていた。
「どう?気持ちいい?」
結季が智之に聞いた。
「うん」
智之は呟くような声で答えた。
「それじゃ攻守交替ね」
今度は結季が上になるような体勢になった。
正常位というわけだ。

すぐに結季のペニスが入ってきて、すぐに抽送が始まった。
体位が下になっての挿入はまた違った感じだった。
直接の快感は騎乗位のほうがよかった。
しかし、正常位では男性に征服されたような感覚があり、それが智之を興奮させた。
体位ひとつで精神的に全然違ったものがあり、それが快感に微妙な影響を及ぼす。
智之は女の快感が強烈なことに戸惑っていたが、逆にこんなに繊細なことにも驚いていた。
文字通り女としてのセックスに溺れてしまいそうだった。

智之が女としての喜びに身を任せていたまさにそのとき急にドアが開いた。
入ってきたのは結華だった。
鬼のような形相をしている。
結季は急いで智之から離れた。
一方、智之は女の快感にボゥーッとしていて、すぐには立ち上がることはできなかった。
結華は智之の姿をした結季に歩み寄った。
「結季の様子が変だと思ったら、やっぱりこういうことだったのね。結季には手を出さないでって言ったでしょ!」
そう言ったかと思うと、思い切り結季の頬を叩いた。
そして智之の顔を睨みつけた。
「結季も一体どういうつもりよ。この泥棒猫」
二人は何も言い返すことができず全裸のままジッとしていた。
重い沈黙の時間が流れた。
「結季。もう出てってよ」
沈黙を破ったのは結華だった。
そして結季がゆっくりと立ち上がった。
「いいよ、僕が出て行く」
そう言って、結季はさっさと服を着て出て行った。
「智之ったら何なのよ。結季も早く出てって」
智之も急いで服を着た。
後に残る結華のことが気にはなったが、とりあえず結季の後を追った。

結季は車のところで待っていた。
「ヤバイところ見られちゃったね。お姉ちゃん、勘がいいから何か感じたんだろうね」
結季は意外と落ち着いていた。
「どうしよう?」
一方智之は狼狽えていた。
「今はあんな場面を見たから興奮してるだけだと思うわ。とりあえずわたしのアパートに戻りましょう」
智之と結季は一緒に結季のアパートに戻った。

「お姉ちゃんのことは後で考えることにして、とりあえず元に戻ろ」
アパートの部屋に入るとすぐに結季は智之を押し倒した。
「こんな状況でそんな気分になれないよ」
「ならずっとわたしのままでいるの?」
「それは…」
「でしょ?問題はひとつずつ解決していかなくっちゃ。まずはわたしとお義兄さんが元に戻ることよ、そうでしょ」
結季にそう言われて智之は身体の力を抜いた。
「そうそう、それでいいの。それじゃわたしが受け入れられるように準備してあげるから、お義兄さんはおとなしく横になってて」
結季は智之の唇に舌を這わせた。
「…ぁぁ……」
唇がこんなに感じるなんて知らなかった。
智之は唇を半開きにし、結季の舌の動きに応えた。
「わたしの感じるところは分かってるんだからね」
結季の舌と手が智之の全身を這い回った。

結季と智之はいつの間にか全裸で抱き合っていた。
「それじゃそろそろ元に戻りましょうか」
結季はコンドームを取り出し自分のペニスにつけた。
智之は結季のそんな姿をボゥーッと見ていた。

智之は大きく脚を広げて、結季を待った。
結季のペニスが入ってきた。
智之はペニスが入ってくる感触が好きだった。
抽送の快感もいいのだが、入ってくるときの被挿入感が何とも言えなかった。
「気持ち良さそうね」
「ん…気持ちいい……」
「そんなに気持ちいいのなら、お義兄さん、もうわたしのままでいれば?」
「元に戻れるからこそ楽しめる余裕があるんじゃないか。一生このままだったりしたらもっとパニックになっているさ」
「そう…かもね。とりあえず動くけどいい?」
「うん」
結季が腰を振った。
智之もそれに合わせて腰を動かした。
まだ二度目だというのに、すっかり女性として受身のセックスに慣れてしまっていた。
結季は智之の様子をうかがいながら、時には強く、時にはゆっくりと腰を動かした。
結季の動きが速くなった。
「あああ、出るよ」
「来てぇ」
結季のペニスが二度三度収縮し、智之の中に熱いものを出した。
智之は精子が子宮壁を当たるのを感じた。
(あああ…これで元に戻れるんだ…)
そう思って智之は完全に気を失った。

「お義兄さん、お義兄さん」
智之は頬を叩かれることでようやく生気を取り戻した。
「元に戻れなかったみたいよ」
そう言ったのは智之の姿をした結季だった。

「どうして?」
智之は半分パニックに陥っていた。
「さあ、分かんない。説明書、読んでみる?」
智之に比べ冷静な結季はカバンからコンドームの入った箱を取り出した。
中から薄っぺらい紙を出して、智之に渡した。
智之は気持ちばかりが焦り、なかなか書いてあることを理解できなかった。
ようやくこんなことが書かれている部分を見つけた。
『……このコンドームを使って射精することにより心を入れ替えることができます。ただし、女性の身体の場合、同じ身体で連続使用はできません。女性が生理を迎えれば、再度の使用で心の入れ替えが発生します。したがって元に戻る場合は女性の身体が生理を迎えてから使用すると元に戻ります。したがって……』

元に戻るには智之が結季として生理を体験しなくてはいけないらしい。
「僕が生理にならないと元に戻れないってこと?」
「どうやらそうみたいね」
「そんなの困るよ」
「でも仕方ないじゃない。過ぎたことをグズグズ言ってても仕方ないでしょ。お互い、定職についていないから、少々このままでもそれほど問題にならないじゃない」
「生理が終わったら絶対元に戻してくれよ」
「それまでにはお義兄さんは女の身体にはまっているかもね」
結季の指摘は当たりそうで、智之は何も言い返せなかった。
「それじゃあたしはお姉ちゃんの機嫌を直しに行ってくるね」
結季は結華のところに戻っていって、智之が一人取り残された。
「大丈夫かなぁ。姉妹だから押さえどころは押さえてくれると思うけど」


