王様ゲーム



ここは都内の居酒屋のある個室。
男女それぞれ5人ずつで飲み会が開かれていた。
単なる同好会の飲み会だ。
一応テニス同好会という看板を掲げているが、別にテニスにこだわっているわけではない。
とにかく皆で集まって遊ぶということに主眼が置かれた集まりだった。

三沢敦史はその同好会で部長をしていた。
部長と言えば聞こえはいいが、単なる使いっ走りだった。
皆のリクエストを聞いて、次のレクリエーションのための準備に奔走する。
人に頼まれるとイヤと言えない性格につけ込まれて部長に祭り上げられたのだ。
だから実際のテニスや飲み会では隅のほうでおとなしくしていることが多かった。

「王様ゲーム、やろうぜ」
言い出したのは遊びのときにはいつも主導権を握りたがる岡村忠志だ。
ある程度腹が満たされ、アルコールの酔いが回りだしたタイミングを見計らったかのようだ。
普段はいい加減だが、こういう勘所を押さえるのは誰よりもうまかった。
「おお、やろうぜ」
「ええ、またぁ?」
様々な声が飛び交うが、結局全員がノリ良く盛り上がった。

「それじゃ、このクジをひいて」
岡村が割り箸で作ったクジを皆の前に差し出した。
いつも持ち歩いているかのように急な宴会でもこのクジは彼の手元にあるのだ。
皆がキャッキャッと笑いながらクジをひいた。
「みんな、ひいたか?」
岡村は皆の顔を覗き込むように確認した。
「よし、それじゃ1回目、行くぞ」
そこで全員を見渡しながら、「せえーの!」と声をかけた。
「王様、だぁーれだ?」
全員が声を出した。
それぞれがそれぞれの顔を見た。
少し間を置いて「私」と手を上げた者がいた。
男子から最も人気のある水崎志津枝だった。
「王様、命令をお願いします」
岡村が仰々しく言った。
「どうしようかな…」
志津枝が悪戯っぽく舌なめずりした。
「それじゃあね、3番が私と入れ替わるっていうのはどう?」
志津枝が敦史の顔を見て言った。
「入れ替わるってどういうこと?」
誰かがそう呟いているのが聞こえた。
「よし、それじゃいくぞ」
岡村の呼び掛けに全員が声を揃えて言った。
「3番だぁーれだ?」
敦史がおずおずと手を挙げた。
「それじゃ三沢くん、立って」
志津枝の"命令"に敦史はおとなしくしたがった。
志津枝と敦史は対峙する形になった。
「でもどうやって入れ替わるんだ?」
敦史が志津枝に聞いた。
「『12の3』って言うから、声を揃えて『チェンジ!』って言うの」
「『チェンジ』か?」
「そう」
敦史の質問に志津枝が頷いた。
「それじゃ、いい?1…2…の3!」
「「チェンジ!!」」
志津枝と敦史が声を揃えて叫んだ。

目の前の景色が変わった。
さっきまで志津枝が立っていた場所に敦史と同じ顔をした人間が立っていた。
「すげぇ」
皆が一斉に喜んだ。
「どうやったんだ?」
「イリュージョンじゃん」
「一瞬で二人が入れ替わるなんて」
拍手喝采だ。
しかし敦史には何が起こっているのかまだ理解できないでいた。

「すごいよ、志津枝」
「水崎、どうやったんだ?」
皆の目が敦史に集中した。
(どうして僕を見てるんだ?)
目の前の敦史の顔をした男の顔を見た。
その男がニコッと笑った。
そのとき脳裏に奇妙な考えが浮かんだ。
(まさか…ね……)
敦史は自分の手を見た。
白くて細い指だ。
爪にはネールアートが施されている。
明らかに自分の指ではない。
右手の薬指には指輪がはめられていた。
(まさか!)
敦史は自分の胸に手を置いた。
明らかに膨らみがあった。
再び目の前の男を見た。
男は口の前に人差し指を立てていた。
何となく状況が分かったような気がした。

「水崎、自分の胸を掴んで何してんだ?」
「あ…いや……別に……」
敦史は返答にしどろもどろになってしまった。
こんなときどう言えばいいんだ。
そんなとき目の前の敦史の姿をした男(おそらく中身は志津枝だ)が言った。
「これからはまず入れ替わって何かしてもらうっていうのはどうかな?」
「よし、そういうことにしよう」
何も知らない岡村が調子に乗って同意した。

「よーし、次やるぞ」
岡村が全員からクジを回収して、再度クジをひかせた。
敦史はひいたクジを見た。
そこには『王様』と書かれていた。
「よし、それじゃ」
との呼びかけに全員で「王様、だぁーれだ?」と声を合わせた。
敦史は小さく手を挙げた。
「えぇ、また水崎さんかぁ」
やはり自分は志津枝になっているのだと思い知らされた。
とにかう今は空気を壊さないように志津枝の振りをしよう。
敦史はそう考えた。

「どうしよう…それじゃ、9番が4番の頬にキスすることってことでどう?」
敦史は志津枝の言い方をイメージして命令を言った。
「もちろん4番と9番が入れ替わってからね」
と敦史の姿をした志津枝がつけ加えた。

「4番だぁーれだ」
小川朱音だった。
「9番だ〜れだ」
岡村だった。
「それじゃ、いい?1…2…の3!」
敦史の呼びかけに「チェンジ!!」と朱音と岡村の2人が声を揃えた。

「あれ?何も変わってないじゃん」
誰かが呟いたように、見た目は何も変わってなかった。
敦史にとっては自分は志津枝の姿をしてても志津枝でないのだから、この結果は当然のように思えた。

しかし……
「お…俺がいる…」
朱音が呟いた。
「あたしがいる…」
岡村が言った。

「今度は中身が入れ替わったって趣向か?」
秋沢省吾が言った。
「そんなんじゃないよ。マジで替わってるんだよ」
見た目が朱音の女が叫んだ。
「はいはい、分かった分かった」
当然省吾は取り合わなかった。
しかし敦史には嘘でないことは分かっていた。
おそらく二人の中身は入れ替わっているのだ。

「キィス、キィス、…」
省吾が皆を先導するように手を叩きながら言った。
「キス、キス、キス、キス、キス、キス、………」
全員が手拍子で囃し立てた。
「できるか、そんなこと!」
見た目朱音がヒステリックに叫んだ。

ここから名前は『身体(心)』で表記します。すなわち"敦史の姿をした志津枝"の場合"敦史(志津枝)"と記述します。

朱音(岡村)の言葉に囃し立てていた全員の声が静まり返った。
「命令に従えないのなら罰を受けないとね」
その静けさを破ったのは敦史(志津枝)だった。
「罰って何なんだよ?」
「当然二人は入れ替わったままよ、このゲームが終わっても」
敦史の口調はまるでおかまだ。
中身は志津枝なんだから当然といえば当然だ。
そしてそんな雰囲気が不気味さを醸し出していた。
当事者以外にも尋常でないことが起こっていることが伝わっていた。
本当に人格の入れ替わりが起こっているんだということが。

「そんな…」
朱音(岡村)が呟いた。
「だったら早くやりなさい」
敦史(志津枝)は自分が王様であるかのように冷たく命じた。
「分かった、分かったよ。やればいいんだろ」
朱音(岡村)が岡村(朱音)の頬にキスをした。
「あら、命令は"9番が4番にキスする"だったはずよ。9番って岡村くんじゃなかったっけ?」
敦史(志津枝)が言った。
「だから俺がキスしたんじゃないか」
「だってあなたは小川さんでしょ?」
「あ…」
「自分の間違いに気づいたようね。それじゃ岡村くん、キスしなさいよ」
敦史(志津枝)は岡村(朱音)に命じた。
「分かったわ」
岡村(朱音)が軽く深呼吸して朱音(岡村)の頬にキスした。
「やればできるじゃない」
敦史(志津枝)は蔑むように岡村(朱音)を見た。

「ねえ、もうやめない?」
折本祐子が言った。
「そうね、いつまでもやってるわけにはいかないものね」
辻麻由美が応じた。
「それじゃ次で最後にしましょうか」
敦史(志津枝)が答えた。

しかし岡村はクジを回収しようとしない。
仕方なくクジを回収したのは敦史(志津枝)だった。
「それじゃ皆クジをひいて」
言われても誰もクジをひこうとしない。
「仕方ないわね。それじゃクジなしでするしかないわね。私が王様よ、いいわね。それで命令は、加藤くんと折本さん、細野くんと辻さん、山口くんと高橋さんが入れ替わって。それで見た目男性のほうが口紅をつけて、元の自分の身体にキスするの」
敦史(志津枝)は事務的に命じた。
「それじゃ、いい?1…2…の3!」
しかし誰も「チェンジ」とは言わなかった。
敦史(志津枝)はため息をついた。
「仕方ないわね。あんなのは儀式なんだけど、命令にしたがえないのなら罰ね。もう一回チャンスをあげるわ。1…2…の3!」
やはり誰も言わなかった。
「仕方ない…か」
敦史(志津枝)が「チェンジ!」と言った。
すると敦史(志津枝)が指名したそれぞれの組み合わせで入れ替わりが起きたようだ。
それぞれのメンバーがパニックに陥っていた。
「それじゃこれで王様ゲームは終わりね。元に戻れるのは私と三沢くん、それと岡田くんと朱音の二組ね」
そう言って敦史(志津枝)が手をパンッと叩いた。
次の瞬間敦史は元の身体に戻っていた。
目の前で志津枝がニコッと笑った。

「いつまでこのままなんだよ」
「そうよ、すぐに戻してよ」
すぐさま文句を言ったのは折本祐子(加藤雅紀)と細野誠一(辻麻由美)だった。
「王様ゲームの罰なんだから仕方ないでしょ?そうじゃないと真面目に命令をきいた人が馬鹿みたいじゃない?」
「そんなこと言ってもいつまでもこんなままじゃ困るだろ」
祐子(雅紀)は自分の身体を見下ろした。
そんな姿を志津枝はジッと見ていた。
「それもそうね…」
志津枝は静かに呟いた。
「第一こんな姿じゃ帰るところもないじゃない!」
誠一(麻由美)がヒステリックに叫んだ。

「それじゃ私の家に来る?これくらいの人数だったら大丈夫だし」
志津枝が店の前でタクシーを2台停めた。
「それじゃ私たちは1台目に乗るからそっちの4人は2台目に乗って。あと三沢くんも一緒に来て。部長なんだから最後まで見届けないといけないでしょ?」
「えっ?」
思いもかけない誘いだった。
さっさと逃げ出そうと思っていたのに。
しかし人に頼まれるとイヤと言えない性格の敦史だ。
仕方なく一緒にタクシーに乗り込んだ。

着いたのはかなりの豪邸だった。
通されたリビングは30畳以上ありそうだった。
「すっげぇ。メチャ広いじゃん」
高橋奈美(山口啓司)が部屋のソファにダイブした。
「やめてよ。下着が見えるじゃない」
啓司(奈美)が泣きそうになっている。
敦史には何とも奇妙な光景に見えた。

「それで、いつまでこの姿でいなきゃいけないの?」
聞いたのは雅紀(祐子)だった。
「もちろん王様ゲームの罰ゲームの間よ」
「罰ゲーム?」
「もちろん」
志津枝はみんなを見回した。
「もちろん王様はずっと私がやるわ」
皆から不平の声が上がった。
しかし志津枝の「戻りたくないなら別にいいけど」との一言で皆おとなしくなった。
「せっかくだし、皆と合わせて私たちも入れ替わりましょうか?」
志津枝が敦史を見てニコッと笑った。
次の瞬間には入れ替わっていた。