次の日になって、結季から電話があった。
「うまくいったわよ。お姉ちゃん、機嫌なおしてくれた」
「よかった。それじゃ結華のこと頼むな」
「分かってる、任せといて。それから、あんまりこっちに来ないほうがいいと思うんだ。またお姉ちゃんの機嫌が悪くなると思うから」
「ああ、そうだな。でも時々は連絡してくれよ」
「でもこれからしばらくの間はお姉ちゃんの監視が厳しいだろうから会うのはもちろん、電話もメールもしないほうがいいと思うんだ」
「じゃあそうするよ」
何だか会いたくないみたいだなと思いながらも智之はそう返事せざるをえなかった。
「ところでさ、結季ちゃんってお金どうしてるの?」
智之が気になっていたもう一つの点を聞いた。
「結季は…毎日ブラブラして、お金がなくなったらバイトに行ってって感じかな」
(結季ちゃんが自分のことを名前で呼ぶなんて初めて聞いたな)
智之はそのことを不思議に感じた。
しかしそこで結季が話題を変えて、そんなことを感じたことを忘れてしまった。
「ねえ、お願いがあるんだけど」
「何だ?」
「今ちょうどお金がないところなの。だから…」
「だから僕がバイトしたほうがいいのかな」
「うん」
「分かったよ」
「さすがお義兄さん、助かるわ。ありがとう」
「その代わりちゃんと元に戻らせてくれよ」
「うん、分かってるって。また連絡するから。じゃあね」
そう言って結季が電話を切った。
何だか結季は智之とあまり話したくなさそうな印象を受けた。
とにかくしばらくは結季との連絡はやめておいた方がよさそうだと思った。

智之はバイトを探すために出掛けることにした。
(あっ、外に出るんだったら化粧くらいしたほうがいいよね。しばらくは結季ちゃんなんだし)
これまでは化粧もせずに過ごしてきたが、あと1〜2週間くらいは結季なんだし、結季の名誉のためにもスッピンで出歩くことは避けたほうがいいと考えたのだ。
智之は机の上に置かれている化粧品を手に取った。
(でも化粧なんてしたことがないし…。とりあえず口紅だけつけておこう)
初めての口紅はあまり気持ちのいいものではなかった。
変な油を唇に塗りつけたような感じだ。
それでも鏡を見ると何もしないよりはずっといいように思えた。
(バイトを見つけたら本屋で化粧の本でも買ってこよう)

智之は近くのスーパーでパート募集の張り紙を見つけた。
「あのぉ、表の張り紙を見たんですけど」
「ああ、それだったら事務室に行ってもらえるかな」
智之は指示された通り事務室に入った。
「いつから来てもらえるかな?」
「それじゃ働かせてもらえるんですか?」
「ああ。他と比べたら安い時給で来てくれる人なんてめったにいないから、いつも人手不足でね。こちらとしては今すぐにでも働いてほしいくらいだよ」
「それじゃ明日からよろしくお願いします」
「明日は9時から17時でお願いできるかな。その後は都合のいい時間に入ってもらえばいいから」
「分かりました」
「それから形だけなんだけど明日履歴書を出してもらえるかな」
「分かりました。明日持ってきます」

仕事が決まった智之は本屋に行き、化粧のやり方が書かれた雑誌を買って帰った。

智之はアパートに戻ると、化粧の特訓を始めた。
まずはリキッドタイプのファンデーションを指全体を使って伸ばしていった。
ファンデーションをつけてもシミが気になるところはコンシーラーを使った。
(こんなもんかな?)
よく分からないが、案外うまくいったような感じだ。

次は目だ。
目がうまくいけば少々の失敗は何とかなるだろうと思った。
智之はアイシャドーブラシで目尻から目頭へピンクのアイシャドーをつけた。
アイラインはうまく描けないが、とりあえず誤魔化して描いた。

そして睫毛だ。
ビューラーを使って睫毛をしっかりカールさせた。
そしてブラシを回転させながらマスカラをつけて睫毛を強調した。
(へぇ、これって面白いな)

次に眉毛に移った。
毛の流れにそってブラッシングして、形を崩すところをハサミで整えた。
そしてアイブロウペンで眉毛を描くのだが、どうも形が気にくわない。
全然うまくいった気がしなかった。

とりあえずチークに移った。
チークを頬にあてブラシを使ってぼかしていった。
あまり濃くするとおてもやんになってしまうと思ったので、薄くするようにした。

最後に唇だ。
まずはリップクリームをつけてから、リップブラシで唇の輪郭を塗った。
それから唇全体に口紅を塗り、リップグロスで艶と光沢を出した。

初めての化粧は1時間近くかかってしまった。
それでも出来は厚化粧の場末の水商売のおばさんのようだった。
(難しいなあ)
いったん化粧を全部落とし、再度の挑戦だ。
何度かの練習の結果、ようやくそれなりに見られるようになった。
(化粧って面倒だなあ)
それが智之の感想だった。
毎日こんなことをしている女性全員に頭が下がる思いだ。

次の日、智之は出勤の2時間前に起きた。
もちろん初めての女性としての出勤に備えるためだ。
智之はシャワーを浴びて頭をスッキリさせた。
バスタオルを胸のところに巻き、化粧水で水分を補って、乳液をつけた。
これだけでも結構面倒だった。

智之は服を着て、簡単な朝食を摂った。
そして歯を磨いて、鏡の前に座った。
(よしっ!)
智之は心の中で気合いを入れた。
そして昨日の練習を思い出しながら、化粧していった。
うまくできた気はしないが全く見られない出来でもなかったので、これでいいことにした。

「おはようございます」
智之はスーパーに入ると、店長に挨拶した。
店長はそこにいる人たちを集めた。
「今日からパートに入ってくれる前川さんだ」
「前川です。よろしくお願いします」
智之はみんなに向かって挨拶した。
「それじゃ前川さんは陳列の方をしてくれるかな。北井くん、指導してやってくれるか」
智之は商品の陳列担当になった。
商品の陳列には他に男性が二人いた。
一人は大学生の北井慎治で、もうひとりは高校生の小宮篤史だった。

レジ担当はレジの使い方やお金を扱う。
そんなことを考えれば、こっちの方が単純作業でいいとも言える。
ただ陳列は力仕事の面もあり、女性の身体にはやはり少しきつかった。
それにしっかり化粧していっても汗ですぐに崩れそうだ。
この仕事には化粧はしなくてもいいのかもしれない。
智之はそう思った。
初日で気疲れしたが、何とか無事にこなすことができた。
これだと何とかなりそうだ。

2日目から早速化粧がおざなりになった。
入れ替わったばかりのように口紅をつける程度だった。
それで十分のような気がした。

智之にとって働くことと言えばこれまで部屋で小説を書いていたくらいだった。
そんな生活に比べてスーパーで働くことは神経も身体もすごく疲れた。
働き始めて3日目ともなると朝起きることすらつらかった。
その結果、朝食をとる余裕すらなく出かける羽目になってしまった。
それでも髪を整え口紅はつけた。
(女って面倒臭えな)
智之は女としての生活の大変さが分かり始めてきた。