「はい、それじゃみんな裸になりなさい」
敦史(志津枝)の命令に皆から文句が出た。
「私の命令は絶対よ。だから反抗はできないわよ」
実際文句を言いながらも全員が服を脱ぎ始めていた。
何かの暗示にかかっているのかもしれない。
しかし志津枝(敦史)はまだ服を着たままだった。
志津枝(敦史)には命令は効かないようだった。
「三沢くんも裸になってよ。私もなるから」
敦史(志津枝)が服を脱ぎ始めた。
見慣れたはずの自分の身体とは言え、他の人間の目から見るのは不思議な気がする。
もう少し鍛えたほうがいいなと思った。
「三沢くん、早く脱いで」
敦史(志津枝)に促されるまま志津枝(敦史)は服を脱ぎ始めた。
服を脱いで下着を取るときには躊躇した。
今は志津枝の身体なんだから女性の下着をつけているのは当たり前だ。
それでも自分が女性の下着をつけていることが気恥ずかしかった。

「姿が女の子はM字開脚して、自分の女性器を元の持ち主に見せてあげて」
急に敦史(志津枝)の命令が飛んだ。
志津枝(敦史)が部屋の中を見渡すと、女性が座って脚を広げて自分の股間を男に見せていた。
そんな光景を見た後、志津枝(敦史)は敦史(志津枝)の顔を見た。
何かを聞きたげだった。
「三沢くんはあんなことはしなくていいの」
敦史(志津枝)は志津枝(敦史)の聞きたいことを勝手に理解して答えた。
「それよりこっちに来て」
敦史(志津枝)は志津枝(敦史)に手招きされた。
志津枝(敦史)は下着の姿のまま敦史(志津枝)に近づいた。

「三沢くん、ブラ取ってあげるね」
敦史(志津枝)は慣れた手つきで後ろのフォックを外した。
志津枝(敦史)はブラジャーが落ちないように右腕でブラジャーを押さえた。
「三沢くんって本当に可愛いわね。見た目は私だけど、私よりずっと女の子よ。それに比べれば私なんて本当に面白味のない女だもの」
そう言ったかと思うと、敦史(志津枝)がブラジャーを奪い取った。
とっさに志津枝(敦史)は乳房が見えないように両手で胸を隠した。
「やっぱり三沢くんって可愛い!」
志津枝(敦史)は敦史(志津枝)が抱き締められた。

「女の子は指で広げて見やすいようしなさい。男の子は女の子のその部分を触りなさい」
志津枝(敦史)の頭上で敦史(志津枝)が命じた。
そして命令の後、部屋のあちこちから甘い声が漏れてきた。
部屋の空気がピンク色になったような雰囲気だった。

敦史(志津枝)に抱き締められた志津枝(敦史)は次第にその雰囲気に飲み込まれていった。
敦史(志津枝)の臭いが鼻をくすぐる。
自分の汗の臭いをこんなふうに嗅いだことはなかった。
男の臭い。
決していいにおいとは言えない。
それでもその汗の臭いや体臭が艶かしかった。
当然のように自分の女の部分が反応せずにはいられなかった。
この身体に触れていたい。
そんな欲求が身体の内から湧き上がるのに対してどう対応すべきか戸惑った。

そんなとき敦史(志津枝)の手が志津枝(敦史)の胸に伸びた。
優しくゆっくりと胸を撫でた。
「…ぁ……んん……」
志津枝(敦史)は声を抑えることはできなかった。
目を閉じて敦史(志津枝)の手を感じた。
「三沢くん、気持ちいい?」
志津枝(敦史)は静かに頷いた。
敦史(志津枝)にとっては元の自分の身体だ。
どこをどう触れれば感じるのか熟知していた。
志津枝(敦史)は敦史(志津枝)の手に翻弄されていた。

「それじゃ男の子は硬くなったおちんちんを女の子の中に入れなさい」
喘ぎ声が大きくなった。
あちこちからパンッパンッパンッ……という音が聞こえてきた。

敦史(志津枝)が志津枝(敦史)の手をとり、自分のペニスに導いた。
そこは硬く大きくなっていた。
「三沢くん、私も気持ち良くさせて」

敦史は女性経験がなかった。
だがAVはそれなりに見たことがある。
こんなシーンでやることはひとつしか思いつかない。
冷静な状況ならそんな行為は拒絶したかもしれない。
しかし敦史は今の状況に完全に飲まれていた。

志津枝(敦史)は敦史(志津枝)の前に跪いた。
そしてペニスを両手で包むように握り、何の躊躇もなく口に銜えた。
ただただ敦史(志津枝)に気持ちよくなってもらいたい。
それだけの気持ちからだった。
口に入れると少しおしっこ臭かった。
しかしそれも最初だけだった。
やがて口の中で微妙な反応を示すペニスが面白くなってきた。
志津枝(敦史)は一心不乱にフェラチオをしていた。
「三沢くんって、三沢くんのままでいるより私になっちゃったほうが絶対にいいわ。もうこのままでいることにしない?」
敦史(志津枝)が頭を撫でてくれた。
それが志津枝(敦史)には嬉しかった。

「さてそれじゃこれからは自由時間ね。適当に入れ替わってセックスしなさい」
敦史(志津枝)は全員にそう命じた。
6人がそれぞれに相手を変えて交わり合う。
そんな状況を確認してから志津枝(敦史)を見た。
「それじゃ私たちも楽しみましょうか」
敦史(志津枝)が志津枝(敦史)の口からペニスを抜き、志津枝(敦史)を押し倒した。
そして志津枝(敦史)の股間に手をあてた。
「あら、もうしっかり濡れてるわね。胸を触られたのがそんなに感じた?それともおちんちんを銜えて興奮しちゃったのかしら?」
敦史(志津枝)の手が志津枝(敦史)の股間を撫でた。
決して暴力的ではなく股間を撫でていた。

「もっと感じたいでしょ?」
敦史(志津枝)は手の力を強め、志津枝(敦史)の割れ目に押し入った。
「痛い!」
強い痛みを感じた。
「ごめんなさい。ちょっと強すぎたわね」
触れるか触れないか微妙な感じでその感じやすい部分に触れてきた。
クリトリスだった。
「あああああ…………」
志津枝(敦史)は身体をよじって、敦史(志津枝)の指から逃げようとした。
気持ちはよかったが、精神的におかしくなりそうに感じたのだ。
しかし敦史(志津枝)は強い力でそれを阻止した。
志津枝(敦史)は抗うことをやめ、敦史(志津枝)にされるがままにされていた。

クリトリスへの刺激がとまった。
身体の中に何か異物が入ってくるのを感じた。
敦史(志津枝)の指だった。
少し痛い。
けど我慢できないほどではない。
「痛くない?」
「うん、大丈夫」
志津枝(敦史)は敦史(志津枝)のために耐えた。

「それじゃ2本入れてみるわね」
「い…痛い」
思わず声をあげてしまった。
それほど痛かったのだ。
2本と1本では全く痛みが違った。
「ごめんね、実は私、処女なの。だから少し痛いと思うけど、我慢してね」
敦史(志津枝)が2本の指を出し入れした。
そして時間の経過とともに2本の指の痛みも薄れていった。
「もう大丈夫みたい」
志津枝(敦史)は覚悟を決めて敦史(志津枝)に告げた。

敦史(志津枝)が志津枝(敦史)の脚を大きく広げた。
「それじゃ行くわよ。よけいな力は抜いてね」
敦史(志津枝)のペニスが志津枝(敦史)の膣口にあてた。
志津枝(敦史)は大きく深呼吸した。
そして目蓋をかたく閉じた。
敦史(志津枝)のペニスが入ってきた。
自分の知っているペニスではないようだ。
かなり太い棒をぶち込まれたみたいだ。
「痛ぁい」
志津枝(敦史)は叫んだ。
痛みで涙が出てきた。
「大丈夫?もうやめる?」
「んん…大丈夫……」
「無理しないで」
敦史(志津枝)がペニスを抜こうとした。
そのとき敦史(志津枝)のペニスが強く締めつけられた。
まるで抜け出るのを阻止するように。
敦史(志津枝)はそれが志津枝(敦史)の意思だと思った。
実際のところは志津枝(敦史)にはペニスを締めつけた意識はなかったのだが。

敦史(志津枝)が腰を動かし始めた。
志津枝(敦史)の様子をうかがいながらゆっくりゆっくりと動かした。
ゆっくりな動きとは言え、動かれると痛みが強まった。
それでも敦史(志津枝)の視線があるので必死に耐えた。
動きがゆっくりなせいかなかなか射精に達してくれない。
志津枝(敦史)は長時間痛みに耐えていた。
やがて痛みとは違う種類の感覚が生まれてきた。
快感というにはまだまだなのだが、決して嫌な感覚ではない。
身体の内側から何かを欲するような切ない感覚だった。
志津枝(敦史)はその"何か"を求めるため自ら腰を動かし始めた。
痛みは相変わらずあったが、それ以上に"何か"を求める欲求が強まった。
志津枝(敦史)の腰の動きが激しくなると、敦史(志津枝)の腰の動きも速くなっていった。
「あああ……何か…出そう……」
敦史(志津枝)が唸った。
「来て…出して………」
志津枝(敦史)が求めた。
そしてそのとき無意識に敦史(志津枝)のペニスを強く締めつけた。
「あああ…出る…出るぅ……」
敦史(志津枝)が射精した。
志津枝(敦史)は身体の内側に熱いものを感じた。
それと同時にやっと痛みから解放される。
そんな安堵感をも感じていた。

「これからは自由時間ね」という敦史(志津枝)が声が聞こえたとき、奈美(啓司)は麻由美の姿を探した。
啓司は麻由美のことが好きだったからだ。
身体が女になったからといって、男に抱かれるより女を抱くほうが性に合っている。
女同士のセックスになってしまうが、それも一興だろう。
あそこにいた。
奈美(啓司)は麻由美を見つけ、そこに行こうとした。
しかしその前に雅紀(祐子)に捕まってしまった。

雅紀(祐子)は視界に入る奈美(啓司)の身体が気になっていた。
自分の幼児体型に比べてスリムで女性らしいボディラインだ。
せっかく男の身体になったんだから、彼女の身体を抱いてみたい。
そんな欲求が湧き上がっていた。

「奈美の身体って見るからにエッチよね。自分が男になったせいかぜひ奈美とやりたいなって思ったの」
雅紀(祐子)が奈美(啓司)を抱き締めた。
「やめろよ」
奈美(啓司)は雅紀(祐子)を振り解こうとした。
「なあに、その口の利き方。白けるじゃない」
「お前こそおかまみたいじゃないか」
「なるほど。そう言われればそうね」
雅紀(祐子)は敦史(志津枝)に向かって叫んだ。
「王様。女の子は女の子らしく話すように命令してくださぁい」
敦史(志津枝)がそれに応えた。
「自分の姿に相応しい言葉遣いをしなさい。男の姿をしてる者は男らしく、女の姿をしてる者は女らしく話しなさい」
そう大きな声で皆に命じた。

「やめてよ……。えっ…どうして……」
奈美(啓司)は自分の意志に反して女言葉が出て来ることに驚いて自分の口を押さえた。
「王様の命令は絶対なんだ。男は男らしく、女は女らしく、だろ?」
雅紀(祐子)がニヤリと笑った。

雅紀(祐子)は奈美(啓司)を押し倒して馬乗りになった。
「こんな形で奈美を抱けるなんてな…」
雅紀(祐子)は両手で奈美(啓司)の乳房を掴んだ。
「痛い!」
奈美(啓司)の苦痛の声に雅紀(祐子)はニヤリと笑った。
「男っていいよな。女の身体を力づくで犯せるんだからな」
奈美(啓司)の乳房が雅紀(祐子)の手の中でひどく歪んでいる。
奈美(啓司)の表情も痛みで歪んでいた。