その日、在庫のチェックで智之たちは遅くまで働くことになってしまった。
3人がそれぞれの分担をチェックした。
(早く帰りたいのについてないな)
疲れた身体に鞭打って智之は仕事を片付けた。
智之が自分の担当分を終えたときすでに二人の姿はなかった。
(俺が最後か…)
智之が着換えて帰ろうとすると、目の前に篤史が立っていた。
「ねえ、結季ちゃん。どっかで俺とメシでも食おうよ」
篤史は智之の手を掴んだ。
「離してよ」
智之は篤史から離れようとするが、篤史は全く動じる様子はなかった。
「いいじゃん。結季ちゃんだって、たまには男が必要だろ?俺が相手になってやっから」
力では全く勝てそうもなかった。
智之は篤史に対して恐怖を感じた。
そのとき背後から声がした。
「やめとけよ」
慎治だった。
智之は篤史の手をふりほどき慎治の背後に隠れた。
「前川さんが嫌がってるじゃないか」
「バイト仲間が仲良くなろうとしてるだけじゃん」
慎治が篤史を睨みつけた。
「分かったよ」
篤史は何か言いたそうだったが、黙って出て行った。

「ありがとう」
「い…いや、別に…」
慎治は2〜3歩歩いたが、すぐに立ち止まった。
「もしかすると小宮が待ち伏せしてるかもしれないから、送るよ」
智之のほうには振り返らず、呟くように言った。
「うん、ありがとう」
智之が歩き出すと慎治が隣を歩いた。
智之のアパートまでの5分ほどの間、会話は全くなかった。
しかし、慎治がそばにいてくれるおかげで安心して帰ることができた。
智之は慎治に本当に感謝した。
「今日はありがとう。それじゃ、また明日ね」
慎治は「ああ」とだけ言って帰って行った。

次の日から智之は慎治と帰るようになった。
もちろん篤史を警戒してのことだった。

初めての定休日の前の日にも慎治と帰っていた。
「いつもありがとう」
いつものように礼を言って部屋に入ろうとした。
「…あの」
慎治が何かを言いたそうだった。
「何?どうしたの?」
「あの…明日…用事あるかな?」
「家の掃除とかしようと思ってたけど」
「…そうか……」
「何か?」
「できたら映画にでも行かない?」
「えっ?」
智之は一瞬何を言われたか分からなかった。
それがデートの誘いだと理解するのに少しだが時間を要した。
(いつも送ってもらってるし断ったら悪いよな)
智之は日頃のお礼のつもりで誘いに応じた。
「それじゃ明日」
慎治は珍しく弾んだ声で帰って行った。

その日の晩、久しぶりに結季から電話があった。
「どう?まだ生理は来ないの?」
「うん、まだ来ないよ」
「わたしの身体って結構規則的だからなあ。たぶんあと4〜5日ほどしたら来ると思うからちゃんと生理用品を準備しておいてね」
(そうか。俺ってもうすぐ生理になるんだ)
何とも言えない不安が心を覆った。

翌日智之は朝早く目が覚めた。
起きたときには昨夜結季からの電話で感じた生理への不安なんて忘れていた。
パートの疲れもどこかに消えていた。
智之の心にあるのは今日のデートへの期待感だけだった。
(どうしてこんなにワクワクしてるんだろう?お礼につき合うだけなのに)
智之はシャワーを浴びて念入りに身体を洗った。
汗臭い状態では会いたくないと考えていたのだ。
バスタオルを胸に巻き、肌の手入れをした。
そしてふと思いつき、ピンクのマニキュアとペディキュアをつけた。
智之がそんなものをつけたのはもちろん初めてだ。
なぜかそうしたいという欲求があったのだ。
マニキュアとペディキュアが乾くのを待って、下着を選んだ。
爪の色に合わせ、ピンクのショーツとブラジャーをつけた。
さらに、ピンクのキャミソールを着た。
服を決めるのに時間がかかった。
ほぼ全ての服をタンスから出したんだと思う。
智之は身体にあてては鏡でその服をチェックした。
結局、ピンクにこだわって、ピンクのカシュクールワンピースを選んだ。
スカートの部分がフレアになっていて、女性らしさを醸し出してくれる。
結季が持っている可愛らしさを強調してくれるように思えた。

メークは丁寧に、しかしナチュラルに見えるよう細心の注意を払ってメークした。
口紅はもちろんピンクだ。
(ちょっとピンクばかりでいやらしいかな)
智之は白のカーディガンを羽織った。
智之は鏡に向かってポーズを取った。
何となくお嬢様風に見える。
(結構バッチリ決まってるよね)
智之の気持ちは期待で弾んでいた。

気がつくと待ち合わせの時間が迫っていた。
「やばい。急がなきゃ」
智之は慣れないハイヒールで急いだ。

「ごめんなさい。待たせちゃった?」
すでに待ち合わせ場所に慎治は来ていた。
「いや、ついさっき来たばかりだから」
慎治は智之をじっと見ていた。
ハイヒールを履いていても智之の身長は160センチ程度だ。
慎治との慎重さは20センチほどある。
見下ろすように慎治から見られるのはすごく気恥ずかしい。
「わたしの顔に何かついてる?」
智之はおずおずと聞いた。
「あっ…いや…別に……。それじゃ行こうか」
そう言って慎治は歩き出した。
(せっかく綺麗にしてきたのに…。綺麗だねくらい言ってくれてもいいじゃない)
智之はそんな不満を心の中でぼやいた。
するとその思いが伝わったのだろうか。
慎治が足を止めた。
「今日の前川さんってすごく綺麗だよ」
慎治は向こうを向いたままそれだけ言うと再び足を速めた。
智之は慎治の言葉が嬉しかった。
「そんなに急がないで」
智之は楽しげに慎治の後を追った。

観に行った映画は「ベブンズ・ドア」だった。
映画が始まると慎治の手が智之のほうに伸びてきた。
しかし智之の手に触れると慌てて慎治が手をひっこめた。
(奥手なんだから)
そう思いながらも、智之はそんな慎治の姿が可愛いと思った。
今度は智之のほうから慎治の手を触れた。
するとようやく慎治が智之の手を握ってきた。
智之が慎治のほうを見ると、慎治は智之を見つめていた。
「スクリーンはあっちよ」
智之の言葉に「うん」と言いながらはにかんだような笑顔を浮かべる慎治に好感を覚えた。
智之は慎治のほうに身体を寄せて密着した。
映画の内容は退屈なものだったが、慎治と二人の時間は幸せな時間だった。

結局その日は手をつないだだけで、それ以上のことはなかった。
それでも綺麗だと言ってくれたこと、手をつないだことが嬉しく楽しい一日だったと思えた。

その日から何となく慎治を意識してしまうようになった。
(どうしたんだろう。俺は男だ。姿は女になっても男なんか好きになるはずはない)
そんな葛藤を感じながらも慎治のことを考えると苦しくて切ない。
パートのおばさんにも「綺麗になった」「恋してるんじゃない?」と言われる始末だ。
(しっかりしろ。俺は男なんだ)
そんなことを思っても気がつくと視線は慎治を追っていた。
それはまるで子宮から湧き上がるような欲求のようだった。
理性で抑えつけることはできなかった。

智之の本能は慎治の男としての身体を求めていた。
視線は乳房のない胸板、男性器があるはずの股間に向かった。
分厚い胸板に触れてみたいと考えてしまう。
股間にそっと手を伸ばしたいと考えてしまう。
慎治に抱かれていることを考えると子宮が熱くなる思いだった。

「コーヒーでも飲んでいかない?」
智之は送ってもらったときに思い切って慎治を誘った。
自分の欲求は気づかれないように注意しながら。
「いや、いいよ」
「いつも送ってもらっているから。たまにはゆっくりしていって」
「それじゃ」
慎治は智之の招きに応じた。
コーヒーを飲みながら慎治の大学のことやスーパーのことなんかの他愛もないを話した。
話をするばかりで慎治は何もしようとしない。
時計は10時に近づいていた。
「それじゃもう遅いから、帰るよ」
慎治が立ち上がった。
何もしてくれない慎治に智之は少し怒っていた。
(そんなにわたし、魅力ないの?)
そんなことを考えている智之は完全に女だった。
知らないうちに涙が一粒こぼれた。
自分でもどうしてこういう感情になるのか分からなかった。
智之の冷静な部分では自分の感情をコントロールできずに戸惑っていた。
智之が靴を履いていると慎治が何かを呟いた。
「えっ?何か言った?」
智之が問いかけると慎治は思い詰めたような顔をしている。
「前川さん」
突然智之は慎治に抱きしめられた。
智之は驚いた。
それ以上に嬉しかった。
子宮がキュンと疼いたように感じた。
智之も慎治の背中に腕を回した。
「北井くん…」
呟いた智之の唇を慎治の唇がぎこちなく覆った。
智之はそのぎこちなさが新鮮で嬉しかった。
荒々しく重ねた唇が離れたときに慎治が「ごめん」と言った。
「謝らないで。謝られたらわたしはどうすればいいの?わたしのことを好きなら抱いて」
智之は自分の感情を吐露した。
すると智之の目から大量の涙が溢れてきた。
智之は涙が溢れてきてどうしようもなかった。
感情が昂ぶると泣くことでしか表現できない。
智之は自分の感情が自分のものでなくなったような感覚を覚えた。
「いいの?」
「何度も同じことを言わせないで。私だって恥ずかしいんだから」
智之は消え入るような声で答えた。
慎治が智之の身体をゆっくりと横たえた。
慎治が智之の身体に覆い被さる。
そして唇が重なり合った。
慎治の手が服の上から乳房をやや乱暴にまさぐる。
性体験の未熟さを感じるが、それが智之には嬉しかった。

慎治が不器用に智之の服を脱がそうとした。
智之は身体をよじりながら慎治が脱がせやすいようにした。
ついにブラジャーとショーツだけになった。
床に敷いた絨毯の感触が背中に伝わってくる。
「北井くんも脱いで」
慎治は智之の言葉のまま立ち上がって自分の服を脱いで、ブリーフだけになった。
勃起したペニスがブリーフを持ち上げていた。
「来て」
智之は横になったまま両手を広げて、立っている慎治を促した。
慎治は再び智之に覆い被さった。
股間に慎治のペニスが当たる。
すると子宮がキュンと収縮したように感じた。

まるで自分の手で智之の乳房を守るかのように慎治がブラジャーの上に手を置いた。
そしてゆっくりと揉んだ。
慎治の手が背中に回りブラのフォックを外そうとした。
なかなかうまくいかないようだ。
智之にはそんな様子も可愛く思えた。
ついにフォックが外れて慎治の手が再び乳房のところにきた。
ブラジャーの中に手を差し入れ、直接乳首に触れた。
「…あんっ……」
智之の身体がビクッと動いた。
「舐めて」
慎治はブラジャーをずらし、乳房に顔を近づけた。
そして乳首を口に含み、吸ったり舌で転がすようにした。
「あああ……いい………」
智之は慎治の背中に腕を回し強く抱きしめた。
慎治は別の手で乳房を揉みながら乳首以外のところも舐めた。
腋を舐められたときにくすぐったいような快感を感じながらも汗臭くないか心配だった。
背中を舐められることがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
手の指の間、手のひら、へそ、全身が性感帯だった。
智之は間断なく喘いでいた。
慎治がショーツの中に滑り込んできたとき、智之は処女のように脚を閉じ、身を硬くした。
慎治の指が強引に智之の股間の秘部に割って入ってきた。
「あああああああ……」
智之の声がさらに大きくなった。
慎治の指が乱暴に最も敏感なところを攻撃してくる。
痛くて身を捩ったが、慎治には感じているように映ったのだろう。
執拗にその部分に攻撃してきた。
やがて痛みよりも快感が強くなってきた。
快感で何が何だか分からなくなってきた。
気がつくと慎治の指が膣に入っていた。
ショーツもいつの間にか脱がされたようだ。
指が出したり入れたりしていたが、さっきの快感に比べるとそれほど強くない。
智之はペニスが欲しかった。
「ねえ早く来て」
智之のおねだりに慎治はすぐに応えてくれた。
慎治のペニスがゆっくりと入ってきた。
智之はそれだけでいきそうになった。
好きな異性だと感じ方がこんなに違うのか。
智之は無意識に慎治のペニスを締めつけていた。
慎治は単調に腰を振った。

そのとき智之は子宮に違和感を覚えた。
そして何かが流れ出すのを感じた。
(生理だ!)
昇りつめていた気持ちが一気に冷めた。
しかし慎治は気がつかず抽送を続けていた。
『クチュクチュクチュクチュクチュ…』
淫らな音が部屋に響いている。
慎治は気持ち良さそうに腰を動かしているが、智之はすっかり冷めていた。
(早く終わって)
下腹部の鈍い痛みに耐えながら智之は祈るように慎治の動きに応えた。

ようやく慎治が射精した。
(やっと終わった…)
そして身体を離すと慎治のペニスに血がついていた。
「初めてだったんだ」
嬉しそうにしている慎治を見ていると本当のことは言えずに曖昧に笑うしかなかった。