雅紀(祐子)は親指の腹で奈美(啓司)の乳首の先端を擦った。
「…あああ……んんんんん……」
奈美(啓司)は痛みとも快感ともつかない声をあげた。
そんな声を聞いていると雅紀(祐子)の興奮度は高まった。

雅紀(祐子)は乱暴に奈美(啓司)の中にペニスをぶち込んだ。
「…ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
奈美(啓司)はすぐに喘ぎ声をあげた。
雅紀(祐子)の激しい動きにすぐに昇りつめた。
(…ぁぁ……いきそう……)
そう思ったときに雅紀(祐子)のペニスが抜け出た。
(ぇ…うそ……)
いけそうなときに抽送をやめられて奈美(啓司)は恨めしそうに雅紀(祐子)を見た。

「あんまり簡単にいっても面白くないだろ?」
雅紀(祐子)は奈美(啓司)をうつ伏せに寝かせた。
そして奈美(啓司)のアナルに指を入れた。
「そこはやめて!」
奈美(啓司)の声を無視して、指を出し入れした。
すぐに奈美(啓司)の口から快感の喘ぎ声を洩れてきた。
「もう準備ができたみたいだな」
雅紀(祐子)は奈美(啓司)の腰を持ち上げ、ペニスを突き刺した。
「痛いっ!」
痛みで涙が出てきた。
そんなことはお構いなしに雅紀(祐子)は腰を振った。
奈美(啓司)はひたすら痛みに耐えた。
早く終わってと願うだけだった。
しかし抽送は長く続いた。
やがて大腸に精子が出されたことを感じると安堵から強烈な眠気に襲われた。

祐子(雅紀)は女性の快感に意識が朦朧としていた。
女の身体ってこんなに気持ちいいなんて。
あまりにも強烈な快感に完全に冷静さをなくしていた。
目の前に誠一(麻由美)の姿があった。
もう一度突かれたい。
そう思うと無意識のうちに行動していた。
祐子(雅紀)は誠一(麻由美)の身体にしがみついていた。
誠一(麻由美)は急に誰かにしがみつかれて驚いた。
見ると祐子だった。
「誰だっけ?」
誠一(麻由美)は祐子になっているのが誰だったのかを思い出せなかった。

祐子(雅紀)は自分が誰かを尋ねられたことで少し正気を取り戻した。
自分が男の身体にしがみついていることに驚き離れようとした。
しかし、男に腕を掴まれた。
「誰だって聞いてるだろ?」
「加藤よ」
「へえ、雅紀くんか。すっかり可愛くなっちゃったんだね」
「そういうあなたは誰よ」
「俺?見ての通り細野誠一だよ」
「人格は誰かを聞いてるの!」
「そんなの誰だっていいじゃないか」
そう言われて男に唇を重ねられてしまった。
長いキスだった。
男の舌が入ってきた。
祐子(雅紀)は積極的に男の舌にからめた。
祐子(雅紀)はキスだけでボゥーッとしてきた。
男の顔がバストにやってきた。
乳房を舐められ、乳首に刺激を与えられた。
「…ぁぁぁ…ん……」
祐子(雅紀)は乳房から全身に広がる痺れるような快感に身を任せていた。
与えられる快感に身を委ねていられる。
もうこのまま女のままでもいい。
そう思えるくらい気持ちよかった。

男の顔が下腹部に移動した。
クンニされるのかも。
祐子(雅紀)の期待が膨らんだ。
そして…。
「…ぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」
高圧の電流のような快感が全身を駆け抜けた。
何も考えられない。
脳自体が溶けてなくなってしまいそうだ。
自分の出している声さえ認識できない。
祐子(雅紀)は髪を振り乱していた。
マジでおかしくなりそうだ。

ようやく男の顔が女性器から離れた。
祐子(雅紀)は肩で息をしていた。
頭の中は真っ白だ。

男のペニスが入ってきた。
祐子(雅紀)はすぐに腰を動かした。
もっと強い快感が欲しい。
男の出す熱いものが欲しい。
祐子(雅紀)は貪欲に腰を振った。

男の熱いモノを子宮に感じたとき、祐子(雅紀)は男が自分から離れないように男の身体を強く抱き締めた。
絶対にセックスは女のほうが得だ。
祐子(雅紀)は幸せそうな表情でセックスの余韻に浸っていた。

麻由美(誠一)は誠一(麻由美)が祐子(雅紀)に抱きつかれているのを見ていた。
もう一度このまま抱かれたかったのに。
そんな思いを込めた視線だった。
辺りを見ると相手のいないのは啓司(奈美)だけだった。
啓司でいいか。
そう思って、啓司(奈美)に近づいた。

啓司(奈美)は元の自分の身体が雅紀の身体に抱かれているのを見ていた。
雅紀の身体に入っているのって誰だっけ?
思いつかなかった。
それにしても男の快感って刹那的だ。
その瞬間は気持ちいいが、その後の気だるさは何だろう…。

そう思っているとペニスが握られた。
麻由美(誠一)だった。
麻由美(誠一)は何も言わずに啓司(奈美)のペニスを銜えた。

「何だよ、いきなり」
啓司(奈美)は急なことに驚いた。
「せっかく異性になれたんだからしっかり楽しまないと」
麻由美(誠一)はフェラチオを中断して言った。
そして可愛い顔でニコッと笑うと、フェラチオを続けた。
啓司(奈美)は仰向けになったまま、されるがままにしていた。
射精したばかりだったので麻由美(誠一)のフェラにもなかなか大きくならなかった。

それでもさすがにずっとフェラされていると、少しずつ硬さを増してきた。
麻由美(誠一)はなおも啓司(奈美)のペニスに刺激を与え続けた。
「やっと大きくなってきた」
麻由美(誠一)は啓司(奈美)のペニスから口を外した。
そして右手でそれを握り、その上にまたがるような体勢をとり、ペニスの先を膣口にあてた。
「それじゃいい?」
そして慎重に腰を沈めた。
「んんん……。すごい…気持ちいい…」
麻由美(誠一)は啓司(奈美)のペニスを全て自分の身体に迎え入れた。