さらに子宮から流れ出すものを感じた。
「絨毯に血がついちゃう」
智之は慌てて身体を起こした。
すでに絨毯に血がついていた。
「北井くんはシャワーを浴びてきて。わたしは絨毯を綺麗にするから」
慎治を浴室に入れると、智之はタンスから生理用ショーツを出した。
そして生理用ショーツにナプキンをつけ履いた。
さらにブラジャーをつけ、Tシャツを着た。
食器洗剤を大量につけ、雑巾で絨毯を叩くようにすると、何とか目立たない程度に血を落とすことができた。
「前川さん、タオルある?」
慎治が全裸で身体が濡れたままで出てきた。
「ごめんなさい。今出すわ」
智之はバスタオルを出して慎治に渡した。
慎治は簡単に身体を拭いて、ペニスをブラブラさせたまま智之の前に立った。
「もう1回いい?」
「今日はもうダメ!明日も仕事だし」
「でも前川さんの格好が可愛いから」
慎治の視線が下半身に向かっている。
智之は下がショーツだけだったことを思い出した。
「もう、あんまり見ないでよ」
慎治は慌ててスカートをつけた。
慎治はまだ欲求不満みたいだったが、智之がスカートを履いたのを見て慎治も仕方なく服を着た。
「それじゃお休みなさい。また明日ね」
「うん」
慎治は智之にキスをして帰って行った。

智之は服を脱いでシャワーを浴びた。
智之の身体から慎治の放った精液と生理の血が流れ出した。
(自分から男に抱かれたんだよな)
冷静になると何とも不思議な感じがしたが、不思議と不快感はなかった。
不快感どころか何となく幸福感があった。
生理による下腹部のだるさと重たさも、自分が女性であることを意識できて、幸福感に拍車をかけるようにさえ感じた。

その日、結季から電話があった。
まるで智之の行動を把握しているかのようだった。
「そろそろ生理が始まるわよ、覚悟してね」
「もう始まったわ」
「そうなの。いつ?」
「今日。ついさっき」
「ふ〜ん。ついにお義兄さんも女の子になっちゃったんだ。わたしの場合4日くらいで終わるから、5日後に元に戻ることにしない?」
「うん、分かったわ。それじゃ5日後に会いに行くわ」

元の身体に戻らないといけない。
このまま結季の身体でいたいと思う自分がいた。
智之はそんな自分を否定しようとした。
ようやく戻れるんだと思おうとした。
そうすればこんなおかしな精神状態から抜け出せると思おうとした。

次の日も慎治は智之を送って、部屋に上がりこんだ。
「今日もいい?」
「ごめんなさい。生理が始まっちゃったの」
「そうなんだ…。なら無理だね」
そう言った慎治の顔が寂しげだった。
そんな顔に智之は母性をくすぐられたように感じた。
「ねぇ、フェラやってあげようか」
思わずそう言ってしまった。
智之は自分が言った言葉が信じられなかった。
(何を言ってるんだ、俺は。もうすぐ元に戻るんだからこれ以上女にならないようにしなければ)
智之はそう思った。
「えっ、いいよ、そんなの」
慎治の答えにホッとする反面、男の性欲を知る頭が「それは嘘だ」と言っていた。
「いいのよ、やってあげる」
自分の中の冷静な部分が静止しようとするが、智之は何かに取り憑かれたかのように慎治の前にひざまずいた。
そしてズボンのチャックを下ろし、ブリーフの間からペニスを取り出した。
「ふふふ、もうこんなになってる」
慎治のペニスはすでに勃起していた。
智之は自分に対してこんなに興奮してくれていることに喜びを感じた。
智之の冷静な部分はすでに消え失せていた。
智之は右手でペニスを持ち、先端を舐めた。
「うっ」
慎治が短い呻き声を発した。
慎治が感じてくれるのが嬉しくて、智之はペニスの先端を舐めた。
そして慎治のペニスを口に入れた。
口の中で舌をペニスに絡めながら、頭を前後させた。
同時にペニスの根元を指でしごいた。
智之の口に塩辛いものを感じたかと思うと、口の中に苦いものが広がった。
慎治が精液を放ったのだ。
智之は意外に早い射精に対応できず喉に詰まらせ咳き込んだ。
口からは慎治の放った精液がこぼれた。
「ごめん、あんまり気持ち良くって」
「いいのよ」
智之は口の中に残っている精液を飲み込んだ。
あまり美味しいものではなかった。
そして、口の周りをティシュで拭いた。

「ありがとう」
慎治は智之にキスした。
(精液がついてるのに)
智之のその考えは慎治に通じたようだ。
「だって自分で出したものだろ?前川さんだって飲み込んでくれたんだもん。大丈夫さ」
智之はそんな慎治の言葉が嬉しかった。
でも相変わらず「前川さん」と呼ばれるのは寂しかった。
智之は慎治の胸に顔を埋めて小さな声で言った。
「ねえ、名前で呼んで」
「うん、分かった。それじゃお互い名前で呼ぼうか。結季」
智之は結季と呼ばれることが照れ臭く、くすぐったく、嬉しかった。
「慎治さん」
智之はキャッと小さな声を出し慎治の胸に顔をつけた。
慎治はそんな智之の姿が愛おしく思わずキスをした。
今度は長い長いキスだった。

智之の生理は結季の言葉通り4日目でほとんど終わったようだ。
智之はもう一度慎治に抱いてほしかった。
しかし、智之は明日智之自身の身体に戻ることになっている。
もう二度と結季として慎治とは会うことはできない。
ましてや慎治に抱かれることはないのだ。
慎治は胸が張り裂けるくらいの悲しさを感じた。
結季としての最後の夜は悲しくて悲しくてどうしようもなかった。
ほとんど眠れなかった。

次の日の朝まで、このままの状態でいたいと頼もうかどうかずっと迷っていた。
今の自分の感情は結季の身体になっているからで、元に戻れば何もなかったように思えるんじゃないかと思う反面、このまま結季として慎治とともに過ごしたいという強い思いが消えなかったのだ。
(とにかく結季に会おう)
そう思って元の自分の部屋に向かった。

「いらっしゃい。…あれ、随分と綺麗になったじゃないか」
ほとんど眠れなかったので、目が赤く少しクマができていた。
だからそんな状態を誤魔化すように化粧を明るめにしてきたのだ。
元女性の結季はそんなことすぐに見抜くと思っていた。
しかし気がついている様子はない。
鈍感な男のようだ。
確かに目の前にいる元の自分は中に結季の精神が入っているとは思えないほど男っぽかった。
「それじゃ早速戻る儀式をしようか。男の身体に入ってるとどんどん男っぽくなってしまうからさ」
智之のそんな気持ちもおかまいなしに肩に手を回し、結季は寝室に行こうとした。
自分と同じように結季も身体による気持ちの変化が起こっているらしい。
やっぱり元に戻るのがいいんだと智之は考えた。
「うん、すぐに戻りましょう」

智之と結季は全裸になってベッドの上で抱き合った。
枕元にはあのコンドームが何個か置かれていた。

結季が慣れたように智之の身体を愛撫した。
すぐに智之の身体の準備が整った。
智之は慎治以外の男性に抱かれることに抵抗感を感じていた。
(我慢しなきゃ。本来の姿に戻るんだから)
そう自分に言い聞かせてジッと我慢していた。

結季がコンドームをつけた。
すぐにコンドームは見えなくなった。
確かにあのコンドームのようだ。

結季のペニスが入ってきた。
気持ちの嫌悪感とは裏腹に智之の身体は反応していた。
「お義兄さん、ぼくになってる間にだれかとセックスしただろ?元の自分の身体なんだからすぐに分かるさ」
結季が鎌を掛けていることはすぐに分かった。
しかし智之はうまく嘘がつけなかった。
「そんなこと…」
「まあいいさ。ぼくの姉貴はもちろん姉貴以外ともセックスしたしな。お義兄さんって結構もてるんだぜ」
智之は言い返そうとしたが、結季が抽送を続けるため、喘ぎ声が出るばかりでうまく言葉を発せなかった。

「それじゃ次はお義兄さんが上になってくれよ」
結季は智之から離れ仰向けに寝た。
そしてもう一度あのコンドームをつけた。
「どうして2つもつけるの?」
「さっき動かしたときに外れたような気がしたんで念のためさ」
智之はそうかと思っただけで、それほど2つ目のコンドームをつけたことを気にしなかった。
智之は結季の腰の辺りにまたがり、ペニスを膣口に当てゆっくり腰を落とした。
「あああああ………」
結季は智之の腰を持ち、智之の身体を上下に揺すった。
智之は女性上位の体勢は初めてだった。
子宮深くペニスが入ってくるような感じで、正常位とは違う快感だ。
結季は結合したまま上半身を起こした。
智之はなおも腰を動かしながら倒れないように手を後方についた。
「どう、お義兄さん。気持ちいいだろ?」
智之は感じすぎて声が出なかった。
だから結季の言葉に智之は何度も肯いた。
「ぼくの身体、気に入ってくれたんだ。それなら入れ替わったままでいてもいいぜ?」
智之は何度も首を横に振った。
「ぼくはお義兄さんのままでいてもいいんだけどなあ」
結季は手を伸ばし、智之の乳房に触れた。
「乳首がとても硬くなってるぞ。気持ちいいんだろ?もっと大きな声を出せよ」
結季は智之の乳首を人差し指で押さえるようにして乳房を揉んだ。
「ああああああ……」
智之は絶叫のような声をあげた。
乳房と女性器からの快感でおかしくなりそうだった。

結季は智之を後ろに倒し、挿入した状態のままで膝で立った。
結季が智之の腰を持ち上げるような体勢になった。
智之のお尻が浮き、智之は肩と腕が布団についている状態だった。
不安定な状態だったが、それが密着して部分を余計に意識させた。
結季の抽送が続いた。
智之は快感だけに身を任せた。
「……すご…い……」
何か大きな快感が身体で産まれそうな感じがした。

結季の腰の動きが速くなった。
それは射精が近いことを示していた。
(ああ、もうすぐ戻ってしまうんだ)
結季が抽送を続けている。
もうすぐ頂点を迎えそうだ。
戻るときが近づいていた。
「い…いやぁ……戻りたくない……」
智之が叫んだ。
その言葉と同時に結季が智之の中ではじけた。
智之は結季が放った熱いものを身体の中に感じていた。
まるでまだ女の身体のままのようだ。
(どうして?)
智之は不思議に思いながら快感の波に飲み込まれていった。

智之がゆっくり目を開けた。
そこには元の智之の身体があった。
「元に戻らなかったな」
結季はニヤッと笑っていった。
「きっとお互い入れ替わったほうがよかったんだ。だから神様がそのままにしたんだろうな」
結季のそんな言葉が真実だとは思えなかった。
もしかしたら、慎治とセックスしたせいなのかもしれない。
でも、元に戻らなかったことに智之自身が喜んでいた。
「もう一回するの?」
智之は結季に聞いた。
「そんなに戻りたいのか、お義兄さんは?」
「ううん」
「ならこのままでいいんじゃないかな。ぼくもお義兄さんの身体を気に入ってるし」
「うん、そうね」
智之は結季のままでいれることが嬉しかった。
やっぱり自分には女性の身体の合っているんだろうと思った。



「おかえり」
結華が会社から帰ってきた。
「でどうなの?」
結華が智之の姿をしている人物に聞いた。
「もちろん結季のままよ」
智之の姿の結季は言った。
「お義兄さんったらあのコンドームを使っても戻れなかったから不思議に思ってたみたいよ。でもこのまま入れ替わったままでいようって言ったらすごく嬉しそうな顔してたわ。それにね…」
結季はわざと声を落とした。
「わたしが無理に男っぽく振舞ったら、それに安心したのかお義兄さんったらすっかり女の子してるの。おかしくて笑いそうになっちゃった」
「あの人はMのところがあるから女のほうがいいんじゃない」
「そしてわたしがSだからちょうどいいのよね」
「結季のほうがセックスもうまいしね」

実は浮気を目撃して結華が激怒していたとき、結季は結華の機嫌を直すためにあのコンドームを使ったのだ。
あの日……

結季が戻ると予想通り結華は怒りながらも部屋の中に入れてくれた。
「智之ったら。わたしを裏切るようなことをしてよくおめおめと戻ってきたわね」
そんな嫌みは結季の想定内だった。
「そんなことはさておき仲直りしようよ」
結季は結華にキスをして、耳たぶに優しく触れた。
「ん……」
「ほら、すぐに感じるんだから。ベッドに行こう」
そしてあのコンドームをつけて結華と交わった結果、結季は結華に、結華は智之になった。
「どういうこと?」
目の前に自分がいることに結華が驚いて叫んだ。
「見たままよ。お姉ちゃんがお義兄さんになったの」
「えっ?」
その言葉に結華は目の前の身体に入っているのが妹の結季らしいということを悟った。
「……結季なの?」
「そうよ。キスの仕方で分かると思ったんだけどなあ」
結華になった結季は悪戯っぽく笑った。
「それじゃ今結季の姿になってるのが智之なの?」
「そうよ。お姉ちゃんが出張に行っている間に入れ替わったの。だってわたし、お姉ちゃんとセックスしたかったんだもん。目的を達成したから戻るためにもう一回セックスしようとしたの。ちょうどそんなタイミングでお姉ちゃんに見つかったってわけ」
「じゃ、どうしてまだ入れ替わったままなの?」
「一回入れ替わると生理になるまで効果が出ないんだって」
「だから結季の身体が生理になるまで智之が結季の姿になってるってこと?」
「そう。だからお姉ちゃんの身体が生理になるまでわたしたちも入れ替わったままってわけ」
「へえ。すごいじゃない。わたしが男になれるなんて何か楽しそう」
そして智之になった結華は元自分の身体とセックスした。
しかしレズの状態で受身だった結華には男としてセックスすることがすぐに苦痛になった。
幸いにも結華の身体がすぐに生理になったので、結華は結華自身に戻って、結季が再び智之になったのだった。
やはりレズのときに男役をしている結季が智之になったほうがこの二人の相性はよかった。
結華はこのまま結季が智之でいてもらうためにあのコンドームについて調べた。
そして生理が終わって初めて使用したコンドームだけが効果を現すことを知った。
コンドームをつけて、挿入して、射精したら入れ替わるのだ。
ならば、コンドームをつけて、挿入した後に、別のコンドームをつけて、そこで射精すれば2回目のコンドームで射精したことになり、効果がでないかもしれない。
その考えを結季に伝え、実行してもらったのだ。
その結果、無事に結季と智之は元に戻らなかったのだ。