麻由美(誠一)は自分の乳房を揉みながら、身体を上下に揺らした。
そんな麻由美(誠一)を啓司(奈美)は冷静に見ていた。
麻由美(誠一)だけで盛り上がっているのが妙に悔しい。
なら自分もやってやろうじゃないか。
啓司(奈美)は上半身を起こした。
そして麻由美(誠一)の身体の向きを変えさせた。
麻由美(誠一)の背後から腕を回し、乳房を揉んだ。
その間も微妙に腰を動かしていた。
麻由美(誠一)の大きな喘ぎ声が興奮を高めた。

啓司(奈美)は膝で立つような体勢をとった。
おかげで麻由美(誠一)は四つん這いのような体勢になってしまった。
啓司(奈美)にずっと突かれていた。
何も考えられなかった。
口からは涎が零れていた。

麻由美(誠一)は腕で上半身を支えているのもつらくなってきた。
顔を床につけ、ただただ啓司(奈美)のペニスを感じていた。
早くフィニッシュを迎えてくれないと、おかしくなってしまいそうだ。
麻由美(誠一)は意識が朦朧としてきた。
もうダメだ。
マジでおかしくなっちまう…。
そんなことを思っていると啓司(奈美)の腰の動きの速さが増した。
そして麻由美(誠一)の中に精子をぶちまけた。
やっと終わった…。
もうこれ以上は無理だ。
快感で脳が腐っちまう。
麻由美(誠一)はこれ以上のセックスは無理だと考えていた。

敦史と志津枝以外の6人は何度も相手を変えて交わった。
志津枝(敦史)に近づく者もいたが、敦史(志津枝)がそれを許さなかった。
自分の身体が自分以外の者に抱かれることを許せなかったのだ。
だから敦史と志津枝はずっと2人で抱き合っていた。
志津枝(敦史)は何度か挿入されたが、最後まで快感を得ることはなかった。
入れられていないときでも何かが入っているような違和感があった。
それでも敦史(志津枝)の物を受け入れていることで不思議な幸福感があった。
だからこそかなりの痛みだったにもかかわらず何度も受け入れることができた。

外が白み始めた。
そろそろ夜が明ける時間のようだ。
「それじゃ罰ゲームはこれくらいにしましょうか」
敦史(志津枝)が叫んだ。
部屋の中は男の女が交わった臭いが充満していた。
あまりいい臭いとは言えない。
加えて何度もセックスした男女はすでに疲れ果ててぐったりしていた。
若い男女が折り重なるように横たわっている光景は何とも異様な光景だった。
「これから元に戻すわね。でも、もし受精していたら、残念だけど元に戻れないの」
敦史(志津枝)の言葉に誰かの息を飲む音が聞こえた。
「みんな避妊してたと思うから、きっと大丈夫よ」
何度も中出しされているため、妊娠の可能性は誰にもあった。
もちろん志津枝(敦史)にも、だ。

「さて誰か戻れなくなる人はいるかしら?」
そう言って敦史(志津枝)が手をパンッと叩いた。
「戻れたぁ」
「良かった…」
部屋のあちこちからそんな声が聞こえた。
何とか自分の身体に戻れたようだ。
ただし全員足腰がかなり痛かった。

しかし、敦史の目の前には相変わらず敦史の姿があった。
すなわち自分はまだ志津枝のままなのだ。
「妊娠しちゃったってこと?」
敦史は志津枝に聞いた。
「心配しないで。私たちの入れ替わりはまだ解いてないだけだから」
「本当?」
敦史は心配そうな顔をした。
「三沢くんは私でいるのはイヤ?」
「そんなことはないけど…」
セックスでは痛い思いばかりしたけど、志津枝の身体でいることは何となくしっくりきていた。
「私は三沢くんの身体が気に入っちゃったみたい。しばらくこのままでいない?」
そんな志津枝の申し出にどう答えればいいのか分からなかった。
敦史が無言でいることに志津枝は急に笑い出した。
「嘘よ、嘘。こっちに来て」

敦史は志津枝について別の部屋に行った。
そこで志津枝が手を叩いた。
目の前に志津枝がいた。
「戻れたの?」
「そうよ」
志津枝が敦史の首に手を回してきた。
「今度は私を女にしてね」
そのまま敦史は志津枝を抱いた。
男として初めてのセックス。
少しの感動はあったが、それだけだった。
やっぱりセックスは女性として、志津枝として抱かれるほうがいい。
心底そう思えた。

今回罰ゲームに参加させられたメンバーはこのゲームの"良さ"を知った。
当然もう一度同じような王様ゲームを志津枝に求めた。
開かれた王様ゲームには今回のメンバーはもちろん今回参加していなかった岡村と朱音も参加した。
この王様ゲームでは"王様"は志津枝に固定されていた。
志津枝の命令にしたがい、ランダムな人格交換を楽しんだ。
正確にはランダムな人格交換の後のセックスを楽しんでいた。
敦史はいつも志津枝の傍らにいた。

それからこの同好会では定期的に王様ゲームが行われた。
異性としてのセックスが楽しめ、避妊さえしていれば元に戻ることができるのだから、この年代の若者の好奇心にブレーキをかけられるわけがない。
最高で30人近くのメンバーで王様ゲームが行われることさえあった。
ゲームの最初は本当にランダムで選ばれているようだった。
したがって異性どうしではなく、同性どうしで入れ替わることもあった。
しかし最終的にはうまく異性と入れ替わることができるのだ。
必ず異性としてセックスができる。
しかも他人の身体だから少し無茶ができた。
思い切りセックスして、最終的に腰痛に苦しめられた。