「結季。ずっと智之でいてね」
「お義兄さんはこのままでいたいって言ってたよ」
「結季は?」
「わたしもこのままでもいいかな?お姉ちゃんとずっと愛し合えるし」
二人は抱き合い、そして交わった。



結季のままでいられることになった智之は慎治に電話した。
「今から会いたいの」
智之はこれからの結季としての明るい人生が開かれるようで期待に胸を弾ませていた。

慎治がやってくると生理が終わったことを告げた。
「それじゃできるんだね?」
慎治は嬉しそうに聞いた。
智之も嬉しそうに頷いた。
慎治のセックスは結季と比べ物にならないくらい稚拙だった。
しかし智之は結季に抱かれるよりも感じるような気がした。
愛してることが感じ方に大きな影響を及ぼすことを改めて知った。

その日から毎日のように仕事の帰りに結季の部屋でセックスするようになった。
もちろん避妊に注意してコンドームをつけてもらっていた。
そしていつの間にか慎治は智之の部屋で生活するようになった。

あるとき、智之が慎治に抱かれるときにあのコンドームが現れた。
「どうしたの、それ?」
「ああ、これ?何か面白い効果があるらしいんだ。友達から1箱買ったんだ」
結季とのセックスで元に戻らなかった日からまだ生理が来ていない。
生理が来れば効果があるかもしれないけど、今はまだ現れないはずだ。
そう考えて智之は慎治とセックスした。

「あれっ?何も起こらない…」
慎治が驚いていた。
智之は内心ホッとしていた。
やはり結季のままでいたかったのだ。

「何だ、こんなもの」
慎治がまだ残っているコンドームの箱をゴミ箱に捨てた。
「今ので何かが起こるの?」
智之がわざとらしく聞いた。
「身体が入れ替わるって話だったんで、面白そうだったから買ったんだけどな。やっぱり嘘だった」
「北井くんって女の子になりたいの?」
「いや、別にそんな趣味はないんだけどさ。女の方がセックスは感じるっていうし、少しの間ならなってみてもいいかなって思ってさ」
「ふうん。でも女って生理があったり大変なのよ」
「だからずっとなりたいってわけじゃないよ、ちょっとの間だけだよ。もういいじゃん」
そう言って慎治が布団を被った。
これ以上、この話をしたくないようだ。

やがて慎治が寝息を立て始めた。
智之はそっと起き出して、ゴミ箱に捨てられたコンドームを自分のタンスに隠した。
今回は効き目がなかったが、生理があれば効き目が現れるはずだ。
男に戻りたいとは思わないが、何かの保険になるかもしれないと考えたのだ。

慎治と同棲生活を初めて3回ほど生理があったが、その後2ヶ月ほど生理がない。
案の定、智之のお腹に子供ができていた。
慎治がそれを機に結婚しようと言ってくれた。
婚姻届を提出し、智之は北井結季になった。

それにしても悪阻がひどかった。
悪阻の苦しみから逃れたい一心で智之はあのコンドームを使うことにした。

「ねえ、久しぶりに抱いて」
智之は慎治を求めた。
「悪阻がひどいからやめておいたほうがいいんじゃないか」
妊娠が分かって以来、慎治はほとんど智之を抱こうとしなかった。
「いいの。きっとセックスすれば元気になれるから」
慎治は半ば義務のように智之を抱いた。
いよいよ慎治が入れようとするタイミングで慎治を制止した。
「お腹の子供に影響があるといけないからコンドームして」
智之は自分の手で慎治のペニスにあのコンドームをしてやった。
慎治のペニスが入ってきた。
慎治の腰の動きに合わせて、智之は腰を振った。
そして慎治がイッタ瞬間に意識がなくなった。


気がつくと、智之の思惑は成功していた。
智之が慎治に、慎治が結季になっていたのだ。
「やっぱりあのコンドームは効果があったのか。捨てたはずなのにどうして」
「コンドームだってタダじゃないんだから捨てるのは勿体ないと思って置いておいたの。本当に入れ替わるなんて思わなかったわ」
智之はわざとらしく言った。
「僕が結季になるなんて…」
「わたしの代わりに元気な赤ちゃん産んでね」
「そんな…。元に戻ろうよ」
「だって慎治さんは女の子になりたかったんでしょ?わたしみたいに可愛い女の子になれたんだからいいじゃない」
「そんなの困るよ。すぐに戻ろうよ」
「それじゃ慎治さんは元の自分に抱かれる覚悟はあるの?」
慎治は一瞬言葉に詰まったが、渋々という感じで頷いた。
智之は生理が来るまでは戻れないことが分かっていたが、知らない振りをして慎治を抱くことにした。

久しぶりの男の立場でのセックスなので智之は戸惑った。
股間に大きくなっているペニスが邪魔だとさえ思えてしまう。
でもそれが男性の身体に戸惑っている女のように見えた。

智之は慎治の乳房を中心にキスをした。
智之の腕の中で結季になった慎治は快楽の声をあげていた。
その様子を見ていると「この喜びを感じるのは本当はわたしなのに」という妙な嫉妬を感じてしまう。

智之はあのコンドームをつけた。
そして結合しようと慎治の脚の間に下半身を滑り込ませようとした。
しかし、慎治は異常に身体を硬くして脚もしっかりと閉じていた。
「慎治さん、身体の力を抜いて」
智之は慎治に身体の力を抜くように言った。
それでも脚が開かないのでクリトリスに優しく触れた。
クリトリスを触られると慎治の脚が開いた。
智之は慎治の両脚の間に下半身を入れ、慎治の膣口にペニスを当てた。
そして、一気に慎治の身体にペニスを挿入した。
「ああああああ……」
慎治が大きな声を出した。
智之も久しぶりに女性器に包まれた感覚を感じていた。
久しぶりで新鮮だった。
(やっぱり男のほうがいいかも)
自分の腰の動きで慎治が喘ぎ声が変わってくる。
智之は久しぶりの男性としての抽送を楽しんだ。
ついに慎治の中で放出したとき、慎治は身体を仰け反らせて痙攣していた。
イッたようだ。