敦史と志津枝はゲームの時にはいつも一緒にいた。
実は二人はゲームの最初から入れ替わっていた。
すなわちそのゲームで王様を演じていたのは志津枝になった敦史だった。
志津枝になった敦史が"王様"として命令を発していたのだ。
実際人格交換していたのは傍らにいる敦史になった志津枝だった。
敦史と志津枝は王様ゲームでは"自由時間"に入るまではただただ入れ替わっているだけで、何もしなかった。
参加メンバーは二人がそのままだと思っていた。
すなわち志津枝は志津枝であり、敦史は敦史なんだと。
誰も最初から入れ替わっているとは考えもしなかった。
そして"自由時間"になると、二人で別室に行き、セックスを楽しんだ。
二人のセックスは王様ゲームのときだった。
その他のときには二人でセックスすることはなかった。
つまり敦史が男として志津枝を抱いたのは最初の王様ゲームの罰ゲームのあとだけだった。
最初のときに感じた痛みはすぐに消えていった。
痛みがなくなりにつれ、女性としての快感の虜になっていった。
自分が感じるだけでなく、志津枝にも男として感じて欲しかった。
だから敦史から行動を起こすこともあった。
それでもやはり受身のセックスのほうがいい。
志津枝として自分の姿をした志津枝に抱かれること、それが敦史にとっては幸せなひと時だった。

しかしそんなことを続けていると当然"事件"は起こる。
あるとき8人ものメンバーが元に戻れない事態になってしまったのだ。
「どうしてくれるのよ!」
こう叫んでいるのは今回初めて参加した山崎奈々の姿になっていた岡村だった。
その岡村の姿になっている朱音はメソメソ泣いていた。
その中には古参のメンバーである誠一の姿もあった。
女の姿になっている男たちは一様に自分の下腹を押さえていた。
まるでそこに赤ちゃんを宿しているかのように。

「とりあえず落ち着いて」
志津枝(敦史)は皆に声をかけた。
「早く戻してよ」
噛み付いてきたのはやはり奈々(岡村)だった。
「だから最初に言った通り受精すると元に戻れないの?誰か危険日なのに参加した人がいるんじゃない?」
それに微妙な反応を示したのは本村和雄だった。
「本村の身体に入っているのは山崎さんだろ?もしかして山崎さんはそういう日だった?」
敦史(志津枝)が聞いた。
和雄(奈々)は小さく頷いた。
「こういうことが起きるかもって聞いてなかった?」
「聞いてた。でも…」
それでも入れ替わりのセックスに対する好奇心を抑えられなかったということだった。
奈々は小さくて大人しいあどけない少女のような女性だった。
セックスなんて全く興味がなさそうに見えた。
そんな奈々でさえ好奇心を抑えられない魅力がこの王様ゲームにはあるのだ。

「それじゃ一人ずつ戻していきましょうか」
志津枝(敦史)は朱音の前に立った。
「それじゃまず小川さんを元の身体に戻すわね」
志津枝(敦史)は念を送るような振りをしてから手を叩いた。
もちろん実際は敦史(志津枝)が元に戻す力を送った。
「戻ったわ」
朱音が小さくジャンプして喜んだ。
「俺も戻ったのか?」
岡村の姿をした者が自分の身体を見下ろしながら言った。
「その身体は私の身体よ」
奈々(岡村)が叫んだ。
「そう。細野くんは小川さんが入っていた身体と入れ替わっただけなの。それじゃ次は細野くんを戻してみましょうか」
同じように誠一の身体の前に立ち、手を叩いた。
誠一も元に戻れた。

そうして次々と元に戻していった結果、残ったのは予想通り岡村と奈々の二人だった。
「どうしたらいいのよ」
奈々(岡村)は泣きそうな顔をしていた。
「一応こんなこともあろうかと思って、緊急避妊ピルを準備してあるから」
「でも妊娠したんだったら今さらピルなんか飲んだって意味ないじゃない!」
「大丈夫。受精はしていても妊娠はしてないんだから」
岡村には意味が分からなかった。
卵子と精子がひとつになると妊娠するものだと思っていた。
「意味なんて分からなくても、これを試す価値はあるでしょう?」
「分かったわ。早くちょうだい」
奈々(岡村)は奪うようにして志津枝(敦史)からピルを取り、すぐに飲んだ。
吐き気に襲われたが、横になり安静にしてやり過ごした。
岡村と奈々以外のメンバーは二人のことを気にしながらそれぞれの家に帰っていった。
岡村と奈々だけが志津枝の部屋に残った。
「一週間したら、もう一度元に戻せるか試してみるわ。それまではその身体で過ごして。一週間後にダメなら本当に妊娠したと考えて」
「そんなぁ…」

二人は入れ替わった状態の間、誰ともからまずいつも二人一緒にいた。
岡村をした奈々が奈々の姿の岡村をいたわっているようだった。
実際奈々の姿の岡村はかなり落ち込んでいたのだ。
しかし結局二人は元に戻ることができた。
元に戻った後、岡村と奈々は交際を始めた。
絶望の時を二人で共有したことで、二人の結びつきが強くなったのだ。

しかしこの"事件"を境に王様ゲームは開かれなくなってしまった。
一部のメンバーには開催してほしいらしかったが、大きな声で要求することは周りの雰囲気が許さなかったのだ。

王様ゲームが開かれなくなっても、敦史と志津枝は相変わらず入れ替わってセックスをしていた。
敦史にとって男としてのセックスはつまらないものになっていた。
実際男としてセックスしても満たされず、最終的には志津枝になって絶頂を感じて満足感を得ようとした。
それでも入れ替わるのはあくまでセックスのときだけだった。
日常生活において入れ替わることはほとんどなかった。
それでも時々志津枝にお願いされて、入れ替わることはあった。
そんなときは志津枝がひとりで出掛けることが多かった。
志津枝が敦史となって外で何をしているのかは知らなかった。
気にはなっていたが、聞けなかったのだ。
敦史は志津枝になって一人だけになるとひたすらオナニーをしていた。
志津枝に対して何をしているのか聞くことで、自らの行為を話さなければいけなくなるのが恐かったのだ。