「どうだった?」
慎治は肩で息をしていた。
「すごい……気持ちよかった…」
なおも快感にひたっているようだった。
やがて快感がひいてくると自分がまだ結季のままであることに気づいた。
「戻れないんだ…」

結季の身体に入った慎治はしばらくの間はひどい悪阻に悩まされていた。
しかし、そんなものには終わりは来る。
やがて、安定期になると、産まれてくる母として生きる覚悟を決めたようだ。
慎治は自分のお腹にいる赤ちゃんを愛おしむようになったのだ。
仕草も言葉遣いも少しずつ確実に女らしくなっていった。

智之は入れ替わってすぐに自分の考えのなさに気づかされた。
元に戻ろうにも今の"結季"の身体に生理は来ないのだ。
したがって、元に戻ることはできないのだ。
母親になる喜びを楽しみにしていたのに………。
大失敗だった。
幸い慎治は結季の身体に馴染み、積極的に母親になろうとしてくれている。
出産後に元に戻ればいい。
そして二人目は自分が産めばいい。
そう思うようにした。

まもなく赤ちゃんが産まれてくる。
結季になった慎治は大きなお腹を抱えて本当に嬉しそうだ。
「なあ、不安はないのか?」
「どうして?女性はみんな子供を産んで強くなるのよ。そりゃ少しは不安だけど、それ以上に嬉しくって」
慎治はずっと女性だったように見えるほどだった。
「ねえ、一人っ子だと可哀想だから、すぐに弟か妹か欲しいね」
そんな慎治の言葉に智之は苦笑していた。
(慎治の奴、すっかり結季の身体に馴染んでるな)
智之の手元にはあのコンドームがまだいくつか残っていた。
(いざとなればいつでも女性になれるし、まあいいか)
智之はしばらくは北井慎治として産まれてくる子の良き"父親"を演じようと思った。

子供が産まれた。
女の子だった。
結衣と名づけられた女の子は病気らしい病気もせず1歳の誕生日を迎えた。
母親となった慎治は、結衣の母親のままでいたいと言い張った。
出産の痛みを通じて、子供への母性が強まったせいかもしれない。
二人目は自分が産みたいと思っていた智之にとっては出鼻を挫かれた形だ。
でも仕方なくそれを受け入れた。



慎治は出産後セックスの許可が出ると、すぐに二人目の子作りに励んだ。
そしてすぐに二人目を宿すことができた。
慎治は結季になれて本当に幸せだと思った。

それから数日経ったある日のことだった。

結季が見知らぬ女子高生を連れてきた。
というより女子高生が結季を連れてきたように見えた。
「何よ、ここ?」
慎治がとぼけたことを言っている。
「今日からここがあなたの家よ。あなたの名前は北井慎治。これからはわたしがあなたの代わりに水渓亜紀子になってあげるから後のことは気にしなくていいわ」
そして結季に向かって一言言った。
「やっぱり私は男より女のほうがいいわ。だからこの子の身体、もらっちゃった。それじゃね」
それだけ言って、女子高生は足取りも軽く出て行った。
慎治は呆然と座り込んでいる。
「慎治。どうしたの?」
結季の姿の慎治は目の前の"慎治"に声をかけた。
「あたしは"慎治"じゃないわ。あたしが水渓亜紀子よ。出会い系で知り合ったおじさんの相手をしてあげたら、気がついたらあたしがそのおじさんの身体になっていたのよ。きっとあたしの身体はあのおじさんに奪われちゃったんだわ。あたし、どうしたらいいの?」
外見こそ慎治の姿をしているが、そこにいるのは確かに泣きじゃくる女子高生だった。



それから5年ほど後のことだった。
今では結季はすっかり智之になりきっていた。
その日は天気もよく、結華と結季とで散歩をしていた。
すると、ある公園で幼稚園くらいの女の子と小さな男の子を連れた家族を見かけた。
その母親の顔を見て驚いた。
"結季"だったのだ。
「お久しぶり。元気してた?」
結華が懐かしさの余り、声をかけたのだ。
しかし、"結季"はキョトンとしていた。
「あらっ、忘れちゃったの?結華よ、結華。こっちは、今ではすっかりわたしの旦那様になった結季よ」
やはり反応が返ってこない。
「あのぉ…、どなたかと間違っておられるようですけど」
"結季"がそう言った。
「えっと…あなたは前川結季さんでしょ?」
結華は仕方なくそう尋ねてみた。
「ええ、今はこの人と結婚して北井結季ですけど」
隣の男性の腕をとって、そう言った。
「失礼ですけど、結季さんはずっと結季さんですか?」
結華はズバリ質問した。
もし外れてたら変な奴だと思われるが仕方ない。
「……そういうことを聞かれるということはご存知なんですね、あの入れ替われるコンドームのことを」
やはり結華の勘は当たっていたようだ。
「確かに、私は7年前まで北井慎治という男性でした。つまり今の主人の身体は、もともとは私の身体だったんです。でも、あのコンドームのせいで、妻の結季と身体が入れ替わってしまったんです。私は自分のお腹を痛めて産んだ結衣を、自分の手で育てたかったので、妻の姿のままでいさせてもらいました」
そう言うと"結季"は子供たちを手招きした。
「結衣ちゃん、修ちゃん、ご挨拶なさい」
「こんにちは」
女の子は元気よくそれだけ言うと、また遊びに戻った。
男の子は照れるだけで、何も言わず結衣の後を追いかけて行った。
「妻は私のわがままを受け入れてくれて、自分はいい父親になろうとしてくれたようです。でも結局男になったことが耐えられなかったらしく、女子高生の身体を奪ってどこかに行ってしまいました。今の主人の身体に入っているのはそのときの女子高生です。彼女は今では立派にわたしの夫として家族を支えてくれてます」
「それじゃ今本当の奥さんの心はどこに…」
「分かりません。でもわたしは今のままで幸せだから、もうあの人の考えないようにしてるんです」
「そんな………」
結華にとって予想外のことだった。
それは結季にとっても同じだったのだろう。
ふたりとも言うべき言葉を失ってしまった。

智之の精神はどこに行ってしまったんだろう。
今となっては誰にも分からなかった。

そのとき二人を見て結衣が微笑んでいることに気づいた。
そんな結衣を見ていると、妙な考えが浮かんできた。
結季も同じ考えが浮かんだようだ。
同じ言葉が二人の口から飛び出した。
「まさか…ね」


《完》

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