時間は一定の速度で進んでいく。
二人の学生生活は卒業を間近に控えていた。
敦史は折からの不況のせいか未だに内定を獲得できてなかった。
一方、志津枝は小さな金融機関への就職が決まっていた。


敦史と志津枝はいつものように入れ替わっていた。
もちろんセックスのためだ。
「志津枝はいいよね。もう就職が決まっていて」
敦史は志津枝の腕の中で呟いた。
二人は立った状態で抱き合っていた。
「だったらずっとこのままでいる?私は別に三沢くんのままでもいいわよ」
「えっ、でも…」
敦史が話すのを邪魔するように唇を塞がれた。
敦史は口の中に入ってくる志津枝の舌に自分の舌を絡めた。
敦史はこのキスが好きだった。
このキスだけで身体のスイッチが入るのだ。
つまりキスだけで敦史の股間は異性の性器を受け入れることが可能な状態になった。

敦史は志津枝をベッドに押し倒した。
そしてそのまま志津枝に跨り、ペニスを迎えるために腰を沈めた。
「今日は危険日なのよ」
志津枝の言葉が聞こえた。
しかし言葉の意味は分かるが、しっかりと理解できていなかった。
敦史は快感の中にいた。
こんなときは何も考えられない。
下から志津枝が腰を動かし、新たな快感がもたらされた。
敦史は自ら身体を揺らし、自分の乳房を揉んで貪欲に快感を求めた。
志津枝の手が敦史の腰を掴んだ。
そして志津枝の身体を上下に揺すった。
志津枝にされるまま、敦史は喘いだ。
敦史は意識してペニスを締め上げた。
志津枝の身体に馴染んでくると、こんなこともできるようになっていった。
「そんなに締められたら、すぐに出るじゃない…」
そう言って、志津枝は手の動きを速めた。
敦史は激しい上下運動でもたらされる快感に身を任せていた。
「それじゃ出すわよ」
志津枝の腰がドンッドンッドンッという感じで、3回強く突き上げた。
最後のドンッの瞬間に熱いモノが敦史の中に放たれた。
敦史は頭の中が真っ白になって、電気が駆け巡るような快感を身体中に感じた。
女はこの快感がしばらくの間、身体の中にとどまる。
快感が波のように間断なく押し寄せてくるのが大好きだった。
敦史は身体を志津枝に預け、快感の波に漂っていた。

「もう一回やりましょうか」
志津枝が敦史の乳房に吸い付いてきた。
「…ぁ…ぃゃ……」
ゆっくりした大きな快感を感じていたいのに、強い刹那的な快感を与えられたことに精神的に拒絶感を覚えたのだ。
しかし身体は反応した。
無意識に志津枝を強く抱き締めていた。
そして胸を志津枝のほうに突き出すようにしていた。
志津枝の舌の先で敦史の乳首を刺激した。
「…ぁぁぁぁぁ……ぃぃ……」

敦史は志津枝の股間に手を伸ばした。
ついさっき出したばかりなのにすでに硬くなっていた。
敦史は指でペニスの先に触れた。
「もう入れて欲しいの?」
志津枝は乳首を舐めるのをやめて敦史に聞いた。
敦史は何度も頷いた。

志津枝は敦史の膝を肩に担ぐようにした。
そしてゆっくりとペニスを突き刺した。
敦史は挿入される感覚が好きだった。
目を閉じてその感触を味わっていた。
すると志津枝の声がした。
「さっきも言ったけど、今日は危険日なんだからね」
「危険日?」
「妊娠しやすい日ってことよ」
「えっ、そうなの?」
「もしかしたらさっきので受精しちゃったかもしれないよ。どうする?」
志津枝は返事を待たずに腰を動かし始めた。
「…ぁ…ぁ…ぁ…ぁ…ぁ…ぁ…ぁ…」
敦史は志津枝の腰の動きに合わせるように声が漏れた。
正常位で突かれるのは好きだった。
相手の顔が見えるのがいい。
「そろそろ出そう」
志津枝の腰の動きは速くなった。
「あ…やっぱり中はダメ…」
「もう遅いって」
再び志津枝の精液が中に放たれた。
その瞬間何となく戻れなくなったような気がした。

その直感通り、戻ることはできなかった。
「どうする?アフターピル飲む?」
「受精してもすぐに妊娠するわけじゃないんでしょ?少し考えさせて」
敦史の頭の中には志津枝のままでもいいかと思う部分があったのだ。
別に就職が決まっていないことから逃げるためではない。
女のセックスが好きというわけのためだけでもない(確かに好きだが)。
志津枝に対して従順でいることに何とも安らぎを覚えるのだ。
自分は敦史として志津枝を引っ張っていくより、志津枝となって引っ張ってもらうほうが合っている性格なのだと思う。

結局敦史は志津枝として生きていくことを選んだ。
それはすなわち志津枝として子供を産むことを決心したことになるのだ。
志津枝が敦史として就活していて、一流企業の内定をもらっていることを知らされたことも敦史の決心を後押しした。

「卒業したらすぐ結婚しようか」
志津枝が言った。
敦史は頷いた。
この先、妻としてこの人を支えていこう。
そう考えると、気持ちの中が温かくなるような気がした。

敦史は志津枝として金融機関に入社することも可能だったが、入社してもすぐ産休に入るのは心苦しかった。
したがって、自己都合ということで入社を辞退することにした。
敦史は志津枝の妻として専業主婦になることを選んだのだ。


そして5年が経った。
すでに2人の子供が産まれ、今またお腹に一人いる。
志津枝は同期の中では一番に係長になったらしい。
やっぱり入れ替わって正解だったのだ。
(あなたは私の王子様よ、王様じゃないけど)
敦史は大きくなったお腹を触りながら、子供たちと遊んでいる志津枝に呟いた。


《完》

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